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2016年1月3日日曜日

新春鼎談:アベ政治終わらせ、憲法輝かせる年に


いよいよ参議院選挙の年となりました。戦争法(安保法制)廃止と立憲主義の回復へ、「国民連合政府」実現が大きな課題となる年の始まりにあたり、日本共産党の大門みきし参院議員(比例予定候補)=写真中=、金田峰生兵庫選挙区予定候補=写真左=と、神戸女学院大学の石川康宏教授(経済学)=写真右=にこのたたかいの焦点、展望について語り合っていただきました。(文責編集部)

復古主義の野望へ、財界いいなり・アメリカ従属


大門 アベノミクスが始まって三年。小泉構造改革以来の新自由主義路線とは、アベノミクスを含めて何だったのか。石川先生ですから、マルクスだったら今どう見るのか、そういう話を聞きたいと思ってまいりました。

安倍政権の性格


石川 一九九〇年代に一方で復古主義が、もう一方で新自由主義が強まります。その頂点が小泉政権で、第一期の安倍政権はそれをまっすぐ引き継ぎました。

しかし第一期安倍政権は、復古主義のカラーをあまりにも強く出しすぎて、中国はじめアジアに展開している財界との関係が悪化、「慰安婦」問題などでアメリカとの摩擦も激化し、見捨てられるように参議院選挙でボロ負けして政権から滑り落ちました。

現在の第二期安倍内閣は、そこから教訓を導き、財界との関係を密接に維持。新三本の矢も経団連発です。アメリカに対しても辺野古の基地は差し出す、集団的自衛権にも踏み込む、戦争法もやると媚こびを売るような政策をとり、その代わり復古主義には目をつぶってほしいという感じになっています。

その結果、財界いいなりも、アメリカ従属も、復古主義も、全て暴走するようになっています。

大門 祖父の岸信介がやれなかったことをやることが、安倍首相が政治家を目指し、総理大臣を目指した理由です。その第一が憲法改正です。そのためには何でもやる。財界も味方につけたい。新自由主義的なものだけでなく、原発、武器の輸出…何だって財界が望むことやるから、応援してくれと。

石川 自民党の改憲案は前文に成長戦略を入れ、第九条に集団的自衛権の行使につながる条文を入れていますが、最大の目的は天皇中心の国にすることです。前文にはっきり書かれています。

金田 立場が違っても政治家には「世のため人のため」という意識がありましたが、安倍首相は違う。自分の目的、個人的野望のために政治も経済も全部利用するんだという、いわば究極の〝ジコチュー〟(自己中心)だと思うんです。

大門 そうですね。人の言うことを聞かないんです。

金田 そんな人に政治を任せるわけにはいかない。安倍政権は倒すしかありません。

財界の変質と社会的規制の喪失


金田 財界も昔は「国家百年の計」などといって長期的な視点をもっていたと思うのですが……。

石川 第一期の時期には、中国・アジアやアメリカとの関係を大事にせねばならないと日本経団連の奥田碩さんや経済同友会の小林陽太郎さんが政府に意見していました。そういう大局をみる人がいなくなっているのは怖いことです。

経団連中枢が多国籍企業になり、投機マネーの影響を強く受けるようになって、国内の消費力を軽視するようになってきました。大企業の国際競争力がつけば「トリクルダウン」でなんとかなると国民をごまかしています。

金田 かつて、ソニーの盛田昭夫さんが、労働法制の一連の改悪が続いたとき、「個々の企業が競争に勝つためにやっているリストラが産業界全体をつぶしてしまう」と発言していましたが、今はそういう声もほとんど聞きませんね。

石川 そこは、マルクスが言ったように社会の力で制御するしかない。資本の側は、儲けの自由に自らたがをはめることはできません。

日本にも七〇年代までは公害対策など大企業を規制し、労働者や自営業を守る制度がありましたが、九〇年代には大店法もなくなり、非正規雇用を拡大させるなど、まともなルールがなくなってしまいました。

