記事を検索

2012年10月14日日曜日

デンマークの環境政策

再生可能エネルギーへ着実


市原佐紀


原発問題が深刻化するいま、1985年に国民投票で「非原発」を宣言し、着実にエネルギー自給を達成しているデンマークが注目されています。

デンマークで環境・エネルギー問題が国策として位置づけられたのは93年から2001年の社民党と中道・社会自由党の連立政権下でした。約6%だった再生可能エネルギーの全エネルギーに占める比率は倍増、風力発電は電力の28%を供給するようになりました。

その後、中道右派政権に変わりましたが、進展しつづけ、昨年度統計で再生可能エネルギー比率23・6%、EU目標「20年までに20%」を既に達成しています。また現在電力の40%以上が風力です。

昨年末、政権が中道左派に戻り、より攻めの姿勢になりました。「50年までに全エネルギーを再生可能へ」が政府目標です。3月国会で、20年までに35%を再生可能にし、電力の50%を風力でまかなうことを決めました。

デンマークは国土も九州ほど、人口も兵庫県と同等の550万人の小国です。エネルギー自給には、北海油田から供給される石油と天然ガスも大きな比率を占めています。

こうした違いはあっても日本が学ぶことは多々あります。エネルギー問題は、天然資源を持つ国は逃れられるという事柄ではなく、根本的に社会問題であり、政治的な解決が必要です。そして解決策が効率的に働くためには、国民と産業界の参加が必然です。

デンマークは環境税が導入され、国民の支持を受け風力発電などの開発普及に国税が投入されています。産業界が環境ビジネスの国際競争力を早く身につけたことが、経済活性化にも繋がりました。

ことし6月EUが、電力会社のエネルギー使用量削減に関して拘束力のある取り決めをしたさい、デンマークの産業界は積極的に支持しました。

環境政策が国際的により充実したものになれば、新しいビジネスの創造に繋がるとのコンセンサスが国民と産業界の間にできているのです。

日本では税金が大量に原子力の開発に使われてきました。一時は世界一を謳っていた太陽光発電もいまはドイツとスペインに追い抜かれました。環境ビジネスは「小さな政府のもと、市場にまかせればよい」というやり方では成長しないことを物語っています。

デンマークで環境政策への幅広い支持は、政治の透明性や国民の政治意識の高さ、環境運動はもちろん、社会運動全般の発達などとも関係しています。国会選挙の投票率は常に80%を超え、若者も政治に積極的に参加し、年齢やステータスに関係なく対等に論争します。

現在投票権は18歳からですが、16歳にしたらどうかとういう案が何度も取り上げられています。

デンマーク人にとって政治はとても身近なものです。「デンマーク人が3人集まれば運動組織ができる」と言われるほど、共通の問題点を解決するため、共同する国民性があります。数々の社会運動組織が各分野のエキスパートとして活躍しています。

社会運動に関わる人にインタビューすると「国や政治家は敵ではなく、お互いに対話する相手だ」というスタンスに驚きます。デンマーク並みの国民と政府間の信頼は、簡単に得られるものではありませんが、日本でも市民社会のボトムアップが重要ではないでしょうか。対話を通じ、お互いの共通項を見出すスキルを国民1人ひとりが身に着けなければなりません。

(デンマーク国立オルボー大学博士課程研究員、デンマーク在住13年、神戸西区出身)

(2012年10月14日付「兵庫民報」掲載)

日付順目次