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2015年7月19日日曜日

発言:和田進 神戸大学名誉教授(67歳)


米国の軍事行動支援が目的


憲法9条の核心は、〝国家の武力行使それ自体を否定した〟ことにあります。これは憲法制定過程での吉田茂首相答弁「自衛権の発動としての戦争も、又交戦権も放棄したものであります」に示されています。

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こうした本来の規範を自民党政権は「解釈改憲」で変えてきました。

第1期は1950年代前半、日本の再軍備、自衛隊創設にあたり、個別的自衛権発動の場合は武力行使が許されるという「専守防衛論」が54年に確立します。しかしこの段階では①海外派兵は禁止②集団的自衛権行使は否認③保有兵器も限定―という限定性をもったものでした。

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この解釈に、米ソ冷戦終焉後、変化が起こります。90年代前半にPKO等協力法、国際緊急援助隊法改正で、「国連協力」「国際貢献」「人道的貢献」を名目として自衛隊が海外に出ていきます。さらに、96年「日米安保共同宣言」、97年「新ガイドライン」で日米安保体制がまったく新たな段階に入ります。日本に対する武力攻撃とは無関係に米軍が起こした軍事行動を全面的に支援することになります。これが99年「周辺事態法」で法制化されます。

この段階で第2の解釈改憲の時代に入ります。「専守防衛論」の枠組みで説明するために、後方支援は米軍の武力行使とは「一体化」できないという論が登場します。

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ところが、米国はこれに不満を示します。2000年アーミテージ・ナイレポートで明文化されているように、集団的自衛権行使の禁止事項を取り払うことを要求してきます。21世紀に入ると、自衛隊がアフガン戦争、イラク戦争など実際の戦争に直接参加していきます。

こうなると54年来の「専守防衛論」では説明が不可能となり、第1次安倍政権は明文改憲をめざしましたが、頓挫します。

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第2次安倍政権も当初、96条改正による明文改憲を追求しますが、昨年7月1日「集団的自衛権の『限定』容認」「米軍支援の大幅拡大」を閣議決定しました。

9条の規範性を全面的に破壊しようとする解釈改憲で打破しようとしているのが現時点です。

日本の防衛とは無関係に、グローバルに展開する米国の軍事行動を支援することが求められている。これが、54年来、法的安定性を保ち、国民の支持も一定得てきた――私は違憲だと思うのですが――「専守防衛」という憲法解釈を、明文改憲ではなく、閣議決定という手段を講じてまで変えなくてはならなくなった理由です。こうした流れをとらえておくことが重要です。

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戦争体験をもつ政治家が少なくなってきたこと、小選挙区制・政党助成金による党内統制が強まっていることと、安倍首相の右翼的な個性とがあいまって、自民党はこれまでの〝小国主義〟的な保守政党とは全く異なる政党になっています。

戦後70年にして日本国憲法は大きな岐路に立っています。「保革」を超えた国民的共同のたたかいを大いに広げなくてはなりません。 (談)


(神戸大学名誉教授(憲法学)・兵庫県憲法会議代表幹事)

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

金田氏ら国会請願署名11万2千人分堀内・大門議員に託す

大門参院議員(右)、堀内衆院議員(その横)に署名を託す
兵庫県党からの代表団(左手奥が金田峰生参院予定候補)

与党が「戦争法案」の採決を狙うなか、金田峰生参議院兵庫選挙区予定候補ら7人が7月9日、国会を訪ね、兵庫県で集めた「戦争法案反対」国会請願署名、約1万2千人分を堀内照文衆議院議員、大門みきし参議院議員に託しました。

堀内議員、大門議員は「与党が採決を強行する姿勢を強めているが、日弁連の院内集会に野党党首らもこぞって集まり、『今国会での採決許すな』で一致してたたかうことを確認している」と報告。「『戦争法案廃案へ』の世論をさらに広げ、世論調査で8~9割が『反対』となるような列島騒然の状況をつくりだそう」と呼びかけました。

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参加者は、同じ日に国会前で行われた第8回「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動」に合流。あいにくの雨が降りしきるなか1千5百人が集まり、国会議員や主催団体から「与党の強行許さない」「違憲の法案は廃案しかない」などと決意表明がされ、「戦争法案絶対反対」「採決強行絶対許すな」とシュプレヒコールをあげました。

