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2015年10月18日日曜日

憲法が輝く兵庫県政へ(3):借り上げ復興住宅

二十年目の人災を許すな:借上復興住宅からの「違法追い出し」撤回を

借上復興住宅弁護団・弁護士 松山秀樹

阪神・淡路大震災では、住家の全半壊がおよそ二十五万棟、約四十六万世帯でした。自治体には、被災者住民らに対して、早期に恒久住宅を供給することが求められました。ところが、自治体が自ら建設する公営住宅だけではとても被災者の需要に応じることはできず、民間や住宅・都市整備機構(現・UR)から建物を借り上げて、公営住宅扱いで住民に供給したのです。これが「借上復興住宅」であり、今も阪神間に総数約六千戸が存在します。

西宮市役所への抗議行動で発言する
ひょうご震災復興借り上げ住宅協議会の安田秋成代表(右)と
西宮UR借り上げ市営住宅連絡会の松田康雄代表(左)
(9月29日)

これらの借上復興住宅のうち、西宮市の「シティハイツ西宮北口」は借上期限が平成二十七年九月三十日に満了しました。西宮市は、同住宅に入居している被災高齢者を被告として、住居からの強制的な退去と損害賠償を求める訴訟を提起する議案を十二月議会に提案する方針を表明しています。

神戸市の借上復興住宅「キャナルタウンウエスト一~三号棟」は来年一月末に借上期間が満了し、神戸市も一部の例外を除いて、被災高齢者に対して退去強制をする方針を打ち出しています。「追い出し」の理由は、借上期間が満了したからということです。

しかし、誤解してならないのは、借上復興住宅で借上の期限(多くは二十年間)が設定されているのは、URなどと自治体との間の「借上契約」についてだけです。

入居者と自治体との間の「入居契約」は、通常の市営住宅などの公営住宅と同様に「期限の定めのない」借家契約です。ただし、借上復興住宅に入居した場合には、入居者に借上期間(二十年)が満了した時に転居するという条件がつけられている点で、通常の公営住宅と異なるのです。

そして、転居という条件は入居者の住居の安定にとって極めて重大な条件ですから、公営住宅法では、入居者を保護するために、自治体には入居決定時に、入居者に対して「借上期間満了時に転居しなければならない」条件を明確に通知することが義務づけられています(事前通知制度)。

ところが、西宮市は、今回、退去を求めている入居者に対して、入居時に二十年後の退去義務をいっさい通知していませんでした。キャナルタウンウエストの多くの入居者にも神戸市が事前通知をしていなかったことが明らかとなっています。西宮市も神戸市も、被災者に対して「終の棲家」を提供するとして借上復興住宅に入居させていたのです。

自治体自ら事前通知を怠っていながら、入居者に退去を強制することは明らかに違法です。これでは、消費者に重要な事実を告げない悪質な訪問販売などと同じです。しかも、いま退去が強制されようとしている入居者らは通常の借家人と同様に借地借家法に基づき入居した人々ですから、借地借家法で保護されています。民間の借家で「期限がきた」といって家主が退去を求めることができないのと同じです。

このように西宮市や神戸市が借上復興住宅の入居者に退去を強制することは、通知を怠っているという公営住宅法違反と借地借家法違反で二重の意味で違法なのです。

兵庫県弁護士会も、本年七月に意見書を出し、借上期間満了後も、希望する者の継続入居を認めるべきである、と訴えています。

震災を乗り越えて生き抜いてこられた被災高齢者に対して、住居から追い出すことは、健康と生活を脅かす人災に他なりません。二十年目に被災者に再び危機が迫っています。

借上復興住宅弁護団では、継続入居を希望する全ての人の継続入居を認めさせるため全力を挙げる決意です。今、緊急の取り組みとして西宮市が十二月市議会に提出しようとしている「提訴議案」の撤回を求めた署名活動をしています。ご支援をお願いします。

(2015年10月18日付「兵庫民報」掲載)

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