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2012年2月5日日曜日

いまなお債務に苦しむ被災者救え

災害援護資金・緊急災害復旧資金の返済問題で
阪神・淡路救援・復興県民会議が政府要請

阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議は1月24日、災害援護資金や緊急災害復旧資金の返済について厚生労働省と中小企業庁に要請を行いました。
阪神・淡路大震災では、個人補償は無く、多くの被災者が借金に頼らざるを得ませんでした。被災者生活再建支援法の2度にわたる改定で最高300万円の支給をはじめいくつかの制度や運用が改善されましたが、阪神・淡路大震災被災者には遡及適用も特例での救済措置もなく、災害援護資金や緊急災害復旧融資などの返済の行き詰まりは顕著で、自己破産、代位弁済などの増加は17年たったいまも続いています。

災害援護資金貸付は返済期限が過ぎた2011年3月末でも、借受人の23%の12,981人(内、徴収困難・不可能が2,104人)が未償還。19%の10,877人が月々1,000円からの少額償還で返済を続けていますが、暮らし再建の重石となっています。

被災中小企業に対し、地元自治体が行った緊急災害復旧資金融資の残高は、11年末で1,400件、99億8,100万円。県信用保証協会が肩代わりした「代位弁済」は6,920件、529億800万円となっています。この融資で営業再建を果たし、大震災後の地域経済を支えてきた業者の中にも、廃業に追い込まれ、生活基盤の住宅・店舗を売却してもなお、残存債務に苦しんでいる人びとが少なくありません。
東日本大震災被災者へは、同震災限定施策とはいえ、災害援護資金は、連帯保証人があれば無利子、なくても1.5%と低利息、返済困難者には返済免除の道も開かれました。被災業者など個人債務者の私的整理についてのガイドラインも策定されています。
今回の要請で県民会議側は、こうした前進点もあげ、厚生労働省に対し、災害援護資金返済問題について①未返済者の返済を免除すること②連帯保証人の連帯保証義務をはずすこと③滞納者に対する延滞利息10.75%は適用しないこと―を求めました。

厚生労働省の担当者は要請に対し「すでに返済された方との公平性」を持ち出しましたが、県民会議側は、昨年の参院災害特別委員会で、山下よしき議員の質問に対し、平野達男防災担当相が「東日本大震災では償還免除事由の拡大を打ち出している。そこを横にらみしながら検討すべき課題だ」と答えていると指摘し、この答弁の後、どんな検討がされているのか、阪神・淡路大震災被災者が救われる検討をと強く要請しました。

中小企業庁では、緊急災害復旧資金融資の残存債務について、①債務の全部または一部を減免すること②債務免除の対策を講じること―を求めました。

同庁担当者は「返済不能などの事案はあがってきていない」「おおむね立ち直れているのではないか」など、阪神・淡路大震災被災業者の実態とかけ離れた説明をしましたが、県民会議側が「借り換えや代位弁済など、数字の上では返済が終わっていても、被災業者のところには借金が残っている」と指摘すると、「確かに、借り換えや代位弁済などの内訳はつかんでいない」と認めました。

県民会議側は、実態をしっかりつかんで免除などに踏み切るよう訴えました。
この要請には岩田伸彦事務局長ら県民会議役員のほか、日本共産党の堀内照文衆院比例予定候補、味口としゆき・山本じゅんじ両神戸市議も参加。山下よしき参院議員が同席しました。

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

158億円を海に捨てるのか:海上アクセス社の債務切り離し

「ストップ! 神戸空港」の会事務局長 北岡 浩

海上アクセス社のベイ・シャトル
神戸市の「みなと総局外郭団体あり方検討委員会」は昨年12月27日、最終意見を発表し、海上アクセス株式会社から巨額の債務を切り離すことを提案しました。これを受け、神戸市はことし1月19日の市議会港湾交通委員会で「意見書を尊重し、実施する」と明言しました。
海上アクセス社は1988年、神戸と関西国際空港とを結ぶ高速艇航路として民間旅客船会社が中心となって設立されましたが、巨額の債務をかかえて休眠。2006年、神戸空港開港にあわせ、神戸市が資本参加し、第3セクターとして再開したものです。

しかし、再開後5年間で、市が10億6千万円もの補助金を投入したにもかかわらず、7億円の赤字(補助金も合わせて実質17億6千万円の赤字)。累積債務は166億5千万円に達しました。市民からは「走らせれば走らせるほど赤字を垂れ流す。直ちに運行は停止すべきだ」との声があがっていました。

