井戸県政で「解同」癒着が復活
兵庫県地域人権運動連合事務局長 前田武
八鹿高校事件を「忘れた」かのように
県政を検証する場合、38年前1974年の、日本の教育史上前例のない8鹿高校教職員に対する集団暴力事件、いわゆる8鹿高校事件を忘れてはなりません。
同事件は、当時の坂井県政が部落解放同盟(以下・解同)に迎合屈服して引き起こした事件であったことから、国民的に猛烈な批判を受けました。その結果、当時の坂井時忠県知事は、「同和行政の推進について」と題する通知を出し、この中で「行政が運動の立場と役割を混同し、県民の不信をまねく事態がみられたことは極めて遺憾である。」(1976年4月12日)と反省し解同との「窓口1本化」行政を廃止したのです。
坂井県政から貝原県政になっても、解同と距離を置き、解同の諸行事には参加しませんでした。しかし、井戸知事は、こうした経過を意識的に「忘れた」のか、解同の諸集会に知事自ら出席し、県幹部を講師として派遣するなど、1挙に解同と癒着復活県政に変質させました。8鹿高校暴力事件当時の良識ある県の首脳部は退職し、事件の内容も苦労も知らない県幹部が多数になったことも知事の暴走を許す原因にもなっています。
さて、「都道府県別幸福度ランキング」(2011年11月、法政大学大学院政策創造研究科幸福度指数研究会)によると、兵庫は45位(評点平均5.03)です。(最下位は評価点4・75の大阪)
このデーターは、井戸県政の県民犠牲の人権軽視の裏返しの証明でもあり、それらをごまかすために「人権行政・教育」の推進をことさら強調し、「人権」の概念をゆがめてきました。
「人権教育・啓発」で「貧困」「格差」目隠し
今年度の県予算は民生費「人権啓発推進費」(4億8896万円)と、県教委の「人権教育推進費」(1億4238万円)を合わせると、合計6億3134万円)を計上しています。
そして、県政は、従来の「同和行政」「同和教育」を「人権行政」「人権教育」として継続させています。
県は、兵庫県人権教育研究協議会(2012年度県予算で1471万円)の補助金を支出し、県下市町の人権(同和)教育協議会への行政補助金の合計は1億2千万円以上(推計)と見られ、神戸市の付き合い程度の50万3千円(今年度予算)に比較して、人口も少ない自治体で1千万円以上の補助金を支出しているところもあります。
この行政補助金を使って、「校区人権教育協議会」が組織され、町内会ごとに配置している「人権推進委員」や町内会役員、小中学校などを動員して、行政企画の「人権教育・啓発」体制を敷く自治体もあります。
つまり、人権問題を差別問題にわい小化させた「人権教育・啓発」は、新たな差別意識をつくり出す一方、新自由主義がもたらす人権破壊、平成の「貧困」と「格差」の目隠しの役割を担ったものです。
これまで大阪、奈良、京都などで「同和犯罪」が明らかにされ、県民の中には「『同和』はすでに終わった」という印象が広がっていますが、実態は決してそうなっていません。あらためて井戸県政と解同の癒着の深刻さを直視し、批判を強めることが求められています。
(2012年7月29日付「兵庫民報」掲載)