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2012年10月14日日曜日

姫路・日本触媒爆発事故

被害調査・対策に全力:日本共産党


日本触媒の事故現場(9月30日撮影)

姫路市の日本触媒姫路製造所で9月29日、アクリル酸の貯蔵タンクが爆発し、37人が死傷した事故。十分な説明を行おうとしない企業の姿勢や安全対策の不足に対し、疑問や批判が日に日に強まっています。事故を受け、日本共産党は調査と対策にとりくんでいます。

事故翌日に被害調査


日本触媒労働者OBら(手前側)から話を聞く
(左から)杉本県議、白髪衆院11区候補、大脇姫路市議ら

白髪みどり衆院兵庫11区候補、杉本ちさと県議、大脇和代、谷川真由美、入江次郎の各姫路市議は、事故翌日の30日、被害調査を行いました。

姫路市消防局で一行は亡くなった消防隊員に哀悼の意を表し、隊員の奮闘を慰労。消防隊員が化学防護服を着ておらず全身やけどを負ったことに関連し、消防が化学薬品火災としての対応をしていなかったことなどについて説明を受けました。

救助にあたった消防団員や、同製造所の労働者OBからも聞き取り。消防団員は「倒れていた人はアクリル酸がかかり、服はボロボロ、顔はただれているように見え、怖かった。アクリル酸の情報が何もなく、負傷するのも無理はない」などと話しました。

県議会で対応を追及


杉本ちさと県議は、10月2日の一般質問で、東日本大震災を教訓にしたコンビナート防災対策強化を求める予定の質問に、この事故についての質問を急ぎ追加。調査をもとに問題点を述べるとともに、「兵庫県コンビナート等防災計画」に基づく県の責任を明らかにし、県としての調査を迫りました。

姫路コンビナート臨海部。
日本触媒姫路製造所の施設が見える
(9月21日、県議団が船上調査で撮影)

また、日本触媒が立地する姫路臨海コンビナートは、危険物屋外タンクが243基、LNGタンクが15基、LPGタンクが多数設置されるなど、県下最大の危険物集積地であることをあげ、事故でいっそうあらわになった「コンビナート地区の防災・安全対策の重要性」を指摘。

危険物の種類によって行政が縦割りで、全体を把握した防災対策がなく、安全が企業まかせになっている現状を告発し、南海トラフの巨大地震・津波対策も含めて、県の責任での立入検査や総合的な防災計画をつくることを求めました。

日本触媒事故について、県が「市と国の調査結果を、再発防止に反映する」と答弁したのに対し、杉本県議は「県としての調査をすべきだ」と再度迫り、知事に「防災本部で協議する」と約束させました。

質問後、県は、知事を本部長とした防災本部会議の招集(9日)や、県として日本触媒に説明を求めることなどを決めています。

(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

三菱電機三田製作所:サービス残業是正

労働者と日本共産党が会社動かす



三菱電機でサービス残業是正が行われていることが、このほど日本共産党三菱電機伊丹委員会の調査でわかりました。

三田市にある同電機の三田製作所(従業員約千人・写真右)は、伊丹労働基準監督署から労働基準法違反の是正勧告を受け入れ、管理職も含む社員に対し、残業代の不払分として3カ月分が、8月賃金支給日に支払われていたものです。

「サービス残業が是正されて本当によかった」と喜びの声があがっています。

今回の是正勧告は、三田製作所では初めてです。

是正措置と指導の内容は、①残業代「自己申告」の不足分(不払い残業手当)3カ月分を支払う②裁量労働制適用者の深夜残業手当(22時以降の残留時間分)、休日出勤の時間外手当も含む③IDカードによる労働時間管理システム導入の指導と産業医による健康管理の徹底―などです。

こうした是正措置は、日本共産党三菱電機伊丹委員会と三田市会議員団が労働者と家族の訴えをもとに、今年3月末、伊丹労基署に調査と是正を求めたことによるものです。同労基署は、この是正要求以降、数回にわたって同製作所へ臨検調査に入り、是正指導を行いました。

同製作所では、IDカードによる「労働時間管理」システムが導入されておらず、労働時間の把握は自己申告制のみになっていました。そのため、開発・設計部門で働く労働者からは、「労働時間がまったく管理されておらず、休日出勤は当たり前、どんなに残業しても残業手当は45時間となります。不払い分は平均50時間です。即刻IDカードによる労働時間の管理を実施してほしい」との声があがっていました。

