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2016年1月24日日曜日

憲法が輝く兵庫県政へ[14]:農業

農業と平和は国の礎


兵庫県農民運動連合会 田中眞一郎

TPPで日本の農業が壊滅するという話は正しい。

もっとハッキリ言うなら、すっかり衰退していてTPPがトドメの一撃となりうる。

そんな状態だから、運動の成果でTPPへの参加を取り止めただけでは、日本の農業を魅力ある産業にできないと思っている。

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一昨年の春に、淡路島の農家で大学を卒業した長男が、農業を継いでくれそうだと喜んでいたが、教職員に採用されてしまった。残念ではあるが、皆「ヨカッタネ」と声をそろえる。公務員なら安定した給料がもらえる。

対して農業で得られる収入はささやかだ。

天候不順でキャベツの値段が倍になった時、二百円のキャベツが高いと言われた事がある。テニスコート三面くらいの畑に千玉のキャベツが育っていた。全部二百円で売れても二十万円で終わり。翌月から次の収穫まで無収入で過ごすのだ。

だから、少しでも高く売りたい。

この時は大雪で、銀世界……キャベツは雪に隠れて見えない。雪をかき分けながら収穫するキャベツは寒さからアントシアニンで紫色に色づいていた。見事な出来栄えだったが、「寒さで小さいね」と値切られて二百円で売れなかった。

こんな状況で野菜を作っても、野菜には行政から補助金が出ないから、生計をたてる事は難しい。

農業に憧れて、野菜を作りたいという人がいても、会社員や公務員を定年まで勤めあげて十分な年金で生活が保障されている人でなければ無理だ。若い後継者など望めない。

水田稲作も低米価で赤字が当たり前になっている。五キロ=二千円の米は茶碗一杯に換算すると三十円だ。茶碗一杯三十円でも高いといわれてはどうしようもない。

家族経営の農家は年金をつぎ込んで農業を続けているのが実態だ。その一方で政府が推奨する大規模農家は借金が増えるばかりで、先が見えない。年金で賄える程度の赤字では済まないのだ。生命保険を担保に借金を続ける酪農家もいる。

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農業は、食べる人があってこその産業だ。

しかし、世界で日本だけが二十年以上も労働者の賃金が増えず、不安定な非正規労働者が当たり前になった。低賃金では、食べるものも価格で選択せざるをえない。

私はかつて日雇い派遣で日当三千八百円の仕事が有ったり無かったりの生活をしていた。昼食に飲み物は百円で一リットル、食べ物は百五十円で一番カロリーの高いパンを買っていた。見回すと、日雇い派遣の全員が同じものを買っている。店で自由に選んだつもりが、選ばされている事に気づいた。

低賃金では年金も正社員のようには負担できない。現在、高齢者の年金受給額が減る一方なのも、現役世代の賃金が安すぎるから年金の原資が不足するのだ。

現役労働者が適正な賃金を得て、高齢者も不安なく暮らせる額の年金を受け取れる社会でなければ、安心安全な国産農産物は、行き場を失う。

農業の問題は農村だけでは解決しない。

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七十年前、新しい憲法とともに、すばらしい未来像を持っていたはずだ。もう一度、日本社会に望ましい未来像を思い出し、今度はシッカリ持たなくてはならない。

今の政治は何もかも間違っている。

農業と平和は国の礎だ。農地を荒らし、戦争をする国に未来は無い。

(2016年1月24日付「兵庫民報」掲載)

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