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2015年6月7日日曜日

観感楽学

100年前の第1次世界大戦をドイツの青年を中心に描いた反戦映画があった▼最前線、頭上を砲弾が飛び交い、塹ざん壕ごうの中は死者と傷ついた兵士たちの血のにおいが充満していた。志願した軍隊だったが、初めて人を撃った青年兵士は塹壕の中で恐怖に震えが止まらない▼やがて雨がやみ、激しかった銃声・砲声もおさまり、戦場一帯が静寂につつまれた。塹壕の中でハーモニカの音が流れ、青年はほっと安堵する。そのとき1匹の蝶がひらひらと舞い降りてきた。青年兵士は「ああ、可愛い」と蝶に手を伸ばす。その瞬間、狙撃兵の銃弾が……。映画はラストシーンで「この日、軍司令部に送られた報告は、西部戦線異状なし、報告すべき件なしであった」と淡々と語る。戦前の名画『西部戦線異状なし』である▼この第1次大戦と第2次大戦に敗れたドイツは、憲法で「軍隊の域外(NATO以外)派兵はしない」としていた。ところが1991年の湾岸戦争の際、アメリカの批判に屈して、「域外派兵へのための必要な国内的前提条件を作る」と憲法解釈を変更し、軍隊の域外派兵を強行した。そして現在、ドイツは5,000人もの兵士を10数カ国に派兵し、アフガンだけで55人の兵士が命を落としている▼100年前も今も、戦場に狩り出されるのは青年だ。現在の戦争は、前線・後方などかかわりなく、ミサイルやロケット弾はどこにでも打ち込まれ大量の命が奪われる。「戦争法案」は絶対に阻止しなければならない。(D)

(2015年6月7日付「兵庫民報」掲載)

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