日本共産党が労基署に求めた「三つの是正措置」=①立ち入り調査を行い、不払い残業代を支払わせること②早急にIDカードによる労働時間把握管理システムを導入し、客観的な記録ができるようにすること③過重労働による健康障害を防ぐために産業医による保健指導や助言指導を行うこと。
(日本共産党三菱電機伊丹委員会・山本博昭)

(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

9月県議会 日本共産党杉本議員が一般質問

消費税、原発、こども病院、夢前産廃施設…県民の声に背く井戸知事を追及


10月2日、兵庫県議会本会議で、日本共産党の杉本ちさと県議が一般質問を行いました。

消費税増税実施に反対せよ


「消費税が上がったら、とても払えない」―増税が決められた後も広がる県民の不安と怒りの声をとりあげ、「社会保障のための口実は偽り。あらたな税収をムダな大型公共事業に使うことが付則に書き込まれ、財政危機打開のためという口実も投げ捨てられた」として、消費税増税実施に反対するよう、井戸敏三知事に迫りました。

これに対し知事は「少子高齢化がすすみ、社会保障施策の財源を確保しながら、歳入構造の抜本改革が不可欠。消費税、地方消費税が、今後増幅をする社会保障財源として確保されることになったことは財政構造改革の一歩」と消費税増税を評価しました。

大飯原発稼働中止、即時原発ゼロへ


杉本県議は、関西広域連合が発表した事実上の容認声明(5月30日)が大飯原発の再稼働の引き金になったとして、連合長である知事の責任を追及。関西電力自身が、再稼働の本当のねらいは電力不足のためでなく利益のためであることを認めていることを示し、「即時原発ゼロ」の政治決断を国に求めるとともに、大飯原発稼働中止の要請を求めました。

しかし、知事は、「大飯原発の再稼働がなく、供給力が当初の想定のままだと、節電要請期間の46日間のうち、19日間が計画停電に陥っていた。余裕が生じたのは、結果的なもの」「原発ゼロについてはコストの問題は避けて通れない。原子力発電所はただちに廃止するというのではない」と答えました。

県立こども病院の移転計画撤回を


県立こども病院の神戸の人工島(ポートアイランド)への建て替え移転について、国会で、中央防災会議の「浸水の危険性の低い場所に配置の見直しが必要」(中間報告)との指摘に「検討する必要がある」(厚労大臣)との答弁があり、県の対応が注目されています。

杉本県議は、移転計画は阪神・淡路大震災の教訓や中央防災会議の指摘に逆行しているとして、計画中止・再検討を迫りましたが、病院局は「安全性」やメリットを言い訳し、知事も「中央防災会議は安全なところにということ。我々は安全だと判断している」と、計画を変更せず、そのまま進める姿勢を示しました。

夢前・産廃処理施設


杉本県議は、反対署名が6万人分にのぼるなど多数の住民が強く反対している姫路市夢前町の巨大産業廃棄物処理施設計画について質問しました。

県が、反対しそうな自治会からの意見書を出させないように県民局に指示したり、途中で業者が入れ替わっているのに、住民に知らせずそのまま林地開発申請を認めるなど、異常な事業者よりの姿勢をとってきたことを暴露。さらに、その業者(成臨興業)が過去に不法投棄を繰り返していることも明らかにし、県として開発許可を行わず、計画を中止させるよう迫りました。

県は「厳正に審査を行う」、「不法投棄を行い罰則が適用された場合、廃棄物処理法の欠格要件に該当する」などと答弁しました。

杉本県議は質問日の3日前に発生した日本触媒姫路製造所爆発事故についても追及しました(1面参照)。こども医療費助成については、県行革による所得制限強化で7月から1万8千人が受けられなくなったことを明らかにしてその撤回を要求。中学3年生まで所得制限なしで無料化するよう求めました。

(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

憲法が輝く県政へ(17)

輝け!子どものいのちと笑顔

兵庫県保育所運動連絡会会長 増田百代

国いいなりの保育制度「改革」を改めて


「子ども・子育て新システム」関連修正法案(以下修正法案)が8月10日に民自公3党合意で可決・成立しました。

しかし、新システムの基本法である「子ども・子育て支援法」(以下、支援法)はほとんど修正されておらず、市町村が保護者の申請に基づいて保育の必要性を認定し、認定と利用に応じて保護者に給付をする(直接補助)という新システムの基本構造は何ら変わっていません。認定においても短時間の区分を設けることで、子どもの保育が分断される問題もそのままです。総合子ども園法が取り下げられ、認定こども園法修正案が提案されましたが、施設の名称が変わっただけで、複雑化する施設体系は変わっていません。

