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2014年10月12日日曜日

文学座『女の一生』:神戸演劇鑑賞会10月例会

旅順陥落の提灯行列で賑わっていた、明治38年(1905)の正月。貿易で財をなした堤家にひとりの孤児が迷い込んできた。名を布引けいといい、女主人しずや家族の人たちは、けいの生い立ちに同情し、堤家の一員とした。

堤家は清国との貿易を家業にしているが、しずは跡取り問題で悩んでいた。長男の伸太郎は学究肌で商売には向いていなかった。そこで、闊達なけいの気性を見込んだしずは伸太郎の嫁にけいを決め、堤家の安泰を計った。

しかし、けいは次男の栄二に思いを寄せていた。堤家に拾われた恩義のため、栄二への思慕を抱いたまま、伸太郎との結婚を承諾した。けいの女の一生がここからはじまった。

明治、大正、昭和という時代を背負い、2つの大戦をくぐりぬけ、ひたすら家業の貿易の仕事に打ち込んだ。だが、けいの生き方は、周囲の人たちにすんなり受けとめられなかった。けいは自分自身につぶやく。「自分で選んだ道ですもの。間違いと知ったら間違いでないようにしなくちゃ」

昭和20年(1945)秋のある夜。爆撃ですべてを焼失した堤家の庭で、けいと栄二は再会する。年老いたふたりは、けいが迷いこんだあの庭で、静かにカドリールを踊る。月光が優しくふたりをつつんでいる。
小谷博子

文学座公演『女の二生』/作=森本薫、補訂・演出=戌井市郎による、演出補=鵜山仁、出演=平淑恵、大滝寛ほか/①10月24日(金)18時30分②25日(土)13時30分/神戸文化ホール中ホール/会員制(入会時に入会金1,000円と月会費2カ月前納)、月会費3,500円(大学生2,000円、中高生1,000円)/☎078・222・8651、Fax078・222・8653


(2014年10月12日付「兵庫民報」掲載)

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