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2015年8月2日日曜日

発言:黒木邦彦さん(神戸松蔭女子学院大学文学部准教授)

敵対よりも関心寄せ合う関係を



2年間韓国で働いていて、4月から今の大学に勤め始めましたが、この2年間で日本がやけに世知辛くなったなと感じたんです。教育に関しては「大学の文系学部を潰す」「役に立つことを教えろ」と言いながら、テレビでは「日本はスゴイ」と妙に煽る。ヘイトスピーチなどもありますし、閉塞感が強まっているんじゃないかと。戦争体験者の話を聞くに「いつの間にか戦争になった」とのことですから、「ん?」と思ったところから意外と早い、危ないのかなと心配しています。

単純に戦争は嫌ですね。僕、鉄砲なんて持てませんし――韓国の友だちの徴兵体験を聞くに、武器ってかなり重いそうで。韓国で教えていた子たちも「徴兵での訓練は地獄だった」と。そんな話を聞いて「いいなあ」とは思わないですよね。

今回の法案については「従米法案」という表現がピンと来ました。アメリカは「敵対国家」にいちゃもんを付けて、そこが自国をアメリカナイズしなければ潰すという国ですよね。そんな国の手先になって、彼らと一緒に火種をまきちらしかねないこの法案に賛同するなんて、頭のねじが3本くらい外れているんじゃないかと思います。

しかも、アメリカについた国のうち、先進国と見なされている国の半分ほどはテロの犠牲になっています。この事実を鑑みると、「世界平和のために」とはとても考えられません。そういう中に日本も入っていったら、間違いなく標的になりますし。卑近な例で考えれば、自分や周りの人たちが殺されるかもしれない。それはやっぱり嫌ですよね。

「戦力は保持しない」と憲法で明文化しているのは、日本くらいなんですよね。数1000年続いている人類の文明において、軍隊を維持したままでは争いがなくならなかったわけだから、21世紀の人類は日本国憲法9条を踏まえた国作りを一度試してみたらいいと思うんですよ。

世界に5千~6千はあると言われている言語を研究している関係上、多様性という言葉に魅力を感じるんですが、「従米」ということになると、多様性とは真逆ですよね。そういう観点からも「従米法案」には賛成しかねます。

国家レベルで見ると、近隣の中国や韓国もどうかと思うのですが、彼らとの言語文化の共通性・類似性は活かすべきだと思います。日本は漢字文化圏にありますし、日本語と韓国語はよく似ていますから。近隣諸国に対して、アメリカの軍事力を笠に着るのではなく、言語文化レベルで繋がれば、EUのような結び付き(問題は噴出していますが)も作れるのではないでしょうか。「いつ攻めてくるか分からないぞ」という20世紀以前風の文言で敵対心を強めるより、言語文化の近さに目を向けて、互いに関心を寄せ合う方が遥かに生産的でしょう。(談)

(2015年8月2日付「兵庫民報」掲載)

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