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2016年5月15日日曜日

俳優座『先生のオリザニン』

神戸演劇鑑賞会6月例会



一九一〇年(明治四十三)の十二月十三日。東京化学会例会会場で、研究成果の発表がなされている。「長年、吾等を苦しめてきた脚気の病。ヌカに含まれていた有効成分を捨てたからと推測されます。この有効成分をX、私どもはオリザニンと名付けました」。

発表しているのは、東京帝国大学農科大学の鈴木梅太郎博士。熱弁雄弁とは言い難い語り。だが、表情は自信に満ちあふれている。しかし、場内は、「脚気は細菌説だ」「伝染病、風土病、いまだに特定に至っていない」の怒号が飛び交い、博士の説に真っ向から反対だ。舞台はこの梅太郎(一八七四~一九四三年)の生きざまに、明治、大正、昭和の歴史を踏まえ、主な出来事を折り込み、妻の須磨子を語り手に、時には登場させながら、進んでゆく。

梅太郎は十四歳の時、辰野金吾の書生となる。十七歳の秋、帝国大学農科大学の古在由直の研究室に。この由直との出合いが梅太郎の研究姿勢の源になる。彼は、オリザニン(ビタミンB1)の他、合成酒まで作った。舞台はユーモアと情緒にあふれ、胸に滲しみみいる場面に満ちている。

加藤剛・頼親子の共演。妻須磨子に扮ふんする有馬理恵(和歌山出身)の初々しい姿も見逃せない。

(小谷博子)

俳優座公演『先生のオリザニン』/作=堀江安夫、演出=眞鍋卓嗣、出演=加藤剛・加藤頼・有馬理恵ほか/①6月5日(日)16時00分②6日(月)18時30分③7日(火)13時30分/新神戸オリエンタル劇場/会員制(入会時に入会金千円と月会費2カ月前納)、月会費3千5百円(大学生2千円、中高生千円)/☎078・222・8651、Fax078・222・8653

(2016年5月15日付「兵庫民報」掲載)

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