ところが、同委員会は、本業である海運事業の赤字を付帯事業である駐車場管理業務で穴埋めしている、乗船人数が年間48万人の採算ラインに達していない―などが実態であり、将来への確かな見通しがないにもかかわらず、「公共性がある」として事業の継続を認めました。
さらに、継続にあたっては「事業主体の安定が必要」として、巨額の債務を海上アクセス社から切り離すことを提案したのです。その手法は、民事再生手続きの中で、①株主責任を明確にするため資本金を100%減資した後、②債権を資本化し、それをさらに減資する―というものです。

資本金については、神戸市が10億円、市の外郭団体が16億円を出資していますが、①により合計26億円全額を減資します。株券は文字通り「紙切れ」となってしまいます。

債権については、神戸市が102億円、市の外郭団体が34億円を無利子で貸し付けていますが、そのうち、再開後の3億円を除く133億円を②により資本化しますが、時価評価に基づいて、たったの2億円となります。さらにそれを1億円に減資します。

つまり、神戸市と市の外郭団体が資本金と貸付金として投入した合計162億円は4億円(資本金1億円+貸付金3億円)しか残らず、158億円を海に捨てることとなってしまいます。

阪神・淡路大震災から17年、いまだに災害援護資金を必死に返済している被災者がいます。また、多くのご商売人が必死の努力をしている中、このような暴挙は絶対に許せません。

神戸空港開港6年抗議集会&学習会/2月15日(水)18時30分/神戸市勤労会館/参加無料/主催=神戸・市民要求を実現する会☎078-335-3770

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

公立高校の学区再編を考える―識者・関係者に聞く⑤

神戸市も事実上、学区拡大推進
池見宏子(DCI神戸セクション)

パブリックコメント

「学区再編」についてのパブリックコメントで、神戸市民として次のような要望を出した。

“再検討、撤回されることを強く要望”
①特に、神戸市民として、現在でも広域の格差のある通学区域で、問題が深刻な状況の上に、新学区案では淡路を含めて1学区にするというのはあまりにも無謀。
②政令都市、神戸市にある高等学校を、県立高校ということで、全県下の政策の中に一緒に入れることは、神戸市の政策、若者を育成するのに「地域の連携を大事にする」趣旨から離れ、顔の見える地域で、若者が育つ場、地域での若者たちとの協働、連携が難しくなる。
③何より、国連子どもの権利委員会第3回最終所見が指摘した「子どもの最善の利益を最優先にする」という視点で、過度な競争が激化し、教育格差がより激しくなる点でも、再検討のうえ、撤回を強く要望する。

《学区拡大》責任者の話でわかったこと

《学区拡大》を推進する責任者の声を聴く機会があった。「高等学校学区変更」について、その検討委員会委員長である梶田叡一氏が説明をする会だ。まるで梶田氏個人の講演会のような雰囲気で、説明会2時間の半分以上を費やした。

しかし説明の中身を聞いて分かったことは、彼は、かつて、文部省の中央教育審議会教育課程部会長を務め、日本の教育改革を進めてきた張本人であり、京大教授、京都ノートルダム女子大学長、兵庫教育大学長を歴任、現在は環太平洋大学長に就任、そして心理学専攻と、その専門性を強調しながら、これまでの教育改革の延長線上の、「兵庫県公立学校通学区域検討委員会委員長として学区を少なくする先頭に立っている…」ということである。

ほとんど参加者との意見交換の時間を取らずに終わった一方的な説明会だった。せっかくの意見交換を期待して参加したので、残って主催者の県教委に「梶田講師に伝えてほしい」と次のように訴えた。

―あなたが行ってきた教育改革の結果が、不登校、リストカット、いじめ、自殺まで生み、子どもたちを苦しめている認識がないのは残念だ。
高校生が多様で個性的ではなく、子どもたちは、生まれながらにして、多様で個性的。本来なら就学前教育から、一人ひとりと向き合った教育環境が必要なのに、そして、少子化になっているのに、実態は、就学前の子育て環境、小中学校の教育環境は厳しいままで、高等学校でさらに校区を広げて競争をますます激化させる「校区の変更」は、事態をより悪化させることになる。
国連子どもの権利委員会が一昨年に出した第3回最終所見では、「高度に競争主義的な学校環境が、就学年齢にある子どもの間のいじめ、精神的障害、不登校・登校拒否、中退および自殺に寄与しうることを懸念する」とし、「このような競争を激化させる日本の教育システム全体を根本的に変えること」を日本政府に勧告している。
それに反する今回の改革は、すぐに白紙に戻してほしい―と。

