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2013年3月21日木曜日

小野市福祉給付制度適正化条例(案)に懸念広がる

市民どうし監視させ人間らしい生活奪うおそれ

小野市長は三月市議会に「小野市福祉給付制度適正化条例」(案)を提案、成立を図っています。

同条例(案)は、生活保護、児童手当をはじめとする福祉制度に基づく金銭給付を現在受けている受給者とこれから受給しようとしている者が、給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬、その他の「遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、生活の維持、安定向上に努める義務に違反する行為を防止すること」を目的としています(第一条)。

さらに、同条例(案)は「福祉制度が適正に運営されるよう、市及び関係機関の調査、指導等の業務に積極的に協力」「情報を提供する」義務を市民に負わせています(第五条)。

こうした条例(案)は人権侵害の懸念があるとして、兵庫県弁護士会、自由法曹団兵庫県支部、兵庫県保険医協会、はりま中央民主商工会、全日本年金者組合小野支部などが反対の声明を発表しています。市議会では日本共産党の藤原あきら議員らが反対の論陣を張っていますが、可決のおそれが高まっています。

生存権・幸福追求権損なう


福祉制度は、憲法二十五条の規定により、基本的人権として保障される「生存権」に基づくものです。福祉制度によって給付される金銭は、貧者への恩恵ではなく、すべての人が自立して人間らしい生活を営むための社会的再配分であり、その使途は受給者がみずから自立的に決定すべきものです。

家計について他からの監視・干渉を受けない自由は憲法十三条で保障される「幸福追求権」とその一環としてのプライバシー権で保護されています。それを前提に生活保護法も、生活の維持・向上などに必要な指導・指示について「被保護者の自由を尊重」「意に反して…強制し得るものと解釈してはならない」(二十七条)と規定しています。

県弁護士会会長声明はこれらをあげ、条例案は憲法十三条・二十五条、生活保護法などの趣旨に反していると指摘しています。

差別や偏見を助長


市民に協力・情報提供義務を負わせることは、市民を監視態勢に巻き込み、社会的・経済的弱者や福祉制度そのものへの差別・偏見を助長させる懸念が強く、監視の名の下に受給者や家族のプライバシーをいたずらに暴き出す風潮が作られかねず極めて危険、また、これから給付を受けようとする人に申請を躊躇させかねない、と県弁護士会会長声明は警告を発しています。

行政の責任放棄


受給者のお金の使い方が「生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引き起こしている」かどうかの判断は高度に専門的であり、指導・指示は福祉の専門機関である福祉事務所の権限と責任で行われるべきもの、それを市民の監視に委ねることは行政の責任放棄だと、県弁護士会会長声明は批判しています。

また保険医協会理事会声明では、常習的なギャンブルで生活が維持できない状況は医学的にみてギャンブル依存症と判断され、本来、治療の対象であり専門家の対応が必要だと指摘しています。

(2013年3月24日付「兵庫民報」掲載)