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2014年8月10日日曜日

九州電力川内原発再稼働「合格」決定に反論し、高浜原発再稼働の中止を求める(下)

速水二郎(電力兵庫の会)

高浜原発で使用するのは危険性が大きいMOX核燃料


関電が再稼働を求めている高浜原発で使用する核燃料にも大きな問題があります。MOX燃料使用時に、もし重大事故が起きたらどの程度の人的被害が発生するのか、少し古いですがそれを計算した人がいます。アメリカの核管理研究所(核拡散防止を調査・主張するNGO団体)科学部長のエドウィン・S・ライマン博士です。1999年10月に発表した論文「日本の原発に過酷事故が発生する可能性にMOX燃料使用が与える影響」で明らかにしました。

福島原発事故以前の日本は「原子力立国計画」で核燃料サイクルシステムでした。使用済み原子燃料を再処理して抽出したウランとプルトニウムを混合して作られるのがMOX燃料です。プルトニウムの割合を高めて高速増殖炉で使用することを目標としました。しかし「もんじゅ」のように、実現の目処は全くたっていません。そのため、貯まり続けるプルトニウムを放置していては核拡散の危険が高まるので、通常の軽水炉で燃やせるように加工して使おうというプルサーマル計画を進めているのです。

政府や電力会社は、通常の低濃縮ウランを使う場合とMOXを使う場合とで事故の危険や環境への被害に違いはないと言いますが、アメリカの研究や経験ではMOX使用でリスクが増えると指摘します。プルトニウム等が炉内に蓄積される量が増えるからです。ライマン博士の論文は、プルサーマル計画を進める日本政府にそのことを警告しようと執筆されたものです。

は、高浜原発3、4号炉に匹敵する出力871万kWの加圧水型軽水炉が重大事故を発生させた時に、半径113㎞(70mile)の圏内で発生する急性死と潜在的がん死者数をシミュレーションしたものです。

対象圏内の人口密度を実態に近い1km2当たり550人とし、炉内に蓄積されたプルトニウムの漏出率が3.5%、1%、0.14%の3ケースについて計算しています。

半径113㎞というと、西は明石市、南は高石市、天理市、名張市、東は名古屋市あたりまでが含まれます。

プルトニウム漏出率が中程度の1%のケースでは、通常の低濃縮ウラン燃料で運転している場合で、急性死者は75人、潜在的がん死者は11,700人に達すると計算されています。MOX燃料の場合には、関西電力の当初の計画どおり炉心の4分の1に装荷すると、急性死者数が133人、潜在的がん死者数24,200人で被害者数はほぼ2倍になります。

もし炉心全部にMOX燃料を装荷して運転した時には、潜在的がん死者数は56,800人、被害規模は5倍に膨れ上がるという計算結果なのです。

MOX燃料使用原発の過酷事故の影響
プルトニウム漏出規模 MOX燃料の場合 低濃縮ウラン燃料の場合(C) 死者数の倍率
全体に装荷(A) 1/4に装荷(B) A÷C B÷C
重度(3.5%) 潜在的がん死 155,000人 70,700人 31,900人 4.86 2.22
急性死 2,420人 827人 417人 5.80 1.98
中度(1%) 潜在的がん死 56,800人 24,200人 11,700人 4.85 2.09
急性死 265人 133人 75人 3.53 1.77
軽度(0.14%) 潜在的がん死 15,900人 9,630人 6,090人 2.61 1.42
急性死 64人 44人 40人 1.60 1.10

なお、米国原子力規制委員会(NRC)の発表によれば、重大事故の場合、原子炉の運転にともなって軽水炉内に蓄積されていく核反応生成物、いわゆるアクチニド核種(プルトニウムもそのひとつ)の最大5%が漏出する可能性があるといいます。低揮発性であり放射能毒性の強いアルファ粒子を放出するアクチニド核種で汚染された水は極めて危険、高浜原発で重大事故が起これば当然、琵琶湖の水は使えなくなるでしょう。

若狭湾から30㎞圏でおさまることはない


高浜原発大飯原発
高浜や大飯原発などで福島原発なみの事故が発生したときの41市町への放射能拡散シミュレーションを、兵庫県は、2014年4月24日に発表しました。丹波市、篠山市、三田市、宝塚市、西宮市、西脇市、猪名川町など10市町で100mSvを超えています(図:兵庫県発表の「放射性物質拡散シミュレーション(県内全域)の結果について」(https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk39/kakusansimu2.html)から)。

篠山市は今年2月に独自に市民51万人分の安定ヨウ素剤を備蓄しました。私たちは兵庫県に対し、県民の生命と安全を最優先にするため篠山市の経験に学ぶよう申し入れました。

大飯原発再稼働差し止めの福井地裁判決は、「大飯原発の技術や設備は冷却や放射性物質の閉じ込めに欠陥がある脆弱なもの。運転により住民の人格権が侵害される」と厳しく指摘しました。

安倍政権は、九州川内原発の再稼働を突破口として、次に高浜原発の再稼働審査に入ります。私たちのふるさとの安全を守るための運動を大きく広げ、原発の再稼働反対するとともに、脱原発社会をめざすために1層の努力が必要です。(


(2014年8月10日付「兵庫民報」掲載)
3回連載の予定でしたが、17日付休刊のため残り2回分を本号にまとめて掲載しました。
 

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