神戸市との懇談で

その後、DCI神戸セクションとして、神戸市関係当局と懇談会を持ち、重ねて中止を求めた。

神戸市の回答は、「3年に及び検討、普通科以外はもともと全県校区、高校は来ている生徒と地域が連携しているから若者が地域で育つ神戸市の施策に反していない。複数志願制だから、意に添わず、遠くの学校へ行かされることがないように中学校とも連携し、県教委へ要望を出している。意に沿わない通学の場合、通学費の支給も考慮。自分の行きたい高校へという要望がある」というもの。

神戸市として「学区拡大」を事実上推進する姿勢が浮き彫りになった。

私たちの「学区拡大によって選択肢が増えるのは学力上位数%のみ。競争にも参加できない子どもたちがますます増え、地域格差、学力格差をより大きくする」との指摘に返答はなかった。

神戸市民として更なるチェック体制を!

神戸新聞によると、兵庫県下の教育長にアンケートをとった結果、2/3は反対、どちらかといえば反対になり、積極的な賛成は、神戸市と加古川市のみだった。

神戸市は、兵庫県の中にあって、その姿勢は、市民に対していつも曖昧で、結果的に行政の思うままに進行してしまう傾向にある。このたびも神戸市は2015年に向けて早々と現在の6年生に「学区拡大」の知らせを行ったという。

神戸市民として、この「学区拡大」が子どもたちの新たな生きづらさにつながらないよう、「どの子も学ぶ権利を保障する」視点で、さらにチェック機能を働かせることが求められる。

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

「新春のつどい」で日本共産党躍進への弾み

党創立90周年の年、新しい歴史をつくろうと日本共産党が各地で「新春のつどい」を開催。堀内照文衆院比例候補らを先頭に、躍進への弾みをつけています。

篠山市での「新春のつどい」で躍進を訴える堀内衆院比例候補

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

暮らし優先の新しい政治を篠山市でも

日本共産党 前田えり子議員が決意あらた

つどいで訴える前田えり子議員
市議選(定数18)が4月15日告示・22日投票で予定されている篠山市で1月28日、日本共産党「新春のつどい」が開催されました。

つどいで、前田えり子市議は、合併後の財政行き詰まりを市民への負担増・サービス削減で立て直そうとする市長の「再生計画」に対し、市民の福祉・暮らしを最優先にと主張してきたこと、その中で、東雲診療所の存続・4月からの常勤医師赴任など、住民とともにとりくんだ運動が市政を動かす成果をあげていることを報告しました。

350通の返信を集めた党の市民アンケートでも「同居したいが、職場がなく子どもは遠く離れている。安心して老後が暮らせる町にしてほしい」「子どもを産み育てられる保障を」など切実な要求があがっていることを紹介し、自治体本来の役割を取り戻そうと呼びかけました。

また、解放同盟の要求に沿った「人権条例」を許さず同和行政の完全終結をめざすこと、篠山市も50~60km圏内となる福井原発の防災対策の見直し、期限をきめた撤廃を求め、安心安全のまちづくりをめざすことなども訴え。

定数2減の市議選で、日本共産党の議席を守る決意を表明しました。

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

「公共交通・神戸電鉄粟生線/沿線住民の足を守る会」結成へ

神戸市西区

早朝の粟生線押部谷駅(神戸市西区)
粟生線について神戸電鉄が、毎年10億円以上の赤字を理由に「廃線も検討」と言いだし、沿線住民の不安を引き起こしていますが、神戸市西区の住民は「公共交通・神戸電鉄粟生線/沿線住民の足を守る会」を結成して運動を広げようとがんばっています。

2月18日に「足を守る会」のよびかけ人会議を、桜が丘ジョイフル集会所で行うことにして、いま、地域の自治会や老人会、病院・医院や学校・PTAなどへ申し入れを行っています。

よびかけに対して自治会や医師などから「趣旨はたいへん良い、自治会で検討する」「活性化協議会でやっているのでいいと思っていたが、話を聞いてよくわかった。検討したい」「自治会で入会ができなくても、個人では参加したい」などの好意的な対応がほとんどでした。