しかし、兵庫県はこの保育制度「改革」を推進する立場を崩していません。

私たちは県に対し、子どもの権利を侵害する「子ども・子育て新システム」関連法案を廃案にするよう国に意見書を提出すると同時に、市町が保育実施の義務を果たせるよう県として補助金を創設することを求めています。

国基準上回る児童福祉施設最低基準を条例化


「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関連法案の整備に関する法律」の成立により、保育所最低基準も自治体の条例に委任され、9月県議会で議論が始まりました。

昨年、福祉4団体で、これまでの国の最低基準を下まわらない最低基準の条例化を求め請願を行い、採択されました。今年8月には震災の教訓を踏まえた私たちが理想とする最低基準案をつくり県と懇談しました。

しかし、その懇談でも県は、予算をともなう内容について非常に消極的な姿勢を示しました。県の責任として、国基準を上回る最低基準を制定し、必要な予算を積極的に組むことが必要です。

待機児と過疎への対策


都市部では保育を必要とする子どもが保育をうけられない状況が、ますます進行しています。定員を25%上回る子どもが入所した状態で、それでもなお待機児がいます。

低賃金で過酷な労働のために、保育士の確保がとても難しくなっています。抜本的な待機児解消には認可保育園の建設と人材確保が必要です。

一方、過疎地域では保育所の統廃合や認定子ども園化が進み、通園が広域化しています。地域の保育所がなくなれば、保護者の就労保障もできなくなり、いっそう過疎化がすすみます。

地域で子育てしている若い保護者は孤立しがちで、不安を抱えて子育てをしています。週1回の地域への保育所開放は参加者でいっぱいです。

県は子ども、子育ての予算を増し、少子化対策、待機児解消など積極的な政策を持つ必要があります。しかし、県は子育て支援事業等3事業を2011年度で打ち切り、7事業の予算を削減しました。未来を担う子どもたちの発達保障と保護者の労働保障を拡充し地域を活性化するための県として予算を増やし、保育所のいっそうの充実が求められます。


(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

神戸市は借り上げ延長を考えていた

―09年12月すまい審議会答弁

民間借り上げ災害公営住宅から入居者を追い出そうと躍起の神戸市。理由は「期限が20年」「すでに入居者の3割は一般入居者(被災者ではない、ということ)」「財政難」などをあげています。

これまで、日本共産党議員団が「入居者が安心して住み続けられるよう、借り上げ期間を延長すべき」などと追及しても、「20年の期限があるから住み替えしてもらう」と、借り上げの延長など眼中にないという態度でした。
ところが、少なくとも2009年12月時点では、延長する方向で考えていたことが明らかになりました。第2次市営住宅マネジメント計画(素案)が検討された2009年12月21日に開かれた神戸市すまい審議会の安心な住生活部会の議事録がその証拠です。

この中で、住宅管理課長が、「(入居当時、20年後に)出てくださいとは言っておりません」と、退去を求めていなかったと答えています。

さらに、中川住宅部長(いずれも当時)は「(借上期間満了の)ピーク時が当然重なっておりますので、3千8百十8戸の入居者を今みたいな手法でやりきれるかと。また、それだけの住戸がなければ移せませんので、現実的にはかなりの部分は期間延長か、他の手法というのを検討せざるを得ないということは思っています」などと、明確に期間延長か他の手法を検討していると答えています。他の手法というのは、国が示している買い取りを指すものと思われます。

神戸市は、市議会では、こうした答弁は一切していません。「住み替え」を求めるとの答弁だけです。この「すまい審」での答弁は、入居者への説明や議会答弁と180度違う内容であり、入居者への対応の不誠実さを浮き彫りにしています。
10月2日に開かれた神戸市会決算特別委員会の都市計画総局審査で、日本共産党の森本真議員がこの資料を基に追及。いつ、全世帯追い出しという方針にかわったのか明確にするよう要求。借り上げの継続、住宅の買い取りなどを行い、入居者の生活を守るよう強く迫りました。

質問に対し遠藤卓男住宅部長は「すまい審の答弁は、意思形成過程の話」などとはぐらかし答弁に終始しました。

借り上げ住宅には、阪神・淡路大震災被災者らが生活しています。高齢化率は56.3%(11年3月現在)にも達しています。多くの障がい者も生活しています。こうした人たちに「期限は20年」だなどとして、強引に住み替えを求めることなど、人道的にも絶対に許されることではありません。