大門 法人税についても国際競争力を理由に各国が引き下げ競争をやり始めたら、結局、自国の財政が不足し、国民生活を圧迫、多国籍企業だけが潤うことになります。むしろ、これからは国際的に連帯して上げなくてはならない。金融における投機マネーの動きを国際連帯で規制することも議論が始まっています。マルクスが指摘していたことが国際的にも具体的に現れてきました。

石川 現実がマルクスの見通したように動いています。マルクスの資本主義分析の深さの現れですよね。

政治の右傾化と民主主義の新しい息吹


石川教授
石川 自民党中枢の極端な右翼化は二〇一〇年の新綱領制定がきっかけです。〇九年に政権を失った時、財界から「自民党再生」という要望があり、それを受けた議論の結果でした。

九六年には産経新聞で自由主義史観のキャンペーンが始まり、九七年には日本会議などがつくられます。その流れが、自民党中枢を支配するまでになりました。財界いいなり、アメリカいいなりとともに、「侵略戦争肯定」という思想を重視しなければ日本の政治は理解できません。

大門 戦争法案の前まではヘイトスピーチが出てきたり、ネットの世界でも若い人たちがすさまじい右寄りの話で盛り上がっていました。格差が広がり、閉塞感打破ということで安倍首相や橋下徹氏など強い力で何かやってほしいと期待が高まることを、私は非常に心配していました。

ところが戦争法案のたたかいで若い人が立ち上がった。素晴らしかった。そこに希望があるなあと思いました。

石川 上智大の中野晃一さんは「戦後七十年間〝憲法守れ〟と頑張ってきた敷布団に、若者などの新しい掛布団がうまく重なった。夏は敷布団だけで寝られるが、寒い冬は掛布団がないと寝られない」といったたとえ話をしています。SEALDs、ママの会、学者の会、弁護士など、これまで政治的な取り組みの前面に必ずしも立たなかった人たちがどっと出てきたところには、市民社会の健全な成熟を感じさせられます。

大門 スピーチも見事ですよね。

石川 うちの大学にもSEALDsの学生がいますが、彼らは「二〇一五年十二月十二日、神戸女学院大学○○、私は戦争法案に反対します」と自分の名前を言ってスピーチを終えます。他の誰でもない、私自身の意見だということです。だから、みんな少しずつ違うけど、生き生きしている。そうした「個」の活躍は敷布団の側も学ばないといけない。

大門 「アベ政治を許さない」というプラカードがありますね。「戦争法案を許さない」ではない。戦争法案が出てくる前、ヘイトスピーチ、秘密保護法、貧困問題など、いろんな人が若い人も含めていろんな分野でたたかっていました。それが、戦争法案阻止に集中した。「アベ政治を許さない」には、さまざまな思いがこめられています。見事なキャッチフレーズだと思います。あらゆる面で安倍政権を倒さないといけないのです。

金田 色々な団体と懇談をしていますが、政権への不信が深まっていることを感じます。それぞれ立場があったり、圧力もあったりするでしょうが、深いところで変化しているというか、まさに「アベ政治を許さない」と、どこかで思っている。そういうエネルギーを感じます。

日本国憲法を全面的に生かすたたかい


大門 最近の社会保障行政をみると、憲法二五条は完全に無視されています。社会保障に使うお金がないのではなく、使う気がないのです。

石川 九五年には社会保障制度審議会から社会保障の「公私分担」論が公然と打ち出されました。本来、一〇〇%の「公」が当然です。労働条件の改悪も進められ、九〇年代後半には若者に対する「勝ち組負け組」論の攻撃が行われます。

それから二十年が過ぎました。職場の多くの人が最初から「自己責任」論の攻撃を受けて大人になっている。国民の幸福を守るために国家があるという社会権の思想に対する強烈な逆流です。

大門 九五年あたりというのはいろんな分かれ目だったと思います。日経連の「新時代の『日本的経営』」が出て、終身雇用の否定、非正規雇用の拡大を打ち出した。あのころから日本社会が変わっていきました。

