粟生線存続へ市民といっしょに考えたこと
三木市議会議員 板東しょうご
粟生線の未来を考える市民の会の第二回総会が七月二十八日、小野市考古館で行われました。
今回の総会では、三木でご当地アイドルとして活躍している自称粟生線活性化コーディネーターの、ゆいみのりさんの講演、参加者全員のワークショップ、そして、株式会社交通システム研究所代表取締役の大藤武彦先生の講演がありました。
ゆいみのりさんは、自分がどのように“鉄子”(鉄道好きの女性)になっていったのか、また、ご当地アイドルのオーディションで粟生線存続への思いを切々と話したこと、などを語りました。
ワークショップでは、「粟生線の活性化のために、自分たちに出来ること?」というテーマで三つのグループで話し合いをしました。
私たちのグループでは“乗り鉄”(鉄道愛好家のうち乗ることを楽しむ人)の方から「粟生線は人工的に整備されていないので、多様な風景が続くのが魅力だ」との指摘がありました。また、独自性のある車両について議論がなされました。私も「携帯電話を使ってもいい車両を作って、充電用のコンセントも完備する車両」を提案しました。
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講演する大藤氏(右) |
個人の便利さと社会的不利益のジレンマ
大藤先生は、「わたしたちは公共交通に何を求めるべきか?」という題で講演しました。
大藤先生はまず、交通における「社会的ジレンマ」―「便利さ」ゆえに、電車・バスなどの公共交通よりも自家用車を使う人が増えることで、「渋滞」「交通事故」「大気汚染」「まちの活力喪失」などの社会的不利益が生まれる―の存在を説明。
この「社会的ジレンマ」を解消するためには①技術開発(燃料電池車の開発など)②損得構造をかえる(公共交通の運行頻度、違法駐車の罰金強化等)③人の心に働きかける―の三つのアプローチが考えられ、このうち、市民や行政が日ごろ考えるべきことは②と③であると述べ、ブラジルのパラナ州クリチバ市と名古屋鉄道広見線のとりくみを例にあげました。
市民との信頼関係を構築しながら
クリチバ市は「第二回国際連合人間居住会議」で「世界一革新的な都市」として表彰された都市です。公共交通だけでなく、スラム化した地域を非スラムにしたり、ゴミ問題を解決したりしています。決して裕福でない都市でありながら、知恵で持って問題を解決しています。
ここで市長が交通政策のポリシーとしたのが「人>自転車>バス>自動車」という優先順位。また、実行にあたっても「行政と市民がともに責任を持つ方程式が成立すれば、成功する」という市長の言葉に見られるように、市民と信頼関係を構築しながら行われています。
「地域に必要なインフラ」と位置づけ
また、名鉄広見線では粟生線と同じような補助制度、イベント、周知活動などが以前から行われていましたが、行政が名鉄広見線の位置づけを「地域に必要なインフラ」に変更したことで、廃線ではなく運行を継続するため、市町が利用者増加策にとりくみ、名鉄に対し一定期間、財政支援を行うことになりました。
電車を使う価値を見出して
よく聞かれる話として、「隣のばあちゃんは公共交通が必要(私は使わないけど)」「車が運転できなくなったら公共交通を使う(今は車に乗れるから公共交通は使わないけど)」などがあり、これでは電車・バスを残すことにつながらないと大藤先生は指摘しました。
私も何度も遭遇する言葉だったので後ほどの質問で「ではこのような人がどのようにしたら乗るようになるのか」と聞き直しました。「電車を使う価値を見出してもらう。違う価値を知っていただく必要がある」という答えでした。私たちも分かっている答えではありますが、運動の中で明日の乗車数が増えること以上に大事な命題であるような気がします。
私たち市民は神戸電鉄を存続させるために利用して、もっと利用しやすい公共交通にするために行政や会社にもものを言うべきです。その意見に行政や神戸電鉄も真摯に耳を傾け市民の信頼を勝ち取るべきです。今更いうべきことではないですが、神戸電鉄、行政、市民が一緒になって存続のために努力をすべきであり、そのために、市民として議員として市民運動を盛り上げ、議会活動をしていきたいと思います。
(2013年8月11日付「兵庫民報」掲載)