中小企業振興条例で地域守ろう
兵庫県商工団体連合会事務局長 藤原紀嘉
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地域経済を守る運動にとりくむ中小業者(昨年10月の決起大会) |
長期の不況と国の中小業者切り捨て策の中で、地域経済と雇用を支えてきた中小業者の廃業・倒産が相次いでいます。その上、大企業や大型店の無秩序な進出・撤退もあいまって、地域経済は疲弊するばかりです。
各地で振興条例制定
こうした中で、中小業者の役割を見直し、地域経済を守るために、中小企業振興条例(地域経済振興条例)を制定する自治体が増えています。
現在、中小企業振興基本条例を制定している自治体は75自治体(全商連調べ=2012年4月)で、道府県でも17自治体あり、大阪府も10年に制定しています。このうち6割近い44自治体がこの5年間で制定されたものですが、県内では宝塚市のみとなっています。
中小企業基本法第6条は、地域産業を応援するのは自治体の仕事、責務と定めています。その趣旨に沿った条例制定は、地域産業政策だけでなく、都市計画、教育、住宅など様々な政策にも大きな効果をもたらすことになります。また自治体が中小業者と協力して地域経済振興にとりくんでいく基盤にもなり、自治体が地域産業に対する姿勢を一貫させていく担保にもなるのです。
地方自治体を舞台に構造改革を推進しようという動きが大阪などで強まる中、どのようにして地域経済を守っていくかが重要となっています。
大阪・吹田市では、09年に条例が制定されましたが、官公需による地元中小業者の仕事確保、市営住宅建設の地元優先発注、小規模工事登録制度の創設、リフォーム助成の実施などを盛り込んだ「請願」が採択されるなど、運動と条例が生きた力を発揮しています。
兵庫県は「条例制定は考えてない」と回答
兵庫県では、02年に兵商連など135団体が署名した「兵庫県地域経済振興条例制定を求める請願」が、日本共産党をのぞく会派の反対で否決されました。
その後も、民商・兵商連は毎年、中小業者施策の充実とともに、「地域経済振興条例」の制定を求める交渉を行なっています。しかし、県は「『ひょうご活性化プログラム』を策定し、理念をもってやっている」(10年度予算要望への回答)、「中小企業基本法の趣旨にそって施策を実施してきた。条例制定は考えていない」(12年度予算要望への回答)などとしています。
関西財界の意向にそって「海外展開支援」
しかし、こうした県当局の「中小企業支援も行っている」との回答とは裏腹に、12年度予算では、「海外事業展開支援」「世界に勝てる兵庫経済」など、関西財界の意に沿った方向を打ち出しています。地域産業を応援するのは自治体の責務としている中小企業基本法第6条とは程遠いといわざるを得ません。
また、昨年12月の議会で採択され制度実現への期待が高まっている「住宅リフォーム助成制度」を「必要ない」とする姿勢にも端的に現れています。「住宅リフォーム助成制度」は、地域経済に大きな効果を発揮しており、全国商工新聞の調査が始まったこの8年で6倍、全国の自治体の3分の1にあたる533自治体に広がっているものです。
地域住民と地域経済にとって商店街は生活に密着した公共の施設です。町工場はものづくりの力そのもの、建設業は快適な空間をつくる知恵と技能をもっています。
地域を守る自治体の重要な役割を
この中小業者と地域経済を守り発展させることは、地域を守る自治体の重要な役割のひとつです。そのためにも、中小企業振興条例(地域経済振興条例)の制定を強く求めます。
(2012年9月9日付「兵庫民報」掲載)