「足を守る会」では、「兵庫県も神戸市も、沿線住民の不安に応えてほしい。地下鉄のように、神鉄でも敬老パスを使えるようにすれば神鉄支援にもなる。西区や北区、北播磨の重要な足を守るため、もっとしっかりやってほしい。神鉄も公共交通を守る努力をもっと真剣にやってほしい」と、つよく求めて運動を広げようとしています。

日本共産党の押部谷地域の党支部は、一昨年に「廃線」が持ち出されてから、「住民アンケート」や「敬老パス実現の陳情」などを行い、その結果を地域にビラや後援会ニュースで知らせて、喜ばれています。アンケートには合計5百近くの回答があり、関心も高く、スピードアップや、運賃の引き下げ、敬老パス実現、神鉄の経営努力などを求める回答が多くありました。また、神戸市営地下鉄の延伸についての意見も多く出されています。

この間の運動を通じ、神鉄も割引乗車券の発売などにもとりくみ、利用者の声に耳を傾けようとの変化も起きています。利用者・住民と、関係自治体・国、神鉄・阪急阪神ホールディングスなどが「神鉄粟生線存続」へ力を合わせることが求められています。

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

郵政雇い止め裁判支援の会結成へ

神戸西支店・中島道子さん 12月8日提訴
「会社の不当に歯止めかけたい」

裁判支援を呼びかける(左から)成山郵産労神戸中央支部長と中島さん
郵政非正規社員雇い止め裁判を支援する会(仮称)が2月6日、神戸市婦人会館で集会をひらきます。作業所閉鎖、勤務時間削減、賃下げ、そして雇い止めの攻撃に屈せず闘う原告、中島道子さん(61)を支援します。

中島さんは92年3月神戸西郵便局(民営化後=神戸西支店)に非常勤職員として入所。6カ月更新を繰り返し勤務年数は19年です。

当初は美穂が丘作業所で、周辺団地への郵便配達を担当していました。会社が「事業効率化」を理由に09年11月、作業所廃止と非常勤雇い止めを発表したさい、郵産労に加入し組合員11人で分会を結成。作業所存続と雇用確保を求めました。

いったん計画を撤回させましたが、半年後に会社は廃止を強行。中島さんたちは神戸西支店内勤となり、勤務時間も時給も切り下げられました。

そのうえ11年2月、再度「雇用調整」を理由に、より大幅な勤務時間削減と配置換えばかり盛りこんだ「7つの選択肢」を提示。どれも一方的な不利益変更にもかかわらず「応じなければ雇い止め」と通告してきました。

中島さんは仲間と3人で兵庫県労働委員会に斡旋を申請しましたが、会社が拒否。11年3月末、雇い止めになりました。3人は同年4月、地位保全の仮処分を神戸地裁に申し立てました。しかし地裁が9月に出した決定は会社の不利益変更と雇い止めを容認する不当な内容でした。

12月8日提訴した本裁判は中島さん1人が原告です。一緒に闘った仲間は今回、支援にまわります。

郵産労神戸中央支部(成山太志支部長)の提起した「裁判支援の会」には、日本共産党の、きだ結県議、ねりき恵子県議、松本のり子神戸市議、花房ふみこ神戸市議らも呼びかけ人になっています。

成山支部長は「女性中心の運動で中島さんをバックアップしてほしい」と話しています。

中島さんは「初めから私1人でも最後まで闘う決意でした。こんな不当なことがまかり通ったらダメ。働く若い人たちのためにも、会社に歯止めをかけたい」と決意を語ります。

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

港湾労働者のアスベスト被害訴訟支援

神戸港での石綿荷揚げの状況を語る赤木さん、右は八田直子弁護士
神戸港のアスベスト被害を考える集会が1月27日、神戸市総合福祉センターでひらかれ港湾労働者や尼崎クボタ訴訟の原告ら約20人が参加しました。

主催したアスベスト被害対策兵庫センター(赤木正夫代表)は06年結成。これまで神戸港湾労働者OBの訪問調査や、アスベスト健康管理手帳申請運動を実施しています。昨年5月には赤木さん(75)はじめ12人が申請し、全員が健康管理手帳を取得しました。

赤木さんはその後10月に受けた健康診断で肺ガンが見つかり、手術を受けました。現在は抗ガン剤治療をつづけています。検数労働者として41年勤務した全日検の企業責任を、裁判も視野に入れて問いただす決意です。この日は、赤木さんの闘いを支援するスタート集会です。

