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2013年1月13日日曜日

オーストリア・ドイツにおける再生可能エネルギー転換事情の視察に寄せて(上)

兵庫県中小商工業研究所長  近藤 義晴

民商・全商連の催しに参加して、「オーストリア・ドイツにおける再生可能エネルギーへの転換事情」を視察した。

オーストリアでは、国境の過疎地域で再生可能エネルギーへの転換により活性化したことで世界的にも有名なギュッシング(ウィーン南方)と、スマートシティを目指すザルツブルク、ドイツではバイオマスに力を入れるアウクスブルクと、環境意識の高いフライブルク近郊の農村を訪問した。

先進例の視察は、その進展状況から日本での可能性を探る意図をもつ。ただし、先進地域と国の全体像とを単純に重ね合わせることは避けたい。現地での課題を通して、日本での留意点に触れてみたい。

地域に根ざして


ギュッシングのバイオマス発電・発熱設備


ギュッシングは、前首長のイニシアティヴでエネルギーの外部依存からの脱却を目指した。地域内に存在する資源(太陽と水と森林・木材と牧草)をエネルギーとして活用することである。

太陽光発電とともに、木材と牧草からのバイオマス発電および発熱により、電力の地産地消と暖房用を含む温水の地域内循環システムを構築している。住民は組合に加入してシステム運営に参加し、森林所有者の組合とも連携する。

この仕組みは近隣地域にも波及している。今日この地域は、EUおよび政府の支援も受け、再生可能エネルギーの先進的研究開発機関を備え、関連業種のみならずサービス業を含む多くの企業の進出に浴し、雇用と住民の増加を実現している。

地域に根ざした具体的仕組みの提案および実施は、地域の環境および生活スタイルを大きく変えることなく、成功の鍵となっている。

住民が主体的に


アウクスブルク近郊のバイオマス施設で話をきく視察団
環境都市を謳うフライブルクは、環境意識が強く、脱原発志向をもつ住民が多いところであり、数十年にわたり運動の成果を上げてきた。その影響を受ける近郊では、「市民が電力会社をつくった」ことで有名なシェーナウが存在する。訪問先の農村地域も、住民が主体的に再生可能エネルギーへの転換を図っている。

重要な点は、住民が、行政待ちではなく、地域の自然条件に即した第一次産業を出発点に、地域内の自然の恵みを活用して、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電・発熱を組み合わせて、自前の地域内循環システムを構築したことである。

自分たちで資金を提供して風力発電機を設置し、電力を地産地消する事例や、自己資金と資金援助でバイオマス設備を建造した農家を中心に、近隣住民が牧草を提供しつつ使用料を支払うという地域内システムを運営する事例がある。

住民は、農村地域として共同意識も強く、牧畜業からの転換の必要性も共有していたであろう。

再生可能エネルギー先進像は、長時間を経て育まれた自治意識・自律観念の賜物でもある。

下は次号

(2013年1月13日付「兵庫民報」掲載)

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