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

戦争法案絶対反対!:淡路集会


「戦争法案反対」「憲法9条壊すな」をスローガンに7月10日、洲本市で「集団的自衛権行使容認反対」淡路集会が、淡路地区メーデー実行委員会の主催で開かれ、労働組合、年金者組合、新日本婦人の会、民主商工会、淡路9条の会、淡路島平和委員会など17団体、120人が参加しました。

高丸淳次実行委員長の挨拶に続き各団体がリレートークを行い「集団的自衛権行使容認に反対し、『戦争法案』成立阻止をよびかける決議」を採択しました。

集会後、洲本市内の中心街を、各団体の「のぼり」や横断幕、プラカードを掲げ、「安倍政権の暴走を許さないぞ」「強行採決反対」などのコールを響かせ、デモ行進して訴えました。

また同日「淡路9条の会」(高倍昭治会長)は各界から50人を超える人が賛同した「私たちは、日本を再び『戦争する国』にする安全保障関連法案に反対します」とした「戦争法案」反対アピールを発表しました。

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

戦争法案絶対反対!:党派超え宝塚の8市議

宣伝する(左から)となき、大島、みとみ、
北野、田中、梶川、たぶち各議員

戦争法案に反対する宝塚市議会議員有志が7月10日、阪急逆瀬川駅前で宣伝を行いました。

「議員有志」は、井上聖(無所属)、大島淡紅子(社民)、梶川みさお(社民)、北野聡子(民主)、田中こう・たぶち静子・となき正勝・みとみ稔之(共産)の8議員。2013年12月6日の秘密保護法強行採決の前日、急遽行った超党派宣伝に続くものです。呼びかけた田中議員は「政党・立場の違いを超え、何よりも人権と平和を尊重するメンバー」と語ります。

当日、井上議員は参加できませんでしたが、午後5時から1時間、7人がリレートークで訴えました。300枚のビラがあっという間に無くなりました。

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

戦争法案反対!:堀内衆院議員らが西宮・芦屋で訴え

JR西宮駅前で訴える
(左から)庄本、堀内、いそみの各議員

日本共産党西宮芦屋地区委員会は7月12日、堀内照文衆院議員とともに、戦争法案の廃案をめざしJR西宮駅前、JR芦屋駅前で街頭宣伝を行いました。

堀内氏は、戦争法案をめぐり15日に委員会可決、16日に衆院本会議での採決を与党が狙っている緊迫した情勢に触れ、「多くの方が反対の声をあげているなかで、与党だけで採決をごり押しするなど許されない」と厳しく指摘し、国会論戦であきらかになった3つの問題点を紹介し、「今回の安倍首相のやり方は、あまりにもひどい。憲法の大原則を踏み破るとともに、民主主義、国民主権の原則も踏み破ろうとしている」と指摘し、採決強行の暴挙を許すわけにはいかないと強調しました。

「反対の声は、日に日にひろがっています。学生たちも国会前で、2千人、3千人、1昨日は、1万5千人以上が集まり声をあげています」と紹介。この地域の学生も行動をはじめていることにも触れながら、「5~6割の反対の世論を7~8割にして、圧倒的な声を示しましょう。そのためにも、それぞれの意思を表明し、さまざまなやり方で国会につきつけましょう」と呼びかけました。

いそみ恵子県議は、「この法案の廃案を求めてほしいと井戸知事に迫る中で、『国会で国民の納得が得られるように、10分かつ慎重に審議すべきだ』と答弁した」ことを紹介し、「各地方議会でも『廃案』『慎重審議』と意見があがっている。この声もふまえ、採決強行するのではなく、廃案にすべきだ」と訴えました。

平野貞雄芦屋市議、庄本けんじ西宮市議もそれぞれ訴えました。

聴衆から手がふられ、拍手も起こり、「がんばって」などの声も寄せられました。


(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

青年たちが戦争法案の問題点を学習

7月9日、元自衛官の泥憲和さんをゲストに「Tell Me What The Democracy Looks Like〜泥憲和さんに聞いてみよう〜」と題して、戦争法案の問題についての学習会が神戸市内で開かれ、44人が参加しました。実行委員会は、企画に向けて2千枚のフライヤーを作成し、駅前や高校門前などで配布してきました。

