―知事選公約「いどとしの政策」を読む
「ふるさとの輪を広げ、発展につないでいくために立候補を決意」(神戸新聞六月五日付)と報道された、現職・井戸敏三知事の政策発表。知事として、県民にとって重要な問題に、どう応えているのでしょうか。政策に書かれていることとともに、書かれていないこと、言えないことも読みとることが必要です。
消費税―増税にまったく触れず
県民の暮らしや営業に大きな影響を与える消費税の増税。アベノミクスの「効果はいつになったら?」「給料は上がらないのに住宅ローン金利は上がる」など不安の声もますます広がっています。
しかし、井戸知事は、「思い切った金融緩和策をとり、てきめんに効果を出し、そして全体としても経済にたいする期待をもりあげていった。ただ残念ながら、まだまだ実体経済に及ぶには時間がかかります」(五月二十二日「井戸さわやかトーク」川西池田駅前)などと、安倍首相と同じような言い訳。
「消費税増税は財政構造改革の一歩」と歓迎する井戸知事には、県民の生活の苦しさの声は届いていないのでしょうか。
生活保護―改悪に反対せず、「融合と効果的な展開」と
安倍政権がねらっている生活保護の抑制方針に対し、その危険性を指摘するどころか、「生活保護制度と、あらたに検討されている生活困窮者支援制度を融合した、効果的な支援の展開を国に求めます」と改悪をスムーズにすすめる指南をするかのような政策。
TPP―反対せず、それを前提にブランド化・大規模化
兵庫県の農業産出額の五割に影響するとの試算があるTPP(環太平洋連携協定)ですが、井戸知事は、〝国際競争は当然〟との立場で、TPPに反対を言わずに、「力強い農林水産業」「ブランドを育成し、生産を拡大」「神戸ビーフの育種改良、認定割合の拡大」などを掲げ、「水稲生産農家のコスト半減」「農地の大区画化」を打ち出しています。
これまでの政府と同じような大規模化で、対等な競争ができると考えているのなら、とんでもない絵空事のような政策です。
原発―ノーと言えず、経済界同様、「ベストミックス」主張
大飯原発の再稼働を容認し、道を開いた井戸知事。政策でも「原子力発電への依存度の低減を図り、エネルギー源の適正な組み合わせをめざします」として、経済界や関電と同じ、ベストミックス論に立つ立場をあらためて表明しています。
雇用・産業―大企業誘致に反省なし
県民の税金から巨額の補助金を投入したパナソニックの二工場撤退から教訓をみちびき、反省するのではなく、相変らず「産業集積条例を活用し、設備投資や新規雇用への補助などにより、成長産業、研究所等を誘致します」とすすめる姿勢。さらに新しく「都市部における工場跡地や未利用地の有効活用を図るため、税の軽減、投資補助の拡大により、新たな企業立地を促進します」と。
雇用でも、「大人版トライやるウィークを創設」「雇用ミスマッチの解消」「毎年四千人の職業訓練」などが並びますが、全国ですすんでいる電機リストラに文句も言えません。
保育所―待機児童ゼロ? 結局、増設なし・詰め込み中心
「これまでの選挙で公約として掲げながら、達成できなかったものもある」(神戸新聞六月五日付)と指摘されているように、政府とともにすすめてきた待機児童対策によっても、ゼロには達成されませんでした。
政策では「認定こども園を二百施設に倍増し、保護者の就労にかかわらず、幼児教育と保育サービスを一体的に提供」「保育所や駅前等での分園、事業所内保育所等を百カ所増設」などが並びますが、肝心の認可保育の増設を柱にすえる方針ではありません。
子育て・教育―新たな公約なし
教育分野では、「小学校四年生までの三十五人学級」にとどまったままの少人数学級を固定化させ、競争激化や遠距離通学などが生じると批判の強い「公立高校の十六学区から五学区への拡大」は、「平成二十七年度から、県立高校の選択肢を広げる新通学区域を導入。複数志願選抜制度の周知に取り組む」と、強行する姿勢です。
子育て支援でも、中学校までの医療費の完全無料化を掲げられず、ただ「乳幼児から中学校三年生までの医療費を軽減」と触れているだけです。
(2013年6月23日付「兵庫民報」掲載)