日本共産党議員団は「いつどこで方針が転換されたのかも含めて追及するとともに、高齢者など借り上げ住宅入居者が安心して住み続けられるよう、とりくみを強めていく」としています。

(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

レッドパージ兵庫訴訟10月24日控訴審判決

名誉回復求める3原告「勝利判決を確信している」

10月24日の高裁勝利判決を待つ(左から)
川崎さん、安原さん、大橋さん

連合軍占領下の62年前、労働条件改善を求める組合員を「危険分子」として強制的に追放したレッドパージ。

高齢を押し、名誉回復と損害賠償を求めて闘う、兵庫訴訟原告3人の控訴審判決が10月24日に迫っています。

川崎義啓さん(95)=旭硝子、安原清次郎さん(91)=川崎製鉄(現JFEスチール)、大橋豊さん(82)=神戸中央電報局、の3人は09年3月、神戸地裁に提訴しました。

11年5月、請求棄却の判決が出ましたが、即刻控訴し、大阪高裁の法廷でも賠償要求の正当性を主張。3人揃って意見陳述もおこないました。

弁護団(佐伯雄三団長)は控訴審で、ポツダム宣言やハーグ陸戦条規など国際法にレッドパージが違反していると指摘するとともに戦犯ら約20万人以上の公職追放者が52年、講和条約発効と同時に処分解除され、恩給・年金も受けている問題をとりあげ、レッドパージ犠牲者への国家的差別を厳しく追及しました。

高裁に公正判決を求める署名は2万筆近くになりました。上告審を見すえた運動募金も全国各地から寄せられ振り込み用紙には励ましの言葉が書き添えられています。

3人は「勝利判決を確信している」(川崎さん)、「91歳になってようやく名誉回復ができる」(安原さん)「私たちの闘いは日本近代史の1つの壁を破るだろう」(大橋さん)と語っています。(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

神戸で福祉パス連絡会結成

「生保世帯除外・一部負担導入」は幸福追求権奪う



「福祉パス制度の維持を求める連絡会」結成総会・学習交流会が10月6日、神戸市勤労会館でひらかれ、131人が参加しました。

神戸市の福祉乗車制度は「社会参加の促進と移動支援」を目的に障害者、母子・生活保護世帯、原爆被爆者を対象に68年発足。現在約9万枚が交付されています。市は6月「同制度のあり方検討会」をつくり実質2回の議論で「生保世帯除外、その他は被爆者を除き一部負担導入」の報告書をまとめています。

今西雄介弁護士は講演で「憲法13条の幸福追求権に関わってくる問題」と指摘しました。

松本則子共産党市議が議会報告し「制度見直しは社会参加の促進をうたった目的に反している」と述べました。

参加者も訴えました。「福祉パスがなくなるとどんな暮らしになるか不安。私は国の厄介者なのか」(兵庫生健会・黒田治さん)

「白杖片手に揺れるバスに乗り、もう片手でカードタッチしなければならない。いままで一番安全だったバスが命がけになる」(兵視協・水越敦子さん)

福祉パス連絡会は24団体で結成され、代表には柳田洋さん(兵障協会長)が選ばれました。


(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

近畿生活保護支援法律家ネットワーク発足5年

寄せられた相談約1万件

弁護士や司法書士らが無償で相談に応じる「近畿生活保護支援法律家ネットワーク」が今月、設立5年をむかえました。生活保護や多重債務、労働問題、夫の暴力など、寄せられた相談は10月5日現在9902件。相談者は近畿各府県にわたっています。年齢は17歳から98歳と広範です。

受付電話(078・371・5118)は神戸合同法律事務所に置かれ、専任相談員の泊満春さん(70)が最寄りの法律家を紹介します。登録している法律家は現在286人です。

自分で役所窓口に何度行っても、申請書類をもらえず「仕事を探してから」「家族にみてもらうように」など門前払いされ、困り切って相談した人たちが、近畿ネットの支援で生活保護を受けられるようになりました。お礼の便りが数多く届いています。

「頼るところもなく思い詰め、泣きながら電話してくる人が多いが、生活困窮者全体のまだまだ氷山の一角。近畿法律家ネットの役割りは大きい」と泊さんは語っています。

(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

治安維持法国賠要求同盟兵庫県本部結成30周年

犠牲者への賠償求め続け



治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟兵庫県本部(佐野陽三会長)の30周年記念・県下犠牲者追悼のつどいが10月7日、兵庫県民会館でひらかれ約140人が参加しました。