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講演で泥氏は、安保法案推進側の3つの論点―①日本は安全保障のために米国の軍事力に頼るしかないのではないか②集団的自衛権で日米関係を緊密にしておく方がよいのではないか③制約の多い日本国憲法は改めるべきではないか―についてそれぞれ検証しました。

論点①については、北朝鮮ミサイル問題、尖閣諸島問題をあげて安全保障上の脅威は存在しないことを明らかにしました。

論点②については、米軍幹部養成用の教科書に、反米的な国の政府に対して反政府ゲリラを養成して政権を転覆させることが書かれていることを紹介し、無法な戦争がアメリカの対テロ戦争の実態であり、また、同盟国であったとしても戦局が悪くなると撤退していることなど、日米関係を強化しても安全保障は高まらず、さらにテロを拡散する結果となることを明らかにしました。

論点③については、日本国内の国際支援団体による支援が紛争の平和的解決に貢献した事例として、チュニジアでの政権交代、フィリピン・ミンダナオ島の独立紛争終結をあげ、「こうした平和的な紛争解決のアプローチは日本国憲法のもつ力だ」と泥さんは強調し、日本国憲法による制約があるからこそ、国際社会に貢献できるということを明らかにしました。

最後に、「SASPLの若者たちは『民主主義は終わった』という声に対して『終わっているなら始めるぞ』と言って行動してきた。戦争法案の問題でも、来年は参院選があるし、その次には衆議院選挙もある。何度だって始めることができるんです。あきらめなければ、必ず勝てます」とたたかいを呼びかけ、講演を結びました。

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参加者からの質疑応答では「戦争法案の問題について自分たちは止めるために何ができるのか」など直球の質問も。「一人一人対話していくことが大事。特に戦争法案に賛成だと思っている人と対話してひっくり返すのが大事。今日の講演もぜひ力にしてほしい」と答えました。「今まで聞いたどの講演よりも良かった」などの感想も寄せられています。

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

神戸市政連続講座:交通は基本的人権

神戸・神戸市民要求を実現する会


神戸・市民要求を実現する会は7月9日、神戸市政連続講座「市民の足・交通と住み続けられる街づくりを考える」を神戸市内で開き55名が参加しました。

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主催者を代表し、森口眞良さん(兵庫県社会保障推進協議会神戸市協議会議長)が開会挨拶。高齢化にともない、地域密着で気軽に使えるバスや鉄道を求める声が高まり、対神戸市の運動も各地で広がっていることを指摘。公共交通論をしっかり学ぶとともに、各地の運動の交流をし、束ねる組織づくりをすすめたいと述べました。

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大阪市立大学名誉教授の柴田悦子さんが講演。「公共交通への需要が高まる中、昨年交通政策基本法が制定されたが、地域交通の政策づくりは地方自治体が主体になるのに、地方自治体の権限を認めず、政府は〝国際競争力の強化〟など相変わらずの大規模投資が続いている問題がある」「交通は国民の権利であり憲法が定める生存権や幸福追求権などの〝基本的人権〟という視点が大切と」指摘しました。

「神戸は東西交通網中心に発展したが、坂道など不便な南北交通の改善や、ニュータウンなどの住宅地への交通網改善が課題」「地域交通は地域づくりの土台」であるとして、「困っている地域住民」の悩みにまず寄り添い、声を集めることを出発点に、繰り返し自治体や議会に要求していくことが、他都市での制度前進につながっている。ぜひ進めてほしいと運動をはげましました。

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運動交流では、神戸電鉄の粟生線の存続充実の北区と西区の会の活動、福祉パスの存続のとりくみ、長田区でバス路線の存続・充実の運動などの発言がありました。

会の共同代表の武村義人さんは閉会挨拶で、今日学んだ公共交通の役割や、神戸で広がっている運動に依拠して、公共交通の充実を一致点に協同して神戸市政に求めていく協同組織づくりに、ぜひ多くの市民団体が参加してほしいと呼びかけました。


(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

借り上げ住宅協議会・弁護団がキャナルタウンで集会

「住まいは人権」—継続入居全力で支援




ひょうご震災復興借り上げ住宅協議会と借り上げ住宅兵庫区連絡会は7月11日、JR兵庫駅前のキャナルタウンで借り上げ住宅入居者集会を開きました。

キャナルタウンの借上市営住宅について、神戸市は、来年1月以降順次、URからの借り上げ期間が20年となるとして、訪問・電話などで「住み替え」を繰り返し迫ってきましたが、6月初旬には、「完全予約制」に申し込んでいない入居者に「退去通知」を送りつけてきました。

