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2016年3月20日日曜日

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟・傍聴記:2016-03-11

残留放射線、誘導放射線の健康影響:弁護士が懇切ていねいに解明

副島圀義

三月十一日。東日本大震災・福島原発事故からまる五年の日、大阪地裁では和田信也弁護士が弁論しました。

原爆がさく裂した時にはやけどもケガもしなかった方が、何日もしてから突然、出血、脱毛、下痢等々の急性症状に見舞われて亡くなる事象は、ほんらい、日本人の常識になっているべき事柄でしょう。

しかし大阪高裁で二回連続の不当判決に直面した今、残留放射線や誘導放射線の健康影響について、法廷当事者のきちんとした理解は不可欠の課題となりました。

弁論はこのテーマについて、次項のように具体的な事例をあげ、また最新の国際的な研究の到達点も示して、懇切ていねいに解明するものでした。


  • 陸軍暁部隊:原爆投下時には爆心地から十二キロメートル以上の地点にいて、八月六、七日から広島市内で救護・遺体収容などに従事。八日以後、下痢患者が続出。ほとんど全員が白血球三千以下(基準値は一ミリリットル当たり三千五百~八千九百個)と半減。
  • 三次高女:八月十九日から広島市本川国民学校での救護活動に従事。六十年後の生存率四三%は同世代平均八四%を大きく下回る。日本人の発病率が十万人に三人という白血病による死亡が二十三人中二人にのぼる。
  • 肥田舜太郎医師の証言:原爆直後から被爆者の治療活動に従事した肥田医師は、原爆投下一週間後に夫の安否を尋ねて広島に入り、焼け跡を何日も探して歩いた女性が、夫に会えたものの、突然倒れ、紫斑・貧血・脱毛・出血など放射線による急性症状を呈し、死去した状況を証言している。
  • 二〇一二年、アメリカで開かれた保健物理学会:残留放射線に関する技術セッションでは、従来の線量評価システムDS86の信頼性に疑問が生じ手直しされたDS02も、時間的・資金的な限界があり、最新の検討には継続した努力が求められると報告され、ワークショップでは、放射性降下物は遠い距離を運ばれ、非対照的に急性症状やがんを発症させており、DS02では説明できない健康障害の可能な説明は「多様で均一でない残留放射線による被ばく」であると報告された。


このように、放射線の健康被害を考慮する上で、残留放射線、誘導放射線について無視できないことが国際的な共通認識となっている。

原爆放射線の影響について、機械的・一律的な「線引き」をしてはなりません。「被爆国の政府」なればこそ、素直に受け止めるべき弁論、と聴きました。

(2016年3月20日付「兵庫民報」掲載)

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