暮らし、経済支える自治体本来の編成へ
日本共産党神戸市会議員団は、市議会本会議に神戸市一般会計予算等の組み替え動議を提出しました。神戸市議団の動議の提出は2000年度以来、12回連続の提案です。今回の予算組み替えの特徴は、予算の使い道を大型開発優先から福祉拡充に組み替えるとともに、低迷する神戸の地域経済を内需主導の健全な発展の一歩となる経済施策を提案しています。(党神戸市会議員団事務局・前田明)
矢田神戸市政の10年間は、神戸空港など大型開発を最優先にすすめる一方、財政難を理由に福祉を切り捨ててきました。この10年で市民負担増は敬老パスの有料化や保育料の値上げなど276億円以上にのぼります。また、地域経済対策では、10年でポートアイランド等への誘致企業などに28億円の減税と補助金を投入する一方、既存中小企業への支援には背を向け、大震災被災業者への減税や民間賃貸工場家賃補助はうちきられました。
矢田市長が提案した2012年度予算案では、乳幼児医療費の2歳までの無料化や中学校給食を視野にいれた検討会の設置など「こども署名」や「中学校給食実施を求める署名」運動のひろがりを一定反映したものの、福祉切り捨て大型開発優先の姿勢や、誘致企業頼みの経済政策をつづけています。さらに、四つの外郭団体の赤字処理に対して、海上アクセス航路事業や住宅供給公社の過大な土地分譲事業など、赤字を増やした責任の所在を明らかにしないまま、今後十数年にわたって600億円以上の負債を市民におしつけようとしています。
日本共産党議員団は3月4日から開催された予算特別委員会で、予算案の問題点を厳しく指摘するとともに市長の提案する予算を組み替える動議を15日に提出しました。
柱1:福祉施策復活・拡充へ
議員団の組み替え提案の第一の柱は、削られた福祉施策を復活し、福祉・子育て・医療充実へ転換する提案です。
矢田市長が廃止した、重度障害児(者)福祉年金や生活保護世帯夏冬見舞金等を復活させるとともに、敬老パスは元の無料に復活させます。
また「安心子育て神戸」の実現のため、こども条例を制定し、中学卒業まで医療費を通院ふくめ無料にするとともに、小学校全学年で35人学級を実施。中学校給食を全校で実施するための調査を開始し、(2面に続く)(1面の続き)現在建設改築中の2校で年度内に実施する経費を計上。保育料の値下げや公立保育所建設費、奨学金・就学援助、妊婦・乳幼児、学童保育、児童虐待予防対策の予算増を提案しています。
また「安心医療・健康・介護の神戸」の実現のため、国民健康保険料を一人1万円の値下げ、介護保険料の減額や、介護福祉助成金などによる利用料減額を実施。応益負担による自立支援法よる利用負担を軽減するため、自立支援医療の無料化や障害者福祉を充実。予防検診等の健康づくり予算を大幅に増額するとともに、特別養護老人ホームの建設促進や敬老パスを市内4私鉄にも利用できる予算も提案しています。
柱2:内需主導で地域経済成長へ
組み替え提案の第二の柱は、雇用・所得を増やし、地域経済を内需主導で健全な成長の軌道に乗せる提案です。
中小企業を神戸経済振興の中心に据えるため、公契約条例と中小企業・地域振興条例を制定します。小規模事業者には、整備促進助成や無利子制度なみの融資への利子補給の実施、商店街小売市場には活性化助成を創設します。中学校調理室や空調設置、特養や保育所建設など地元発注の公共事業を増額するとともに、小規模事業所登録を制度化して、地元優先発注をすすめます。さらに住宅リフォーム助成や地域分散型自然エネルギー開発助成を創設し、自治体自らが仕事づくりにとりくみます。
また、人間らしく働き、暮らせる地域社会づくりのため、中小企業向け継続雇用正社員化奨励金を創設、各区に若年者就業支援相談員を配置し、雇用の安定につとめ、企業への啓発・指導の体制も強化します。
このほか、市内産自給率向上で農林水産業振興や、脱原発・低エネルギーと安心防災のまちづくり施策をすすめます。
以上の施策で必要な一般財源は約100億円。神戸空港や医療産業都市への過大な支援予算の削減や、年間3億円にのぼる特定の誘致企業への減税の廃止などで捻出します。
わずか2%の組み替えで
日本共産党議員団の組み替え提案を実施すれば、福祉・子育て・医療の充実と雇用安定にとりくむことで市民の家計所得が下支えされるとともに、中小企業への直接支援と内需型の仕事起こしを自治体自らとりくむことで地域に新しい仕事と雇用が生み出されます。
以上の提案は、市長の提案する一般会計予算7,344億円のわずか2%を組み替えることで実現でき、さらに市債の発行も予算案より20億円以上も削減するなど、福祉充実、地域振興、財政再建を一体的に進める自治体本来の予算編成のあり方を提起するものとなっています。
民主・自民・公明・みんな・たちあがれ日本などが反対
3月29日の神戸市議会において、日本共産党の組み替え動議は大かわら鈴子議員が提案説明をおこない、山本じゅんじ議員が賛成討論を行いました。動議は賛成少数で否決され、神戸市一般会計予算は、民主党、自民党、公明党、自民党神戸、みんなの党、たちあがれ日本の賛成で可決しました。
組み替えのポイント(予算額は重複あり)
福祉充実
削られた福祉施策を復活し、福祉・子育て・医療充実へ
◎矢田市長が削減した福祉施策復活:16億円
◎「安心子育て神戸」:48億円
- 中学卒業までこどもの医療費無料化
- 小学校全学校で35人学級
- 中学校給食の実施
- 保育所の建設と保育料の値下げ
- 妊婦・乳幼児・児童虐待対策の強化
◎「安心医療・健康・介護の神戸」:81億円
- 国保料一人1万円値下げ
- 介護保険料値上げ抑制、利用料軽減
- 自立支援医療無料など障害者支援充実
- 敬老パスの無料化と路線拡充
- 予防健診など健康づくりの充実
- 特養ホームの建設推進強化
経済振興
雇用・所得を増やし、地域経済を内需主導で健全な成長の軌道に
◎中小企業を神戸経済振興の中心に:26億円
- 住宅リフォーム助成
- 地域分散型自然エネルギー開発助成
- 整備促進助成と利子補給
- 商店街・小売市場活性化助成
- 小規模事業者登録制度
◎人間らしく働き暮らせる地域社会:2億円
- 継続雇用正社員化奨励金
- 若年者就業支援相談員の配置
- 多重債務包括的支援
- DV相談窓口24時間化
◎市内産自給率向上で農林水産業振興:2億円
◎脱原発・低エネルギーと防災のまち:3億円
財政再建
以上の施策で必要な一般財源:100億円
神戸空港や医療産業都市の事業、特定企業への減税の廃止などで捻出する
不要不急事業の中止で20億円の借金を抑制。福祉を進めながら財政健全化もすすめる
(2012年4月8日付「兵庫民報」掲載)