借り上げ住宅協議会と借上弁護団は市に「退去通知の撤回」を求める声明を発表するとともに、住民の不安にこたえようとあらためて、集会を開きました。

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集会では、ひょうご震災復興借り上げ住宅協議会の段野太一氏が、退去に応じない入居者にペナルティを設けるため市営住宅条例の一部改正まで狙っているなど神戸市の退去方針の不当性を強く批判するとともに、「住まいは人権」であり、希望者全員の継続入居へ全力で支援すると決意を表明しました。

また、借上弁護団事務局長の吉田維一弁護士は、弁護士と代理人契約を結ぶことで個々の入居者への市の執拗な働きかけを止められること、市が裁判を起こした場合にも対応すること、弁護士費用は法テラスなどの制度を利用できることなどを説明しました。

西宮の連絡会からも5人が参加し、今年9月に借り上げ期限を迎える住宅に住む中下節子さんが、弁護士を代理人としたことで市からの直接の訪問・電話が無くなり生活に平穏を取り戻せていると実感を語り、キャナルタウンの入居者を励ましました。

また協議会からは、条例改正(案)に対するパブリックコメントで、継続入居できるような条例に作りかえるよう意見表明をする取り組みを広げることが提起されました。

この集会には、日本共産党の大かわら鈴子市議、味口としゆき市議が出席し、市の動きを報告。きだ結県議は兵庫県も借上県営住宅の「継続入居可否判定手続きに関する説明会」を行っていることを報告しました。


(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

養父市議選不当捜査事件で抗議集会


養父警察の不当捜査をやめさせる市民の会が7月11日、養父市八鹿町で抗議集会を開催し、県下各地から150人が参加しました。

養父市議選不当捜査は兵庫県警・養父署が、2012年10月の養父市議選の際、八鹿高校元教師が同校OBに出した手紙を公職選挙法違反だとして、現在まで2年9カ月も捜査を続け、市民を脅している事件です。

警察は、選挙後、元教師に出頭を求め、尾行、聞き込みを行い、半年後に元教師宅の家宅捜索を行いました。2カ月後に押収品をすべて返還したものの、捜査終結も送検もせず、定期的に呼び出しを継続しています。市民の会からの捜査終結の要請に「時効まではやるかも」「時効後もできない規定はない」と開き直っています。

今回の集会では、日本国民救援会兵庫県本部の濱嶋隆昌事務局次長が、公選法自体が国連人権委員会から表現の自由を侵害するものとして停止するよう求められていること紹介し、養父事件のたたかいの大義を報告しました。

また、前田貞夫弁護士は、元教師や家族は緊張を強いられ、体調を壊した方もあり、まさに「拷問」だと指摘。捜査終結を要請した際、今後呼び出しを続けることで重大な事態が起こる危険があると警告した医師の診断書の受け取りをを警察が拒否したこともあげ、これは40年前の八鹿高校事件で暴力を容認、市民の批判を受け、解決金を払ったことへの逆恨みではないかと指摘しました。

各分野の発言のあと、元教師らが挨拶し、集会で励まされていると感謝を述べました。

集会後、参加者らは養父署へ集会決議を届け、抗議行動を行いました。養父署は「不穏な状況で受け取れない」と集会決議の受取りを拒否。「市民の会」が後日、再度届けることにしました。

この集会には、議員になる前からこのたたかいに参加してきた堀内照文衆議院議員も連帯挨拶を行い、警察の人権蹂躙を批判し、戦争法案めぐる事態にも触れ、被害者の元教師のたたかいを激励しました。

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

アスベスト尼崎の会:高裁にむけ署名活動スタート


「クボタショック」10年を機に、あらためて公害としてのアスベスト被害の深刻さを学び、知を力にしようと、アスベスト被害からいのちと健康を守る尼崎の会(アスベスト尼崎の会)は7月12日、著書『死の棘・アスベスト 作家はなぜ死んだのか』で2015年科学ジャーナリスト賞を受賞した神戸新聞論説委員で東京支社編集部長の加藤正文氏を招いて学習会を小田公民館ホールで開催し、114人が参加しました。

