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2016年2月28日日曜日

市民にあたたかい神戸市政を〈6〉:生活保護

裁判でようやく責任認める生活保護行政


神戸北生活と健康を守る会事務局長 東喜佐雄

高裁での勝利判決を喜ぶ支援する会の人々

裁判にいたるまで


神戸市北区で製パン・小売業を営むYさん夫妻は、近くに百円パンを販売するチェーン店が進出してきたため、営業収入だけでは生活ができなくなり、二〇〇九年十二月に生活保護を申請しました。

翌年の一月に保護申請が認められ、営業を続けながら生活保護を利用していました。

生活保護費の支給にあたって福祉事務所は、Y夫妻に対し、前月の繰越金を翌月の収入額に加算するよう誤った指導を行い、収入認定をした結果、収入が二重計上となり、そのため、生活保護費に過少支給が生じました。

過少支給となった期間は二十二カ月にわたり、妻が不審に思いケースワーカーに問い質したところ、福祉事務所は過失を認め、謝罪を行ないましたが、夫妻の要求に対して、過去の過少支給分については「二カ月しか遡及できない」と誠意のない回答に終始しました。

Y夫妻は、このまま「泣き寝入りはできない」との強い思いと怒りをもとに、二〇一三年三月十四日、神戸市長を相手に国家賠償請求裁判を起こしました。

神戸地裁の不当判決


裁判は神戸地方裁判所で、九回の口頭弁論が行われました。

争点は、利用者の収入申告が誤って過大に行われていた場合、福祉事務所がこれを適切に調査せず、過大に収入を認定し、そのために生活保護費を過少支給した場合に国家賠償法上、違法となるかというところにありました。

四人(原告妻・生健会役員・ケースワーカー二名)の証人尋問が行われました。

妻は、最低生活費を下回る保護費でどのような生活をしてきたのかを、「過少支給のあった期間は、三人目と四人目の子どもを出産した時期で、退院後一日だけ休み、少しでも収入を増やそうと休まず働いた。食事も、売れ残り、廃棄しなければならないパンでしのいだ。風呂も三日に一度にした」ことなどを切々と訴えられました。

原告代理人からのケースワーカー二名に対する尋問では、最初に担当したケースワーカーに対し、提出された証拠資料であるケース記録をもとに、収入の認定に当たって、原告の収入申告書の間違いを正しく修正しながら、そのまま放置し漫然と過少支給を続けてきたこと、次に担当するケースワーカーへの引き継ぎも十分行われていなかったことが明らかにされました。

しかし、被告の違法行為が裁判の中で明らかになったにもかかわらず、二〇一四年八月二十六日、神戸地方裁判所第四民事部は、被告神戸市の違法行為を認めず、「原告の請求を棄却する」判決を言い渡しました。

判決内容は、「市や福祉事務所に責任はなく、Y夫妻が誤って収入申告したことに責任があり、会計の専門家ではない福祉事務所の職員にとって誤りを見つけることは困難」というまったく不当な判決でした。

大阪高裁で勝利判決


地裁の判決言い渡し後の報告集会で、Y夫妻は控訴する決意を示され、ただちに大阪高等裁判所に控訴しました。

二〇一五年一月二十九日、大阪高等裁判所第一回控訴審では、原告妻の口頭意見陳述のみで、裁判長から被告神戸市に対し、本来支給されるべき額と過少支給された額を確認した上で、「本日で結審したい」との打診がありました。

原告側も、裁判所の意向を受け入れ、二月二十六日が判決言い渡し日と指定されました。

大阪高裁の当日の判決は、神戸地裁の判決をすべて変更し、福祉事務所の過失を全面的に認め、Y夫妻に対する損害額全額と慰謝料の支払いを認める画期的な内容のものでした。

神戸市の「上告断念」について


大阪高等裁判所での全面勝訴を受け、判決の翌日には、市役所前での「神戸市は上告するな」の朝ビラと、終了後、神戸市長に「上告を断念」するよう申し入れを行いました。

さらに、全国からのFAX集中、県下の各団体からもハガキを市長宛てに投函する取り組みなど、さまざまな運動を行ないました。

その結果、神戸市は、保健福祉局長名で「上告を断念する」との声明を同年三月九日付で発表しましたが、なんの反省も感じられない内容のものでした。

しかし、判決が確定したことによって、その後発生した過少支給の件では、福祉事務所の対応にも変化があり、差額を比較的早い時期に支給させています。

裁判闘争の支援とその結果


「Y夫妻国家賠償請求裁判を支援する会」を発足させ、裁判の傍聴には毎回多くの人が参加し、原告夫妻を激励するなどの支援を行いました。支援する会には、多くの団体・個人が結集し、大きく輪が広がるなかで、勝利判決が引き出されたと考えています。

それでも、原告として顔も名前も公表して裁判をたたかうには、非常に勇気がいったでしょう。

しかし、この裁判のおかげで、全国でも、過少支給で泣き寝入りしなくても済むことにつながりました。このことも大きな成果だと言えます。

(2016年2月28日付「兵庫民報」掲載)

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