金田 消費税導入で応益負担の考え方を社会保障にまで持ち込んできました。所得の再分配機能を否定し、社会保障の理念を投げ捨てている。国のあり方を取り違えている。

私はこの点で、消費税増税路線とのたたかいは社会保障の理念を取り戻す思想闘争でもあると思っています。

大門参院議員
大門 戦争する国というのは、法案を通して武力行使できるようにしたら自動的に翌日からそうなるというわけでなく、戦場に行って人を殺せる人間を作らないといけません。「教育改革」とか歴史認識、愛国心注入、こういうことをさらにやるでしょう。

戦争する国を支える経済社会づくりには二つあります。一つは「経済的徴兵制」です。格差と貧困を広げておくことで戦場に若者たちを送り込む。もう一つは戦時税財政です。消費税を増税して、社会保障や教育など国民生活に関連する予算を切り捨て、軍事費を捻出する。

消費税問題も、これからは戦争税という位置づけになっていくでしょう。

このまま戦争法を続けさせたら、若者が戦場に送られるだけでなく、国民の暮らしも経済も破壊されます。

石川 貧困・格差が広がるなか、食事も満足にとれない子どもの貧困は深刻です。政治が責任をもって対処するのは当然ですが、それを待っているゆとりはない。そこで、子どもや家族に市民の連帯によって食事を提供しようとする「子ども食堂」の運動が広がっています。

金田 阪神・淡路大震災の時も、炊き出しなど、みんなで支えあいましたが、地域の人たちの実践の中に私たちも深くかかわりながら、いっしょになって政治を動かしていくことが、もっと求められる時代になったのだと思います。

石川 国家権力は憲法の全条項に縛られています。憲法二五条には国民の生存権を国が守ると書いている。だから、そのとおりにやるのが当然だ。そのように政府に強く求める勇気と新たな思想を、立憲主義という言葉は与えています。九条以外の分野でこれをうまく活用する方法を探すことが急がれなければなりません。

金田 国民のたたかいの重要さが実感でき、立憲主義という言葉が実感をもって使えるようになってきましたね。

必ず勝たなければならない比例代表と兵庫選挙区


――いよいよ今年は参議院選挙です…

石川 強調したいのは、やはり立憲主義の回復を求める取り組みの大切さです。九条や二五条、さらに国民の教育を受ける権利(二六条)、安心してはたらく権利(二七、二八条)をしっかり守るのが政治の役割だ。そのことを強く訴えていきたい。その理解の広まりは、国民の主権者としての成長をさらに促します。

兵庫に候補者を立てるという、おおさか系「維新」は、改憲勢力で、九条、二五条をないがしろにする勢力です。自民党と公明党は消費税を増税し、戦争法を通した張本人です。憲法を基準にすえた論戦で徹底的に攻めていく必要があると思います。同時に、遅れることなく二〇一七年の県知事選挙も準備したい。〝立憲主義を地方政治に求める市民の共同〟を追求したいと思っています。

金田峰生参院選挙区予定候補
金田 兵庫選挙区は定数三になりました。増えた一議席を戦争法賛成派に渡すわけにはいきません。今度の参議院選挙で与党を少数派に落とさなければなりません。

それには日本共産党の金田がどうしても勝たなければなりません。そうでないと、戦争法廃止の政府をつくることにはつながりません。戦争法案に反対した民主党と日本共産党、両党とも議席を得なくてはなりません。

非常に激しいたたかいになろうかと思いますが、自力をつけて、必ず勝利したいと思います。

大門 兵庫選挙区では、おおさか系「維新」の実態をズバリ明らかにしていく必要があります。反安倍でもなんでもない。むしろ安倍政権の一番近くの応援団。そういうことを、はっきりと暴露していくことが重要です。

全体の論戦では、安倍首相は参議院選挙までは憲法、戦争法など際どい問題はできるだけ出さず、経済・暮らしの問題でごまかして、参議院選挙で三分の二の議席を取れば、憲法改正に着手しようと考えています。

しかし、経済・暮らしの問題なら、飛んで火にいる夏の虫です。この問題でも「アベ政治を許さない」と思っている人がいっぱいいるからです。戦争法廃止を中心にすえながら、経済・暮らしの問題でも徹底的にアベ政治の実態を暴露することが重要になります。

参院選まであと半年、その先頭で頑張ります。

(2016年1月3日付「兵庫民報」掲載)

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