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開会にあたり、船越正信会長が「公立病院退院後の往診依頼のなかで、中皮腫患者が相次いで4人。被害の深刻さは度を増している。加藤さんの話を力に、運動を広げ、国の責任を認めさせ、制度の改善につなげていこう」と挨拶しました。

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「過去・現在・未来の『声なき声』に耳を傾けて」と題して講演した加藤氏は、尼崎市杭瀬に育ち、神戸新聞の記者として臨海部の尼崎大気汚染、国道43号線排ガス等の報道を継続してきた経験を述べ、「まさか尼崎市中心部の住宅密集地に巨大なアスベスト工場があることを市民のほとんどが知らなかった。クボタ旧神崎工場で明るみに出た工場内外の被害は深刻」「毒性の強い青石綿を8万8,671トン使用。国内最大の量。白石綿はさらに多く14万9千トンを使用。工場の中は充満する粉塵、防御せずに作業。従業員の半分が発症、4分の1が死亡という『死の工場』。工場外への大量拡散につながった」「旧神崎工場から同心円状に広がる被害であり、クボタの責任が問われるが、社長は因果関係を否定し、『ピークは過ぎた』との認識だった」と明らかにしました。

加藤氏は立命館大学の海外調査に同行し、アメリカ、イタリア、カナダ等の石綿問題を取材。イタリア、カナダの露天掘り石綿鉱山の光景をスライドで報告。「これらの石綿が神戸港に荷揚げされ、日通などによって工場に運ばれ、製品となって建設現場、震災現場で見られたビル解体と大量の瓦礫となった。かたわらを通る大勢の市民の肺に髪の毛の5千分の1のアスベスト粉じん(死の棘)が突き刺さり、20年から50年を経て中皮腫や肺がんを発症する、『複合型ストック公害』が起こっている」と指摘しました。

「阪神・淡路大震災に続き東日本大震災の瓦礫処理の状況を見ても、国の対応はいつも遅れ、被害を拡大しており、アスベスト問題は決して過去の問題でなく、現在につなげ、未来の被害を防ぐ抜本対策が求められる」と、まとめました。

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八木和也弁護団長代行が、弁護団体制の変更と、これまでのたたかいを振り返り、今後の課題を報告。粕川實則事務局長が労災型控訴審(9月7日)の参加要請と10月末までに大阪高裁に向けて5万署名の取り組みを提起しました。

日本共産党の堀内照文衆議院議員が挨拶。大門みきし参議院議員、宮本たけし、清水ただし衆議院議員のメッセージが紹介されました。

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟・傍聴記:7月7日

注目の判決は10月29日に

副島圀義

地裁での勝訴判決を喜んだのもつかの間、国の控訴直後に死去した武田武俊さんについての大阪高裁での審理は、7月7日で弁論終結し、10月29日に判決、と決まりました。

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国側は今回も、裁判所の指示した期日を無視して、前日になって書面を提出。それなのに、傍聴者の前では口頭で意見を述べることもしません。自分たちの主張への恥ずかしさを多少は感じているのかな?とかんぐります。

じっさい、70年前に長崎の爆心地近くで数日すごした武田さんの被曝量を「0.026グレイを大幅に下回るというごく僅かなものであり、がんのリスクが認められる最低の線量である0.2グレイを満たさないから、武田さんの肝臓がんの発症が放射線によるリスクが現実化したものではない」と主張していますから(注)、普通の神経の持ち主なら「視線を泳がせる」ことでしょう。

対して、原告代理人・愛須弁護士は、

  • 被爆者の平均年齢が80歳を越し、武田さんも含め、年に9千人以上が亡くなっている。被爆者には時間がないのだ。
  • 原爆症訴訟は、大半で国側が敗訴。行政訴訟としては異例な状況だ。
  • すでに破綻した「線量評価」「原因確立」などへの固執をやめよ。
  • 国家補償を認めよ。

などと、きびしく最終弁論を展開しました。


(注)事故直後から、かなりいろいろな線量測定がされてきた福島事故でも、個々の被害者の浴びた線量測定は困難です。

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

加東市ではじめての国民平和行進


加東市で7月7日、「第1回原水爆禁止国民平和行進」が行われました。原水爆禁止国民平和行進加東市実行委員会が主催しました。

旧滝野庁舎・駐車場に集合して加東市役所までの約5.5kmを延べ人数14名、宣伝カー2台で踏破しました。梅雨時、あいにくの雨降りでしたが「東京―加東市―広島」と書かれた通し行進と同じ横断幕を掲げ無事に歩き通せました。

