こども病院をなぜポーアイに〈下〉
兵庫県保険医協会副理事長 武村義人
(前号からの続き)
医師会の意見を無視
こうした状況に対して、県医師会や神戸市医師会、産科婦人科学会、小児科医会などから、厳しい批判の声があがっている。兵庫県医師会は、被災地への医療支援に取り組み、石巻市の実情をその目で見てきただけに、実感としても、どうしても容認できないとの思いを、当会のインタビューで繰り返し語っておられる。
しかも、一連の手続きの中で、県が医師会の意見を全く無視していることの問題点も明らかになってきた。県は2011年6月14日の医療審議会地域医療対策部会で、計画(案)の審議を行い医師会代表も参加したもとで承認されたとしている。参加した県医師会の代表は反対意見を表明したが、部会としては賛成多数で承認になったというものである。
これは、民主主義の手続き上、やむをえないように映るが、事実は、大きな問題を含んでいた。
なぜなら地域医療再生計画交付金の「交付の条件」、計画の「作成指針」などを通知した厚労省医政局長の通知では、繰り返し「医師会等地域の医療関係団体、地域住民等官民問わず幅広く地域の医療関係者の意見を聴取し、その内容を計画に反映すること」としているからである。
医政局長の通知を真摯に受け止めれば、医師会の反対意見を無視して進めるようなことがあってはならないのは当然であろう。先の「総合事業等審査会」にも、医師会関係者は1人も参加していない。
ポートアイランド孤立化の恐れ
今春4月には、県自身が発表した「津波シミュレーション」によって、ポートアイランドが孤立化する可能性があると報じられた。当会はただちに、県病院局に、移転計画との関係を問う質問状を提出したが、県は「孤立するような事態は発生しない」と、正反対の回答をしている。
当会が危惧しているのは、単純な建物の被災等ではない。災害時に、基幹病院として機能が発揮できるのか、入院しているリスクの高い新生児を守ることができるのか、外部とのアクセスを維持できるのか、等々である。被災の可能性を「想定」するのではなく、そのような「想定」の必要のない地盤の上にこそ、拠点病院は整備すべきである。
計画はまだ設計段階であり、見直しは可能である。だが、走り出した列車を止めるには、県民の世論を大きく広げることが不可欠である。(
終)
(2012年7月22日付「兵庫民報」掲載)