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こども病院連絡会の署名宣伝活動 |
県立こども病院は、一九七〇年に全国で二番目の小児科の専門病院として設立され、三次医療の拠点としての役割を果たしてきました。しかし、建物の老朽化と狭さで、建て替えが求められていました。
病院当局では現地建て替えの検討がされていましたが、二〇一一年、県は厚生労働省の「地域医療再生計画指針」により、県医療審議会地域医療対策部会で“ポートアイランド移転・再生計画”を提案・承認、厚労省に再生計画として申請し、同年十月、三十億円の交付金(注)が内定しました。
(注)堀内照文衆院候補、きだ結県議の聞き取りに同省は、この交付金はポートアイランド移転でなくても使えると明言しています。
県民不在の決定はじめからポーアイへの移転ありき
県は移転計画の決定にいたる過程で、県民・患者に内容を知らせていません。
一一年八月、県民の意見を聞くとして、パブリックコメントを募集しましたが、募集にあたってはポートアイランド移転には一言の説明もしていません。
一二年一月、県の総合事業等審査会は、現地建て替え含む四カ所の土地を比較し、ポートアイランド移転を決めました。
これは、厚労省にポートアイランドへの移転計画で交付金の内定を受けた後です。「他の土地を比較検討した」という形式を整えただけと言わざるをえません。
一二年二月、ようやく県民に対し、ポートアイランドへの移転を明らかにし、同年八月七日に、患者・家族へ移転計画を説明しました。感染に弱いためわざわざ病院の近所に移り住んだ患者・家族も少なくありません。移転地までの通院はできないとの不安の声もあがりました。
現地建て替えは不可能か
病院院長は、現地建て替えでは、建築基準法の日影の関係で八階以上は建てられず、必要な床面積を確保できないと説明しています。
しかし、日影がかかる場所は、東側・北側の道路と公園の一部分だけです。建築位置を西側・南側にずらすか、土地を掘り下げることで必要な建物は建てられるとの指摘があります。
中央市民病院との連携で医療機能は向上するか
総合型医療機関の連携で医療機能の向上が得られるとして、神戸中央市民病院の隣接地を選んだと県は説明しています。
しかし、隣接しているだけで連携ができるわけではありません。
こども病院と中央市民病院の医局トップが懇談していますが、中央市民病院側からは「循環器疾患では大人の対応で手一杯で子どもまで診ることは困難だ」という意見が出されています。
バイオハザードの危険性も
ポートアイランドでは神戸市が医療産業都市構想を推進し、細菌などを扱う研究機関も多く、バイオハザード(生物災害)の危険性もあります。
県は「法令や国の指針等が定められており、万全の予防対策や安全管理措置が図られている」「神戸市が安全だといっている」と説明しています
しかし、神戸市は、市内にバイオハザードマークを掲げている事業所はどれくらいあるかとの市議会質問に「把握していない。企業の活動の規制はできない」と答弁しています。県・神戸市双方の無責任な態度は問題です。
津波など防災上は大丈夫か
県は、一二年三月の国の津波高等の推計値に基づき、地盤高八・六㍍に整備するので大丈夫だと説明しています。
しかし、参院行政監視委員会での山下よしき議員の追及に厚労相が答えたように、ことし七月発表の中央防災会議の中間報告との関係で計画見直しが必要となっています。
なぜ、高台から人工島に移し、地盤整備をわざわざする必要があるのでしょうか? 阪神・淡路大震災時、橋・道路・ライフラインなどの被害で中央市民病院は救急対応など本来の役割を果たせませんでした。
総合周産期医療センター二つを隣接させる意味は?
兵庫県全体で、総合周産期医療センターは五カ所必要といわれています。現在はこども病院一カ所ですが、二カ所目として中央市民病院が名乗りをあげています。
九月に開かれた神戸市の保健医療連絡協議会専門部会では、中央市民病院の「総合周期母子医療センター」指定申請について、機能強化には異論がでませんでしたが、こども病院の移転により一カ所に集中することには異論が多数だされました。
中央市民病院では一一年七月に十三人いた小児科医師が一二年九月には五人退職し、八人になります。小児科医師不足をこども病院の移転で補う計画かと疑う声もあがっています。
(2012年10月28日付「兵庫民報」掲載)