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2013年1月20日日曜日

オーストリア・ドイツにおける再生可能エネルギー転換事情の視察に寄せて(下)

兵庫県中小商工業研究所長 近藤義晴

視察の具体例を離れて、再生可能エネルギーへの転換過程で生じる課題に触れよう。

負担の公平な配分


ギュッシング近郊の太陽光発電+バイオマスの設備

転換の基本方向が国民的合意を得ていても、具体的実施においては利害対立的状況の発生が避けられない。

ドイツでは、電力料金の高騰が次期総選挙の重要な争点になるといわれる。日照時間が少なくても設置が容易な太陽光発電の伸びは大きく、転換の進捗は料金の上乗せとなる。転換には大きなコストが伴うが、それを誰がどれだけ負担するかは未確定である。

個別的に見れば、早期に転換した者は全量買い取り制により恩恵を受けるが、他方で料金の値上げに耐えられない者が出る。ある州では、一時供給停止を受けた世帯が十二万に上るとも伝えられる。生活上不可欠なインフラすら安定的に享受できない実状も現れる。

もちろん、大口需要者への料金軽減措置を縮小すれば問題は小さくなる。しかし、産業界はコスト増が国際競争力を低下させ国民生活を悪化させると反論する。

当初から指摘されたように、負担の公正なあるいは妥当な配分の調整の仕組みづくりが不可欠の政策課題となる。

説得力ある見通し


視察事例において、リーダーシップの発揮と住民の主体的参加には地域の条件に即した具体的転換像の提唱が大きく寄与している。しかしこの場合にも、新たに発生する費用についての考慮が必要となる。

個々の家庭では全面的ないし部分的な設備・機器の取替えが必要であり、この負担を引き受ける覚悟が不可欠である。この覚悟は理念だけでは支えられない。

地域住民の共同的取り組みは将来への投資である。単純な金銭的計算ではないが、一時的な多額の出費も長期的には回収可能である点について納得できなければ、より多くの人々の参加も期待できない。

事例でも、石油暖房より地域内温水循環暖房の方が安上がりという住民の声が聞かれたが、このような考慮は軽視できない課題であろう。

中小業者の力の発揮


風車を制作するアウクスブルク近郊の中小企業

エネルギー転換への中小業者の係わりを見聞することが視察目的であった。

十分な実例を得られなかったが、小さな業者が小型風力発電機を開発・製造・販売していた。薪や木材ペレットのオーブン製作の例もあり、これらは供給面での関与である。

ドイツでは従来から、設置家庭への補助政策もあり、電気工事・ガス工事・暖房工事等、また外装・内装の建築関連の中小業者が、相互に連携しながら、建物の新築・改築の際の省エネやエコ対応工事(暖房設備の施工、二重窓による断熱工事、太陽光パネル設置工事等)において存在意義を発揮してきた。

政府は、中小企業を転換の重要な担い手と位置づけ、業者団体と連携し、支援体制を一層強めつつある。

日本でも、政策転換により、地域中小業者の活動機会は広げられる。

地域間の調整


最後に、地域間調整の課題に触れよう。

再生可能エネルギーの地産地消は、どの地域でも一様にはできない。地域間の需給の融通・調整が不可欠となる。ヨーロッパでは、既に国境を越えた電力融通のネットワークができている。

集中の危険を避けるエネルギー産出の分散は、消費との統合的制御の仕組みを必要とする。転換の個別的でバラバラな対応は、後の社会的負担を重くする。負担軽減を図るためにも、一定地域内でのまとまりのある取り組みが望まれる。 


(2013年1月20日付「兵庫民報」掲載)

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