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2015年11月22日日曜日

観感楽学

ヘミングウェイ『誰がために鐘はなる』、スタインベック『怒りの葡萄』、アラゴン『フランスの起床ラッパ』、フーチク『絞首台からのレポート』、ネルーダ『きこりよめざめよ』、尹ユン東ドン柱ジュ『空と風と星と詩』。これらの作品に記されている圧政と侵略者・ファシストに果敢に立ち向かったインターナショナルな壮大な物語は治安維持法下で日本の青年が自由に接することはできなかった▼物語は労働価値学説、史的唯物論、帝国主義と民族自決権、反ファシスト統一戦線の理論に裏付けられていた。それは帝国主義日本が姿を現した一九〇〇年代初頭から弾圧法下で半世紀、日本の良識が命がけで獲得し暗黒を照らした「理性の輝き」であった▼啄木が「朝鮮国にくろぐろと墨を」を塗った頃から、暗黒を突き破るたたかいは東北アジアの民衆を結ぶものとなった。戦後七十年の今日、治安維持法犠牲者国家賠償を求める人々は、闇夜に灯火を掲げ続けた先達を顕彰し反帝独立の夢の相続人でもある▼「慰安婦」を含むすべての戦争犠牲者の国家賠償請求権に時効はない。夢と「理性の輝き」は語り継がれ、日々新たな実りを結ばなくてはならない。戦後七十年、立憲主義の戦線は広がり相続人は確実に増えている。 (A)

(2015年11月22日付「兵庫民報」掲載)

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