皆さん歩き初めは最後まで行けるか不安もあって足取りも重かったようですが、社商店街に入ると俄然元気になって市役所の「非核宣言都市」標柱にたどり着くと「来年もやりましょう!」という声も出ました。

初めてだということもあり、横断幕、宣伝用のアナウンス、うたごえテープ、市への要請文などを県原水協で用意していただき、大変お世話になりました。

(岸本高志=同実行委員会)

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

「あさぎ」7月詠草:姫路年金者組合

はじめての苺づくりの楽しみは甘い宝石口にするとき
雨降りてひと日のうちに水はられ山を写して田植えを待ちぬ
藤原信子

万緑の鉱山跡の清流に日本最古の鋳鉄橋架かる
亡き夫の「消えた台帳」見つかりて増えし年金雀の涙
衣川有賀子

色々な料理が並ぶおもてなし孫の料理に舌鼓うつ
次々と出てくる料理に喜びて箸が進みぬ至福のタイム
江藤雅江

海の駅みなと潮風背に受けて足湯につかり雲を見上げる
花桟敷揚げたて天麩羅立ち食いは玉葱100円穴子も100円
常田洋子

初なりの胡瓜を食めば音たかしほのかな甘さ口にひろがる
太々と育ちしトマトのまた芽とり草抜きやりて追肥ほどこす
田渕茂美

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

ひなたぽっころりん(558)



(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)

観感楽学

但馬地域には国立病院も県立病院もない。隣接地域には国立篠山、国立舞鶴、国立姫路、国立鳥取病院―いずれも戦後陸海軍病院が廃止され一般総合病院に移行した。但馬地域は軍国主義の「恩恵」にも与らなかったのだ▼「山陰山僻ナレバ、疾病ヲ保護スル衛生行キ届カズ、非命ニ死スルモノ少カラズ、誠ニ愍然ニ耐ヘズ、因テ此度豊岡表ニ於テ仮医局相立テ申候」(1870年兵庫県医局布達)と豊岡病院開設を告げている。しかし数年で財政を理由に県立病院は廃止され、実質は町村立の公立豊岡病院となり、紆余曲折を経て今日に至る▼おもしろいことに病院組合は1939年(昭和14年)、病院剰余金を原資に農学校設立を決議、「農業立国」の風土に適しているとして当時の町村長たちも賛同している。戦後に県立豊岡農業高校に昇格したが、自民党農政の下で、今では県立豊岡総合高校に統合され農業科はない▼但馬地域の九つの市町・組合立の公立病院は、政府と兵庫県の病床減らしの再編政策で、病院存亡の危機が続いている。公立病院も農業高校も住民が発意した「地方創生」そのものではないか。まさに風土を生かした自治が問われている。 (A)

(2015年7月26日付「兵庫民報」掲載)

観感楽学

被爆70年の原水爆禁止世界大会にこれまでにない規模で海外代表から参加申し込みが届いている。その数21カ国から131人(7月9日現在)▼新しく国連軍縮担当上級代表に就任したキム・ウォンスキー氏が国連事務総長代理として初参加。政府代表も非同盟運動の軍縮担当国のインドネシア、次期議長国ベネズエラ、キューバ、エジプト、カザフスタン、アイルランドなど。核兵器国を国際司法裁判所に訴えたマーシャル諸島共和国のトニー・デブレム外相も▼NGO代表も昨年参加しなかった中国6人、フィンランド6人、ノルウエー7人、フランスからは26人など。注目は、世界教会協議会が「核の傘」政策の国(日、独、韓など)の代表12人が参加し、日本政府に要請行動を計画していることだ▼核兵器廃絶と「戦争する国になるな」の国際的注目が日本の運動に注がれている。大会後、NPT再検討会議の国際共同行動の中心になったジョセフ・ガーソン氏(米)と欧州反核運動の中心、デイブ・ウェブ氏(英核軍縮キャンペーン議長)が神戸を訪問する▼戦争法案阻止の大運動の中で出迎え、日本の平和勢力の底力を見せたいものだ。 (K)

(2015年7月19日付「兵庫民報」掲載)