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2015年5月24日日曜日

観感楽学

1949年ひとりの高校教員が同人雑誌に小説「美しい島」を発表した。初めて洋上から望見したポルトガル人が「おお麗しの島!」と叫んだ台湾島。小説は日本統治期の1930年に起きた霧社事件の真相を描く希望を綴っている。作者は後に豊岡高校教員となる故高田三良氏▼原住民を「蕃ばん」とよび高地に追い込んだ清、日本や欧州列強。台湾に漂着した琉球漁民虐殺の報復を名分に1874年帝国日本初の海外侵略・台湾出兵を行った。直後の日清戦争で原住民の意思など顧慮せず帝国領土とした。故高田氏は縁故と人生の曲折あって、昭和10年代に台湾でくらし結婚もした▼氏は日本『帝国主義下の台湾』(矢内原忠雄著)であることを明確に認識して、台北帝大教室に展示された霧社蕃反乱の頭目モーナルーダオのミイラを観ている。西欧、日本、中国大陸との歴史綾なす台湾と原住民の帰き趨すうは今日も問われている▼日中韓研究者共同の『新しい東アジアの近代史』(日本評論社)刊行や、日本共産党の北東アジア平和協力構想の提唱は、故矢内原氏や故高田氏の熱望にも応える道だろう。歴史認識の共有をめざす近代100年の日本国民の最良の蓄積の成果だ。 (A)

(2015年5月24日付「兵庫民報」掲載)

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