開会挨拶で同センターの北島隆事務局長は「発症の危険性がある潜在被害者はたくさんいるはず。今後も手帳申請を呼びかけていく」と強調しました。

赤木さんは、神戸港に出入港する荷物の数を現場に立ち会って数える検数作業を説明。「アスベストは穀類の袋を再利用した袋で輸入され、よく破れた。船底からモッコで巻き上げるとき網目から雪のようにバラバラ落ちた。ガーゼマスクを支給されたが夏は40度を超し、はずさないと仕事ができない。アスベストの危険性は当時まったく知らなかった」と語りました。

労災申請のため会社に昨年、アスベスト作業従事の証明を求めましたが、届いたのは在籍証明だけ。「企業の使用者責任を認めさせたい」と言います。

代理人の八田直子弁護士は「企業の安全対策不備による損害賠償を請求する。労災が認められても、認められなくても裁判は可能」と述べました。

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

兵庫労連:パナソニック問題で県に要請

補助金90億円 何のため

県に要請する兵庫労連(向こう側)

兵庫労連は、パナソニック尼崎工場の事業縮小計画中止を求め昨年、兵庫県に要請していました。その話し合いが1月24日、県中央労働センターでおこなわれました。

県からは労政福祉課産業立地室課長兼係長ら4人、兵庫労連からは津川知久議長はじめ6人が参加しました。

要請内容に対し県は「第1工場の設備を廃棄し、マレーシアに新工場を造る。1カ所に集約する計画。県としてもパナソニックに事業再開を強く求めていく」と回答しました。

また県は「パナソニックの従業員削減数はわからない。投資情報誌などから従業員は2500人いると推定。1000人削減は千葉県などを含め、薄型テレビ事業全体の数だ」と答えました。

企業に対し県は、正社員11人以上(①県内居住②雇用期間の定めのない③社会保険加入)を雇用すれば1人当たり30万円と設備投資への補助金を出していると説明。両方併せて今までに90億円をパナソニックに支払ったと回答しました。

津川議長らは「我われの把握では全国的に従業員1万人規模の削減計画がある。内部留保4兆円の一部をとり崩すだけで雇用は守れる」「中小企業が県内経済を支えている。地方自治体の大企業誘致政策は破綻している。社会的責任を果たしていない」と対策を求めました。

「パナソニック誘致による経済効果は?」の質問に「わからない」と回答。県が90億円もの補助金をパナソニックに支出しながら、一方的撤退に何の歯止めにもならないことが明らかになりました。

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

藤田佳代舞踊研究所「創作実験劇場」

届けたい 鎮魂の思い:2月25日

子どもも大人も心をひとつに踊る「届ける」

カーンカーン、カンカン、コンコンコン。

ダンサー26人が両手で打ち鳴らす下駄の音が響きます。モダンダンスの藤田佳代舞踊研究所が2月25日、創作実験劇場で上演する踊り「届ける」の稽古場です。

副題は「東北の地震と津波と原発事故で亡くなった数限りない命たちへの鎮魂のために」。藤田佳代さんの振付です。東日本大震災で失われたすべての生命に届けと、心を込めて踊ります。最年少は小学3年生です。

踊りは約15分。音楽を使わず、拍子木のように打つ下駄と足踏みでリズムを刻みます。公演当日はホール最前列にダンサーの家族ら男性10人が坐り、手拍子と足拍子で共演します。手で打つ音で地上にすんでいたものへ、足を打って地下にいたものたちへの鎮魂を表現します。

「汚染された地球をどうやって未来の子どもたちに手渡したらいいのか。私たちの世代が何とかしなければならない問題です」、藤田さんは語ります。

下駄は季節はずれのため、集めるのに苦労しました。そのなかの6足は、藤田さんが阪神御影駅近くの下駄屋で偶然見つけたものです。被災し廃業を決めた福島県の下駄業者が「これで最後」と作った桐の駒下駄でした。鳴らすと音に力強さがあります。

藤田さんのほか、8人のダンサーが新作を発表します。萩原陽子、灰谷留理子、寺井美津子、向井華奈子、平岡愛理、かじのり子のみなさんは自作をソロで踊ります。金沢景子さん「花だより」、菊本千永さん「なにごともなきこの眺め」は群舞です。どの作品も思いを「届ける」がテーマです。

創作実験劇場/2月25日(土)17時30分/「届ける―東北の地震と津波で亡くなった数限りない命たちへの鎮魂のために」「海」「花だより」ほか/東灘区民センターうはらホール/2,500(当日3,000)円/☎078・822・2066

