二次医療圏ごとに策定
「医療・介護総合法」では、都道府県は、病床機能を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の四つの機能に分類し、国が示した指針に基づき、二〇二五年における機能別の病床必要数を二次医療圏域ごとに明らかにした「地域医療構想」を策定し、機能再編を進めることとされています。
兵庫県は、医療審議会保健医療計画部会に諮って構想案づくりを進めるとともに、同時並行で各圏域に検討委員会(非公開)を設置。構想を来春策定する予定です。
病床数を大幅削減⁈
八月の審議会には、県内の「必要病床数」の見込みが示されました。
高齢化率がピークを迎える二〇二五年に「必要な」病床数と現行の病床数の差は、推計方法により異なりますが、「マイナス五百九十七床~一千二百七十七床」、つまり「最大五百九十七床が不足~最大一千二百七十七床の削減が必要」となっています。
表は、最大で一千二百七十七床が過剰として削減が必要とされる場合の見込みから作成したものです。
北播磨・西播磨・但馬・丹波・淡路など郡部中心の圏域では、急性期(表では省略)も慢性期も病床が「過剰」となり、仮にむりやり「必要病床数」に合わせた削減が進められると、高齢者人口はほぼ変わらないにもかかわらず、四割近い病床削減になりかねない地域もあります。
合計数では病床不足となる都市部の圏域でも、慢性期病床は軒並み「過剰」に。高齢者人口の伸びが一四・九%なのに逆に一五・三%の削減となる神戸圏域をはじめ、大幅な削減が必要、ということになってしまいます。
今でも医療資源の少ない郡部で病床削減となったり、特養ホームなどが大幅に不足する中、高齢者人口は増えるのに、慢性期病床が大幅削減となったりするなど、示された「必要病床数」がまったく現実にあわないのは明らかです。
削減前提の推計押し付けられ
これは、「必要病床数」を計算する基になった国の医療需要推計が、地域ごとに異なる実情や、潜在的な医療需要などをまったく考慮しない全国一律のもので、「急性期」等は現行水準を超えないこと、「慢性期」に至っては、削減することを前提としたやり方になっているからです。
また、構想のもととなる現行の病床数と六年後の予定病床数は、各病院に報告させ都道府県を通じて国がとりまとめた(※)ものですが、複数の機能をもつ病棟でも無理やり四機能のうちの一つに分類させ、ベッドがあっても医師不足のためにしかたなく病棟を閉鎖しているなどの事情があっても、動いている「稼働病床」だけで機能を判断されるなど、地域・病院ごとの実情が反映されていません。
- ※病床機能報告制度
- 都道府県ごとにまとめることになっていたが、「負担軽減」を理由に、国がみずほ総研に委託して病院提出の報告書と診療レセプトデータを一律に集約。
国のねらいは医療費削減
医療審議会では示された必要病床数を「出発点として」協議していく、としています。
国のねらいは、病床を減らして医療費を削減することであり、都道府県にも「医療費適正化計画」と整合させて「地域医療構想」を進めることを求めています。
一方で国は、「地域医療構想」はあくまでも都道府県が地域の実情に応じて自主的に策定するものだ、とのべ、全国知事会も「地域の実情を踏まえた対応」を求めています。
県「地域医療構想」を国の推計通りに策定し、病床削減を実施させるのでなく、住民や医療関係者の声を十分反映させ、必要な医療を確保させることが求められます。
