道理と真理手に憲法輝かそう
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元気に挨拶する(左から)川崎義啓さん、安原清次郎さん、大橋豊さん |
レッド・パージ国家賠償請求訴訟の報告集会が十二月十四日、神戸市勤労会館でひらかれました。
この訴訟は、一九五〇年、官庁、大企業からレッド・パージによって免職、解雇され、収入を絶たれたのみならず、「企業破壊者」「暴力分子」などいわれのない烙印を押され社会的に排除、再就職もままならないなど苦難の人生を強いられた神戸市在住の川崎義啓さん(97)、安原清次郎さん(92)、大橋豊さん(83)の三人が、「生きているうちに名誉回復を」と二〇〇九年に提訴した裁判です。二〇一一年五月、神戸地裁で原告敗訴、二〇一二年十月、大阪高裁は控訴棄却、そして二〇一三年四月二十五日、最高裁は上告棄却・上告不受理を決定。三原告は十月十五日に再審を申し立てましたが、最高裁は十二月二日、再審棄却決定を出しました。
報告集会はこの訴訟の意義を学ぼうと兵庫労連、兵商連、兵庫民医連、新婦人兵庫県本部、自由法曹団兵庫県支部、国民救援会兵庫県本部、治維法国賠同盟兵庫県本部、日本共産党兵庫県委員会でつくる実行委員会が開いたもの。当日は百十二人が参加しました。
3原告の熱意と信念がきりひらいた到達
弁護団からの報告で松山秀樹弁護士は、レッド・パージ被害者の救済を否定した過去二回の最高裁大法廷決定があるにもかかわらず、訴訟を起こしたこと自体が第一の成果だと三原告をねぎらった上で、この訴訟の到達点として―
①三原告の弁論などでレッド・パージの被害実態が解明され、裁判記録として残せたこと
②レッド・パージが連合軍(GHQ)最高司令官の指示、命令によるものでないことが史料に基づき立証され、過去の大法廷決定が見直さなければ正義に反することが明らかとなったこと
③大阪高裁判決で、講和条約発効後に日本政府がレッド・パージ被害者を救済すべき作為義務が一定の場合に肯定されることを認めさせ、名誉回復と救済を求める足がかりができたこと
④大阪高裁が内閣と衆参両院に被害者の名誉回復と救済措置についての検討状況を調査委嘱し、その結果、歴代政府が何らの救済策の検討すら行ってこなかったこと、衆参両院も合わせて三十一回、百七十三件もの名誉回復・救済を求める請願を審査未了のまま葬ってきたなど立法府の不作為の違法性も明らかにしたこと―をあげました。
レ・パとのたたかいは憲法27条の重要性も示す
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講演する明神勲名誉教授 |
②の立証を行った明神勲北海道教育大学名誉教授が続いて「レッド・パージを問うことの今日的意味」と題して記念講演を行いました。
明神氏は、名誉回復・救済を否定した二度の最高裁決定が虚偽・虚構によるものであり、それを主導した田中耕太郎最高裁長官(当時)の「司法犯罪」を、砂川裁判で当事者である米国側に判決時期を漏洩するなど最近明らかになった事実も含め、史料を示し、改めて告発しました。
民間産業、官公庁のレッド・パージについては、日本側から新たなマッカーサー書簡の発出を提案したものの、米国側が同意を与えなかったことを一九五〇年八月七日の田中・ホイットニー会談の記録で立証。「解釈指示」が実在しないにもかかわらず、田中長官はそれを証明を要しない「顕著な事実」として隠蔽し、共同通信社事件大法廷決定(五二年)、中外製薬事件大法廷決定(六〇年)を下したことを明らかにし、田中長官は「司法犯罪者」として裁かれるべきだと告発しました。
さらに明神氏は、今回の訴訟の二つの判決が法と事実に背を向けた不当なものだと強く批判。「判決では負けたが、内容では完全勝利」「道理と真理を手にしたのは我われである」と述べました。
地動説をめぐるガリレオのたたかいと一九九二年になっての名誉回復を紹介し、「正義と真理を求める運動は勝利する。たたかいの旗を降ろさない限り、勝利への道を歩んでいる」と原告や参加者を励ましました。
さらに明神氏は、レッド・パージが勤労とそれがもたらす生活の手段と人間の尊厳を奪ったことが、被害者の苦難の最大要因ではなかったかと指摘し、勤労の権利をうたう憲法二十七条に着目。
現在の労働をめぐる状況のなかでディーセントワークの視点から憲法二十七条の解釈をより豊かにすることの重要性を強調し、「ねばりづよい努力で日本国憲法の精神が花開く日本の未来をきりひらこう」と呼びかけました。
三原告も紹介され、それぞれ元気な声でユーモアも交え挨拶し、大きな拍手に包まれました。
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満員となった会場 |
また、名誉回復と救済を求めるアピールを参加者全員で採択しました。
(2013年12月22日付「兵庫民報」掲載)