戦争と健康は相容れない
全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)は、地域の国民の目線から医療をよくすることを追求し、運動している医療団体です。
七月の全日本民医連評議員会で、「戦後七十年、平和と人権をさらに高く掲げて」と題する特別決議をあげました。
いまSDH(健康の社会的決定要因)がWHO(世界保健機関)などで取り上げられています。健康を害する社会的要因に対して取り組むことが、個々の医療とともに重要だ、ということが医療分野の国際的な流れになっています。
健康を害する要因の最たるものが戦争です。
敗戦の年・一九四五年の日本人の平均寿命は公的な統計ではありませんが、男性二十四歳、女性三十八歳だったといわれています。平和の時代には考えられない短さです。健康と戦争は相容れません。
評議委員会ではSDHの精神に立って、二つの点が強調されました。
一つは憲法の問題です。
ある人々は、憲法は「押し付けられた」というけれども、実際には、政府最終案に対する世論調査(四六年五月、毎日新聞)で七割が戦争放棄に賛成するなど、現憲法は国民多数に歓迎されて生まれました。今日まで日本に平和をもたらしてきた一番大きな力は国民のなかに「憲法を守ろう」という運動・意識がずっとあったからです。
もう一つは医療倫理の問題です。
ドイツの医療界は、ナチス時代の医療者の非人道的行為を戦争犯罪と規定し厳しく自己批判し、医療教育の中でも戦争犯罪についての講義が行われています。しかし、日本の医療界は、歴史の検証・反省が不十分なまま現代に至っています。私たちもその一員ですから、医療者として声をあげていくことが重要です。
こういう判断ができる民医連という組織で働いていることに私は大きな誇りを感じています。
私は、青年時代がベトナム戦争に重なり、当時から平和や反戦、憲法九条、原爆などについて考えることが当たり前のようであった世代です。しかし、いまの若い世代は教育の中でこうしたことを知らされていません。
その若い世代の中からも、今回のことで憲法、戦争・平和について改めて学び直した人が大勢出てきました。反対運動を通じて主権者としての意識が高まっています。
私たちの病院内でも、成立後、子育て世代の若い職員たちが、「あすわか」の弁護士さんを呼び、院内で憲法カフェを開くなど、自主的な活動が生まれるなど、従来にない動きがあります。
憲法の精神が根付いているのだと強く感じられ、確信になり、勇気をもらっています。
共産党の「戦争法廃止の国民連合政府」の提案は、ほんとうにすごい。中身がシンプルで分かりやすい。戦争法廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回、そのための連合政府をつくると目的が明確です。しかも、この二つをやり遂げたら解散・総選挙をするという提案は、国民がどんな政府を選び託すのか、国民主権をとても大事にしている。これはすごいセンスだと思いました。
政党間では色々問題はあるのでしょうが、私たち国民自身の世論形成が戦争法廃止の国民連合政府を実現する力になると思います。いま提起されている「二千万人署名」も大いに取り組もうと活動を開始しています。
民医連は色々な運動の「架け橋」という表現で、従来はお付き合いのなかった様々な組織とのつなぎ目になるよう取り組んでいます。様々な違いがあっても大事な課題で協力、連帯していくことに、特に若い人たちといっしょに頑張っていけたらと思います。 (談)
(2015年12月20日付「兵庫民報」掲載)
