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2016年3月6日日曜日

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟・傍聴記:2016-2-25

国の言い分を鵜のみ 被爆者援護法の精神を無視した判決

副島圀義

判決後の報告集会

二月二十五日、大阪高裁は、国の言い分を鵜のみにして「故梶川一雄さんの心筋梗塞は、被爆が原因ではない」と、国に軍配をあげました。被爆者側の反論を無視して、国側証言をそのまま採用したのです。

例えば―

判決要旨には「(悪玉コレステロール値が)心筋梗塞二次予防の観点から望まれる目標値を達成していなかった」とありますが、昨秋の最終弁論で「悪玉コレステロールが一定の基準値以下にコントロールされていたことは、原告のカルテで明白」と被爆者側弁護が立証したのに、無視。

また「既に形成されていた粥腫が破綻して(心筋梗塞が)再発した」とありますが、これも、審理のなかで「最初の発症とは別の部位」「発病後きっぱり禁煙して十年もたてば、喫煙歴のない人と遜色がないということは、日本動脈硬化学会のガイドラインでも明白」と立証されたことも無視。

中でも「放射線被曝と発病の因果関係」の問題は重要です。

判決要旨に何度も「通常人が疑いを差し挟まない程度に(被曝と発病の因果関係の)高度の蓋然性の証明が(必要)」とあります。「世間の人が何の疑問も持たずに『この人の病気は原爆が原因だ』と思う程の立証責任が被爆者にある」ということでしょうか。

原爆症といっても「被爆者だけがかかる病気」ではありません。様々な原因が関わりあって病気が起こるのが当たり前です。被爆が他の原因と相乗し、また、被爆がもたらした生活・健康状況が発病原因をも形成します。

「被爆以外の発病原因は考えられない」ような立証を被爆者に求めるがごとき判決は、被爆者援護法の基本精神をも、今までの確定判決をも、厚労省の原爆症審査方針をも、逸脱するものでしょう。

前途遼遠ですが、裁判官を含む「通常人」に、被爆の実相をしっかり知らせる責務を痛感させられた判決でもありました。

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

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