結社や言論を禁止した治安維持法の犠牲者たちが戦後、国家賠償を求めて治維法同盟を68年創立。兵庫県本部は82年10月、60人で結成されました。

現在会員は600人を超え、ことしも請願署名1万1711筆を国会に提出しました。

つどいの来賓挨拶で日本共産党兵庫県委員会の岡正信委員長は、天皇制政治に正面から闘った兵庫の先輩たちへの敬意を表明。党創立90周年、同盟30周年を機に、ともに奮闘する決意を述べました。

佐野会長は挨拶で、戦争犯罪人ら公職追放者は戦後いち早く国や財界に復帰しながら、治維法が廃止された後も犠牲者への謝罪や賠償がおこなわれていないと批判しました。

林直道大阪市立大学名誉教授は記念講演で大阪商大の学生だった43年、反戦運動を理由に逮捕された経験を語り「治維法は世界に名だたる悪法。いままた自民党憲法草案や秘密保全法など、まがい物が準備されている。自由を守るため、心し敏感に対応しなければならない」と語りました。


治維法犠牲者の小松益喜さん、ときさん夫妻を偲ぶ展示も同会館ギャラリーでひらかれました。


(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

デンマークの環境政策

再生可能エネルギーへ着実


市原佐紀


原発問題が深刻化するいま、1985年に国民投票で「非原発」を宣言し、着実にエネルギー自給を達成しているデンマークが注目されています。

デンマークで環境・エネルギー問題が国策として位置づけられたのは93年から2001年の社民党と中道・社会自由党の連立政権下でした。約6%だった再生可能エネルギーの全エネルギーに占める比率は倍増、風力発電は電力の28%を供給するようになりました。

その後、中道右派政権に変わりましたが、進展しつづけ、昨年度統計で再生可能エネルギー比率23・6%、EU目標「20年までに20%」を既に達成しています。また現在電力の40%以上が風力です。

昨年末、政権が中道左派に戻り、より攻めの姿勢になりました。「50年までに全エネルギーを再生可能へ」が政府目標です。3月国会で、20年までに35%を再生可能にし、電力の50%を風力でまかなうことを決めました。

デンマークは国土も九州ほど、人口も兵庫県と同等の550万人の小国です。エネルギー自給には、北海油田から供給される石油と天然ガスも大きな比率を占めています。

こうした違いはあっても日本が学ぶことは多々あります。エネルギー問題は、天然資源を持つ国は逃れられるという事柄ではなく、根本的に社会問題であり、政治的な解決が必要です。そして解決策が効率的に働くためには、国民と産業界の参加が必然です。

デンマークは環境税が導入され、国民の支持を受け風力発電などの開発普及に国税が投入されています。産業界が環境ビジネスの国際競争力を早く身につけたことが、経済活性化にも繋がりました。

ことし6月EUが、電力会社のエネルギー使用量削減に関して拘束力のある取り決めをしたさい、デンマークの産業界は積極的に支持しました。

環境政策が国際的により充実したものになれば、新しいビジネスの創造に繋がるとのコンセンサスが国民と産業界の間にできているのです。

日本では税金が大量に原子力の開発に使われてきました。一時は世界一を謳っていた太陽光発電もいまはドイツとスペインに追い抜かれました。環境ビジネスは「小さな政府のもと、市場にまかせればよい」というやり方では成長しないことを物語っています。

デンマークで環境政策への幅広い支持は、政治の透明性や国民の政治意識の高さ、環境運動はもちろん、社会運動全般の発達などとも関係しています。国会選挙の投票率は常に80%を超え、若者も政治に積極的に参加し、年齢やステータスに関係なく対等に論争します。

現在投票権は18歳からですが、16歳にしたらどうかとういう案が何度も取り上げられています。

デンマーク人にとって政治はとても身近なものです。「デンマーク人が3人集まれば運動組織ができる」と言われるほど、共通の問題点を解決するため、共同する国民性があります。数々の社会運動組織が各分野のエキスパートとして活躍しています。

社会運動に関わる人にインタビューすると「国や政治家は敵ではなく、お互いに対話する相手だ」というスタンスに驚きます。デンマーク並みの国民と政府間の信頼は、簡単に得られるものではありませんが、日本でも市民社会のボトムアップが重要ではないでしょうか。対話を通じ、お互いの共通項を見出すスキルを国民1人ひとりが身に着けなければなりません。

(デンマーク国立オルボー大学博士課程研究員、デンマーク在住13年、神戸西区出身)

(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

一コマまんが

先の見えない「近いうち」解散



段 重喜


(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)