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2015年2月1日日曜日

観感楽学

神戸電鉄の「栄」駅で降り、道路を横断して西に進むと、辺り一面に田園地帯が広がる。その田園地帯をまっすぐ20分ほど歩いて橋をわたったところが近江寺(きんこうじ)に通じる細い山道である▼そこから約30分。この小さな山の上に立つ真言宗のお寺「近江寺」は、646(大化2)年開祖という古刹で、毎年2月11日に「鬼やらい」が行われる。普段は近郷の人が訪れるだけの静かな山上のお寺だが、この時ばかりは子どもたちの賑やかな歓声に包まれる。神鉄の駅からゆっくり歩いても50分程度の距離だから年配者でも安心して登れる▼この日、本堂前の庭では「たき火」がたかれ、ほんの少しだけ露店がならぶ。鐘楼の横では甘酒が振る舞われる。お寺の赤鬼と青鬼は火のついた松明を振りながら、20~30人もの小さな子鬼たちと一緒に本堂を巡り踊る。鬼たちがひとしきり踊った後、本堂の上から大量の餅が撒かれる。おばちゃんたちは風呂敷を広げ、「こっちこっち」と叫ぶ。のどかな毎年の風物詩になっている。地元の春はこうしてやってくる▼ところで、海の向こうでは「イスラム国」なるテロ組織が、日本人を誘拐し、要求が入れられないと命を奪うと宣言した。節分の鬼は悪魔をはらい、邪気を退散させるというが、テロ集団は、平然と人の命を奪う。これぞまさしく「鬼」である。 (D)

(2015年2月1日付「兵庫民報」掲載)

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