3年ごとの介護保険事業計画の見直しが行われ、市町ごとに、来年4月から3年間の介護保険料額や施設などの整備目標を定める計画決定が大詰めにきています。保険料額や計画は各市町が決めますが、県も、市町を支援する「介護保険事業支援計画」(県老人福祉計画)を定め、市町に施設整備などの指針を示します。
保険料は大幅値上げ
のきなみ値上げ、5千円超え
65歳以上の介護保険料は、各市町でのきなみ大幅値上げの予定で、平均基準月額は5千円を超えています(表参照)。基準額は、世帯には課税されているが本人非課税の場合。課税されない低所得者にも月5千円以上の負担を強いることになります。
4分の1に満たない国庫負担の引き上げを国に求めるとともに、市町に対して、「介護給付準備基金」の取り崩しや、一般会計からの繰り入れ、減免制度の充実など、保険料抑制のための手立てを迫ることが必要です。
財政安定化基金取り崩しで値上げ抑制を県に要求しよう
今回は特に、県に対する運動も重要です。
昨年の介護保険改定で、来年度に限り、県の「財政安定化基金」(国・県・市町が3分の1ずつ拠出し、市町の事業運営が困難になった場合貸付を行う)を取り崩し、保険料引き下げに活用することが可能になりました。
介護保険事業は多くの市町で保険料を取りすぎ黒字になっているため、県の「財政安定化基金」貸付実績は近年少なくなっており、121億円もため込まれています。
今回、県は121億円のうち約72億円をとりくずし、3分の1ずつ国・県・市町に渡します。市町に渡す分は、保険料の引き下げに使われ、1人当たりの引き下げ額は、平均で月額約50円。(図参照)
県と国にわたる分は、昨年の介護保険改定時に、「介護保険に関連する事業に使うよう努める」とされています。もちろん保険料引き下げに使うこともできます。
ところが、兵庫県は、保険料引き下げには使わず、一部を別の基金にため込み、介護関連事業や介護給付費の県費負担金に使うとしています。
サービスは使えないのに高すぎる保険料をとられ、「100円でも10円でもいいから返して」というのが多くの高齢者の声。40市町から、県への返還分を保険料引き下げに使うよう県に要望書も出されています。
県への返還分を活用させれば、引き下げ額を2倍に(月額100円)、さらに取り崩し額を増やさせれば、3倍(月額150円)以上にすることが可能です。
【表】第5期介護保険料の見込み額
自治体 | 見込み額 |
---|---|
県平均 | 5,108円 |
神戸市 | 5,438円 |
尼崎市 | 5,257円 |
西宮市 | 4,893円 |
芦屋市 | 5,093円 |
伊丹市 | 4,383円 |
宝塚市 | 5,005円 |
川西市 | 4,500円 |
三田市 | 4,796円 |
猪名川町 | 5,097円 |
明石市 | 5,334円 |
加古川市 | 4,982円 |
高砂市 | 5,216円 |
稲美町 | 5,009円 |
播磨町 | 4,548円 |
西脇市 | 5,215円 |
三木市 | 5,210円 |
小野市 | 4,800円 |
加西市 | 4,836円 |
加東市 | 5,600円 |
多可町 | 5,301円 |
姫路市 | 5,250円 |
神河町 | 4,547円 |
市川町 | 4,889円 |
福崎町 | 4,495円 |
相生市 | 4,448円 |
たつの市 | 4,464円 |
赤穂市 | 4,219円 |
宍粟市 | 5,075円 |
太子町 | 4,911円 |
上郡町 | 5,330円 |
佐用町 | 5,109円 |
豊岡市 | 4,874円 |
養父市 | 5,427円 |
朝来市 | 4,897円 |
香美町 | 4,705円 |
新温泉町 | 4,622円 |
篠山市 | 4,205円 |
丹波市 | 4,812円 |
洲本市 | 4,959円 |
南あわじ市 | 5,000円 |
淡路市 | 4,656円 |
【図】「財政安定化基金」の取り崩し
県財政安定化基金総額121億円(国・県・市町が各1/3ずつ拠出)
取り崩し総額72億円
内訳
(1)市町へ24億円。保険料の抑制に活用、引き下げ額は1人当たり50円。
(2)県へ24億円。「介護家族への講習」などや介護給付費の県費負担金。
(3)国へ24億円。使い道は明らかでない。
国、県分は、保険料引き下げに活用を!
県財政安定化基金
残り49億円
もっと取り崩しを!
特養ホームは大幅減
「施設から在宅へ」を名目に
施設整備については、県が、特別養護老人ホームの入所者をさらにしぼりこむとともに、「在宅への移行」を見込んで建設数を減らす、とんでもない方針をつくろうとしていることがわかりました。
県の試算では、現状の入所状況を反映すれば、2025年末までに、3万8千床の整備が必要。それを、現在要介護1~5の入所対象者を、原則、要介護3~5にしぼりこみ、さらに、「在宅サービスの充実による整備必要数の1割削減」を行うことにより、3万床の整備に減らそうというのです。
この方針でいけば、県全体で、年平均で550床しか増えません。
現状でも、県は、待機者数を「緊急度の高い人」に絞り込み、低く見積もっていますが、実際には、都市部では「200人、300人待ちはざら」という状況です。
また、代わりになるとしている「在宅サービスの充実」とは、国も目玉にしている「24時間定期巡回・随時対応の訪問介護看護サービス」ですが、朝・昼・夜に10~15分程度の訪問と随時対応で「これで在宅介護がやりやすくなるとは思えない」と関係者から疑問視されているもの。それをあてこんで特養建設数を減らすのは筋違いです。
県は、こんな指針をつくって市町に押しつけるのはやめるべきです。
パブリックコメントも活用して声あげよう
第5期介護保険事業支援計画(老人福祉計画)に対するパブリックコメントが2月末から開始されます。これも活用し、県に声をあげましょう。
(2012年2月26日付「兵庫民報」掲載)