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

憲法9条の会にしわき:新春のつどい

被災地支援の学生が報告

会場で集まった支援募金を鈴木さん(左)に手渡しました
「憲法9条の会にしわき」の新春のつどいが1月21日、西脇市民会館でひらかれ、22人が参加しました。

神戸外国語大学の学生で、被災地支援NPO団体スポアートかんさい事務局長の鈴木あゆ美さん=小野市在住=が「東日本大震災被災地の現状」と題し、パワーポイントで現地画像を紹介しながら報告しました。

現地で仲間と支援をつづけている鈴木さんは「被災者に炊き出しを提供するのではなく、持って行った材料で一緒に調理して食べることがボランティア活動のポイント」と説明しました。会話を交わすだけでも自立への手伝いになると語りました。

また「何か手助けをしようではなく、被災地を見に行こうという気持ちでもいいから参加してください。被災地でお金を使うだけでもボランティアになります」と述べました。

同9条の会が参加者に支援募金を呼びかけ、集まった約3万円が鈴木さんに手渡されました。

鈴木さんが県立三木高校に在学当時、担任教諭だった稲次寛さん(52)は「たくましくなった教え子を見て感動しました。私も春休みに生徒たちを被災地に連れて行こうと考えています」と話しています。


(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

原爆症認定慰謝料請求 大阪地裁が棄却

行政に遠慮した判決
副島圀義(寄稿)

1月20日の大阪地裁で、原爆症認定を極端に遅延させた国の責任追及(慰謝料請求)が棄却されました。

政府自身が「あれこれ難しい条件をつけずに、積極的に原爆症と認定する」としたケースだったのに、2007年8月に申請してから1年8カ月、それも「もう、これ以上待てない」と審査促進を求める裁判を起こすという時点での認定でした。

判決はわざわざ被爆者援護法の前文を引いて「高齢化した被爆者の申請を遅らせてはいけない」といいながら、「審査会の回数を増やすことは困難」「事務局の人員を増やすのにも限度」「申請が急増してたいへん」などなど、遅らせてきた国の「言い訳」を鵜呑みにしました。

長年にわたる被爆者の命がけの運動の結果、国が審査基準の見直しを迫られたことまでひきあいに「審査方針が変われば必要書類が変わるかもしれないから、作業中断もやむなし」と、国の肩を持ちます。

もっともらしいことを言った後で、「しかしながら」「とは言え」「…とも考えられる」などなど屁理屈で逆立ちした「結論」に落とす―「不当判決ではよくある作文」と言ってしまえば、それまでですが、司法のあり方も、民衆のたたかいの課題。「ほとんどの原爆裁判で勝訴してきたけれども、最近は行政に遠慮した判決が増えてきている。しっかり運動していかなければ、流れが変わってしまう…」。判決後の集会での、弁護団の方がたの発言を重くかみしめました。

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

ひなたぽっころりん(485)


(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

観感楽学

あと一月もすれば東北大震災から1年。復興の捗が行かない現状に胸が痛みます。巨大地震で甚大な被害であったとは言え、行政の手立ては遅すぎます▼さらに原発事故の現状と対策が心配です。政府は昨年末に事故収束宣言をしましたが、2号炉内の水が少なかったとか謎だらけで、真相は未だわかっていません▼一方で大飯原発(福井県)3、4号機のストレステストが再稼動妥当とは…。関電の机上検査を安全保安院が認めるという、国民から信用されていない人たちによる審査結果です。彼らは休止中の原発を順次再稼動させようとしているのです▼政府が最大供給可能電力量を少な目に発表していたことも、暴露されました。節電を叫び、電力供給が危機的状態にあるよう国民に思い込ませる情報操作に政府も一役買っていたのです▼ただ電力会社・経済界の圧力で休止している原発の再稼動を急いでいるとしか思えません。再生可能エネルギーの開発は急ぐべきですが、現有原発54基が全部停止しても電力はまだ間に合うのです▼若狭湾の原発は3月に検査のため全部休炉になります。この際、全部廃炉にするべきです。1月17日のメモリアル集会で神戸市在住の地震学の碩学石橋克彦氏(神戸大学名誉教授)が警告を発しています▼巨大地震発生の確率が高まっている時、活断層帯に近い若狭湾の原発群は極めて危険な存在です。近畿一円に取り返しのつかない惨事をもたらす可能性が大なのです。(TS)

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)