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2015年9月6日日曜日

絵本のすすめ:大門みきしエッセイ(3)

「趣味はなんですか?」と聞かれ、「絵本の収集」と答えると、大抵の人は信じられない、清酒の収集のまちがいではないか、といいます。

いまから10年ほど前、書店でたまたま絵本のコーナーを通りかかったとき、実話をもとにした絵本『エリカ・奇跡のいのち』(ルース・バンダー・ジー)が目にとまり、くぎ付けになりました。

第2次世界大戦中、ユダヤ人を強制収容所にはこぶ汽車の窓から、ひとりの母親が生後間もない女の赤ちゃん(エリカ)を毛布にくるんで投げ出します。運よく村人に拾われ、成長したエリカは母のおもいを理解します。「お母さまは、じぶんは『死』に向かいながら、わたしを『生』に向かって投げたのです」と。10分くらいの立ち読みでしたが、2時間の映画を観たような衝撃をうけました。

以来、絵本の魅力にとりつかれ、670冊まで集めたときに、東日本大震災が起こり、地元ボランティアの方をつうじて、避難所の子どもたちに300冊ほど選んでおくりました。その中の1冊、『おばけのてんぷら』(せなけいこ)は、ウサギのうさこちゃんが、おばけをてんぷらにして食べるお話です。「こわい思い(地震や津波の記憶)なんか、てんぷらにして食べちゃえ」と、子どもたちに伝えたかった。

人間にとって大切なものが見失われ、心のうるおいが少ない世の中になってきました。もしかしたら、いま最も絵本を必要としているのは、子どもたち以上に大人たちかもしれません。

(参院選比例予定候補・活動地域=近畿2府4県)

(2015年9月6日付「兵庫民報」掲載)

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