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2015年6月21日日曜日

「後方支援」=兵站の危険性証言する7,240隻の戦没船――「戦没した船と海員の資料館」

四方の壁面を埋める戦没船の銘板
2/3の船は写真も残っていません

「後方支援」=兵へい站たんは武力行使と一体不可分、戦争行為の不可欠の一部であることは日本共産党の志位和夫委員長の衆院特別委員会での質問(5月20日)で国際法や米海兵隊教本から明らかにされましたが、それを歴史の事実で示す資料館が神戸市内にあります。神戸市中央区海岸通にある「戦没した船と海員の資料館」です。

政府の法案で「後方支援」と呼んでいる活動のうち弾薬や燃料などの補給、武器・弾薬・兵員などの輸送に、第2次世界大戦では多数の民間船が徴用されました。

この資料館は1941年から45年の期間に、徴用され戦没した軍艦以外の船と船員を調べあげています。戦没船の総数は7,240隻、犠牲者は船員、乗員合わせて231,600人にのぼります(表はいずれも同資料館のリーフレットから作成)。

戦没船
一般汽船 3,575隻
機帆船 2,070隻
漁船 1,595隻
合計 7,240隻

犠牲者 (百位に丸めた概数)
海員 60,600人
民間人 59,200人
軍人 101,000人
捕虜 10,800人
合計 231,600人

戦争及び普通海難の状況
空爆 35%
雷撃 45%
触雷 10%
不明 3%
普通海難 7%



資料館には戦没船の銘板が壁一面に張られています。任務や戦没地も記されています。

見張りや偵察に使われたもの、船だけ借り上げられたものなどもありますが、多くは船員ごと徴用され、北海から南洋まで広大な海洋で兵員、武器・弾薬その他の軍需民需物資の輸送=兵站にあたっていました。軍艦ではないので船体も弱い上に、10分な護衛もなく、魚雷や空爆で簡単に撃沈させられました。多くの船と船員は引き揚げられないままになっています。

志位委員長が質問で示した「ジュネーブ諸条約第1追加議定書」の規定によれば、「その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に資する物」であれば、民間船であっても攻撃の対象となります。この資料館に銘板を残している一隻一隻の船は、「後方支援」=兵站が攻撃の対象となり、多くの犠牲者を出したことを証言しています。

民間船ですら攻撃されたのですから、自衛艦ならなおさらです。

制服などの遺品も展示


民間船と船員が再び犠牲となるおそれ


民間の船と船員の徴用は第2次大戦という過去の問題ではありません。2004年に制定された有事法制の一つである「自衛隊法103条」は、「武力攻撃事態」において、民間の土地や建物の収用、生活必需品の輸送制限、空港・港湾の軍事優先利用の他、医療・土木建築・輸送などの従事者を徴用することを可能にしています。

集団的自衛権を行使し日本が攻撃に参加、相手国が日本に対し反撃しようした場合、政府は「武力攻撃事態」を認定することになります。そうなればこの自衛隊法103条が起動し、民間の船と船員が犠牲となる歴史が繰り返されるおそれがあります。

14歳の少年たちも


戦没船の写真をみると戦争が進むにつれ、同じような形の船が増えています。徴用した船が次々と失われ、政府は「戦時標準船」規格を定めて民間に船を作らせ、さらに徴用したためです。

船員も速成しました。官立・公立・私立の海員学校を作り、国民学校高等科を終えた子どもを教育し、船員としました。

そのため、戦没船員60,903人のうち、20歳未満の青年は19,046人、3割近くにのぼりました。

とりわけ、戦争末期の44年には修養期限を2カ月に短縮したため、着任間もなく撃沈されて亡くなった14歳の少年たちが987人もいます。

犠牲船員の年齢
年齢 人数 比率%
14歳 987 1.63
15歳 2,865 4.73
16歳 3,182 5.23
17歳 3,966 6.54
18歳 4,204 6.94
19歳 3,842 6.34
10代小計 19,046 31.43
20代 16,601 27.39
30代 13,188 21.76
40代 8,533 14.08
50歳以上 3,235 5.34
合計 60,603 100.00

*


「戦没した船と海員の資料館」は、神戸市中央区海岸通3丁目1-6の全日本海員組合関西地方支部の2階に開設されています。入館無料。開館日は月~金曜日の午前10時~午後5時(入館は4時30分まで)。土日祝日は閉まっていますが10人以上の団体の場合は閲覧の相談に応じるとのこと。☎078-331-7588。

なお、海岸通の並びには、非核「神戸方式」を記念する「平和の美海(みみ)ちゃん像」や神戸華僑歴史博物館があります。また海岸ビル、商船三井ビルなど、壁面に機銃掃射の弾痕を残すビルもあります。


(2015年6月21日付「兵庫民報」掲載)

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