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2015年4月5日日曜日

観感楽学

安田秋成さんの市会陳述に、静かな感動が広がっています。今年90歳を迎える安田さんが3月の神戸市会に「借り上げ住宅の移転中止を求める」請願を提出し、都市防災常任委員会で意見陳述をしました▼請願文には、「突然の移転通告は入居者に衝撃を与え、体調を崩し病気を悪化させ死亡者が続出している」とし、「これは行政による緩慢な殺人ではないだろうか」と激烈な表現で書かれていました。安田さんは意見陳述で、同じ住宅の中で11人が亡くなったとのべ、1人1人の生前の様子と、彼らがどんな思いを持ちながら暮らしていたかを話しました。「つつましく、ひっそりと生きてきた暮らしを移転問題が突き崩している」と指摘しました。委員会は静まりかえり、自民党議員すら、「安田さんの思いを受け止めるべきだ」と言わざるを得ませんでした▼この陳述の中で、「206号の女性は2013年3月に82歳で亡くなりました」と述べたとき、安田さんの声が少し震えました。妻・美恵子さんが82歳で逝ったのは一昨年、自宅前の公園の桜が満開になっていた3月末でした▼美恵子さんが亡くなった後、鏡台の引き出しの中に「おみくじ」のように小さく折りたたんだ紙切れが見つかり、そこに「お父さん、私は安田秋成と一緒になって幸せでした。ありがとう」と書かれていたのです。安田さんは、この20年ずっと一緒に闘ってきた仲間と妻の想いを胸に神戸市会の意見陳述にたっていたのです。(D)

(2015年4月5日付「兵庫民報」掲載)

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