中嘉信(日本共産党県自治体部長)
政務活動費の不正着服で議員辞職に追い込まれた野々村竜太郎前県議の「号泣会見」は、日本国内にとどまらず全世界を驚かせました。県議会では7月から政務活動費について、検討がすすめられており9月議会で条例改正が行われる予定です。あらためて今回の問題を考えてみます。
(1)議員の資質と資格が根底から疑われる事態
野々村前県議の政務活動費不正着服問題は、議員の資質と資格が根底から疑われるものといわなければなりません。不正に着服した金額の大きさ、その手口とともに、「号泣会見」に見られる異様な姿に、国民・有権者の怒りが寄せられました。アベノミクスが順調と宣伝されながら実感できずに、劣悪な労働・雇用環境にある低所得者や経営難の中小零細業者、未来が見えない農林漁業者など、同じこの社会で起きた事件だけに、国民・有権者の怒りと批判もそれだけ大きいのは当然です。
同じ時期に、セクハラヤジの元自民都議が政治資金でも不正疑惑を暴露され、神奈川の県議が危険ドラッグの常習で辞職が起こり、大阪維新大阪府議のLINE騒動などなど、議員の資質と資格が根底から疑われる事態が相ついでいます。
こうした背景に、今日の政党状況と無関係ではない議員・政治家の「劣化」ともいうべき現象を指摘せざるをえません。
2005年以降、「小泉チルドレン」や「小沢チルドレン」の大量誕生と大量落選、維新やみんなの一挙の躍進と衰退をくり返すなかで、政治的立場は別としてそれなりに有権者に浸透し良かれ悪しかれ試された政治家が減る一方、当選目当ての「公募候補」や、はやりの看板の風で当選した議員が急増しました。地方選挙でも、07年から09年当時は「民主」の看板だけで、11年ごろは「維新」や「みんな」の看板で、13年には「自民公認」なら当選できるような状況が広がり、それに伴って議員・政治家の「劣化」現象が広がってきたのです。野々村前県議自身が前回の県議選で「西宮維新」を名乗り当選した議員でした。みんなの党の前神戸市議は保険金詐欺で逮捕されています。
政治のあり方、政党と議員のあり方が根本から問われていることをとらえ、国民・有権者を裏切らないもっとも政党らしい政党として日本共産党と党議員の値打ちを語り広げることが重要です。
(2)不祥事・犯罪を許さないとりくみを
政務活動費の不祥事・犯罪を抑えるために、使途の透明化をはかることは決定的な問題です。かつては領収書添付もなく公開もされていなかった政務調査費(昨年から政務活動費に名称変更)について、いっかんして領収書添付の義務化と公開制度を求めて奮闘してきたのが党県議団でした。
政務調査費は自治法改正にともなって、2001年から条例にもとづいて支給されるものとなりましたが、その県条例を制定した01年3月の県議会で党県議団は議案提案権を活用して、領収書と帳簿の添付、公開を必要とする独自の条例案を提案して、透明性・公開制の確保を強く主張しました。
それ以来、党議員団は、03年6月議会、04年3月議会、06年6月議会、06年12月議会、と5回にわたって領収書添付、公開の政務調査費の条例案を提起してきました。これらの間に、各地で政務調査費をめぐる不祥事の発覚、裁判など世論の変化もあり、領収書添付を拒んできた与党会派は、06年の12月議会で「1件5万円以上」の領収書添付の条例改正を行いました。
07年の県議選で、残念ながら党議員団は議案提案権を失いましたが、一致点での共同を追求して、07年9月議会に無所属議員らと共同で、6度目となる条例提案を行いました。
こうした党議員団の奮闘と県民世論の包囲の前に、与党議員らも抵抗しきれず、10年の9月議会で、条例が改正されて領収書の添付義務づけが行われるようになり、11年県議選で当選した今期の議員の任期から適用されることになったのです。
今回、6月30日に公開された昨年度の政務活動費収支報告を閲覧した神戸新聞の記者が、野々村氏の不正着服に気づくことができたのは透明性・公開制の確保を実現した成果でもあったと思います。
ただ、今回の事態を受けて、せっかく県議団の奮闘でかちとった領収書添付、公開の制度であるのに、党機関として昨年、1昨年の公開時に収支報告のチェックを行っていなかったことを反省しています。制度の改善が行われたもとで、まさかこんな着服事件が起きるとは想像もしていなかった甘さがあったと言わざるを得ないと思っています。
今回の事態を受けて、他会派・議員の政務活動費の収支報告書や政治資金報告書などを必要に応じてチェックすることは、不祥事・犯罪を抑えるためにも必要なことです。そのことが、党議員の優位性の発揮にもつながると確信します。
(2014年8月24日付「兵庫民報」掲載)