記事を検索

2016年2月7日日曜日

観感楽学

身長百九十五㌢、体重百二十㌔の巨体の男が、三歳の幼児がにらみつけたといって、執しつ拗ように暴行を加え、抗うすべもない幼子を虫けらのように殺した。まさに「鬼」である。政治や社会がこんな「鬼」を生み出すのかもしれないが、残酷さに戦せん慄りつする▼先日『新・映像の世紀』というドキュメンタリーが放映された。この中で、米国のレーガン元大統領が俳優だったころ、CIAのスパイとして「赤狩り」に関わっていたことを明らかにした。また当時のCIA長官が、法廷で「あなたは何人殺したのですか」と問われ、平然と「約二万人です」と答えていた。これも「鬼」だ▼さらにこの番組で、冷戦時代の「キューバ危機」の時、ケネディ大統領に「今こそソ連を核攻撃すべき」と進言したのが、カーチス・ルメイだったと初めて知った。ケネディは、ソ連の反撃を考え彼の進言を受け入れなかったが、この時、核のボタンに指がかかる危機一髪の瞬間だった▼ケネディに核攻撃を勧めたこの男こそ焼夷弾による日本焦土作戦を指揮した「皆殺しのルメイ」とよばれた「悪鬼」である。彼は、ジョンソン大統領時代も空軍参謀長として「北ベトナムを石器時代に戻してやる」と豪語して北爆を実行させた▼日本政府はこともあろうに、この軍人に勲一等旭日章を贈呈している。戦後七十一年目の今年も、三月十七日、六月五日の神戸大空襲の悪夢とともに、この男の名は私の脳裏に焼き付いている。 (D)

(2016年2月7日付「兵庫民報」掲載)

日付順目次