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2016年4月24日日曜日

憲法が輝く兵庫県政へ[26]:介護

介護現場の労働実態から介護を受ける権利の侵害を考える

全国福祉保育労働組合兵庫地方本部 東條 進


特別養護老人ホーム待機者全国五十二万人、介護離職者年間十万人と介護を受ける権利が侵害されています。介護現場は有効求人倍率二倍(全国)と人手不足だからです。特別養護老人ホーム(以下、特養)を例に、介護労働の実態から介護を受ける権利を考えます。

過酷な労働と低賃金


特養の夜勤日数は、明けを含めると月の半分を占めます。夜勤の及ぼす身体への害を考慮すると深刻です。さらに、国が進めるユニットケア(利用者二十名程度の少人数介護)を実施すると夜勤は一名体制――昨今話題の「ワンオペ状態」――となり実質的な休憩時間はありません。

コール対応や定期的な排泄介助、認知症高齢者の見守りなど実際に計測した歩数も一万歩以上(約七㌔㍍。一時間三十分以上休まずに歩く距離)と過酷です。また、人員配置基準(国は利用者:職員=三:一を基準としているが二:一は必要と言われている)が低いため、関わる利用者数が多く身体介助への負担も無視できません。

「アンケート」では首、肩、腕の痛みのために頚腕・腰痛の治療を受けている仲間が半数以上に上ります。

過去1年間に頚腕、腰痛の治療

  • 定期的に受けている20%
  • 受けていない47%
  • 受けたことがある32%


首、肩、腕の痛み

  • めったにない9%
  • いつもある26%
  • 時々ある35%
  • よくある30%


疲れぐあい

  • 感じない2%
  • いつも疲れている27%
  • 一晩でとれる23%
  • 翌日に残ることが多い48%


一方、賃金は、全産業の平均賃金三十万円に対して福祉施設介護職員は二十一万円と九万円もの差があります。そのため、平均勤続年数は全産業平均十二年に対し六年。高い離職率です。過酷な労働の割には低賃金のためせっかく就職しても希望をなくし退職する、欠員が出ても新規採用希望者がなく過重な労働により体を壊して辞めていく仲間が多くいます。

「アンケート」では九二%が仕事にやりがいを感じているのに六六%がやめたいと思っている背景には、介護の担い手自身の心も体も生活もぎりぎりの実態があります。

仕事のやりがい

  • とてもやりがいがある21%
  • いまの仕事がいやだ3%
  • やりたいことが違った4%
  • やりがいがある71%


仕事をやめたいと思ったことは?

  • いつも思っている10%
  • 全く思わない7%
  • あまり思わない27%
  • 時々思う56%


処遇改善によって介護を受ける権利が守られる


人員増により、夜勤の回数が減り、介護者の健康を維持する事ができます。食事、入浴、排泄など生存を維持するのに必要な最低限の介護で手いっぱいという状況が無くなり、生きる楽しみとしての余暇活動や外出など利用者の「文化的で普通の生活」を取り戻すことができます。また、認知症高齢者に個別にゆとりをもって対応できるため症状の改善につながり人権が擁護されます。

賃金増により職員の離職率が低下し、勤続年数が伸びることで利用者理解と専門性が高まり介護を受ける権利が豊かに守られます。

戦後、日本国憲法のもとで日本は人として生きる権利と暮らしを守る取り組みを広げて今日の長寿社会を作りあげました。安倍内閣は新「三本の矢」を重点政策として掲げ「介護施設増設」を打ち出す一方、介護報酬引き下げにより介護職員の処遇改善策は実感薄く、その上、介護の担い手をボランティアや外国人に求める始末です。

今こそ「権利としての福祉」を守るために国と自治体は抜本策を打つべきです。



グラフ】は福祉保育労働組合「福祉職場で働く仲間の頚腕・腰痛やストレスアンケート」(2014年10~12月実施、2967人の回答を集計)から [小数点以下切り捨てのため合計が100%にならない場合があります]

(2016年4月24日付「兵庫民報」掲載)

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