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2015年9月20日日曜日

なまの舞台をごいっしょに:東京芸術座『蟹工船』

神戸演劇鑑賞会10月例会



「蟹工船」とは、カムサッカ沖で捕獲した蟹を、すぐ船上で缶詰に加工する船のこと。言い換えれば船がそのまま工場である。

昭和三年(一九二八年)四月、函館港。蟹工船・博光丸がエンジンを響かせ、出港を待っている。船の周辺は、かり集められた漁夫、雑夫、見送りの人たちでごった返している。

やがて、博光丸はドラの合図と共に、静かに港を離れた。しかし、出向前の長閑な風景とはまったく違ったのが、船の中の、劣悪な環境と、浅川監督の上長にたいし絶対服従せよ、との激しい檄だった。

一幕は、この劣悪な環境の中での激しい労働に、弱り始める労働者たちの姿を、細部漏れなく描いている。やがて、雑夫宮口が姿を消す。が、見つけられ、ウインチに宙吊りにされて、労働者たちの前で、ぶらんぶらんゆれている。

この出来事のあと、日を追うごとに労働は厳しくなる。病人、怪我人も容赦なく労働に追い立てられ、彼等は、息も絶え絶えになっていた。しかし、船頭頭たちは、労動者たちを殴りつけ、蹴り上げ、ますます労働強化に拍車をかけた。

やがて、労働者たちは、力を合わせることを考えだし、権力者たちに立ち向かって行く。現代の言葉だと〝団結〟である。しかし、労働者の前に立ちはだかった権力の壁は揺るがなかった。その前にたち、彼等は歌う「ソーラン節」を。泣きながら。その歌声の底には、明日への、現代の私たちへの、希望が託されている。 (小谷博子)

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東京芸術座公演 村山知義演出による『蟹工船』/原作=小林多喜二、脚色=大垣肇、演出=印南貞人・川池丈司、出演=北村耕太郎・井上鉄夫ほか/①10月4日(日)13時30分②5日(月)18時30分/神戸文化ホール中ホール/会員制(入会時に入会金千円と月会費2カ月前納)、月会費3千5百円(大学生2千円、中高生千円)/☎078・222・8651、FAX 078・222・8653

(2015年9月20日付「兵庫民報」掲載)

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