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2012年10月28日日曜日

憲法が輝く県政へ

不透明な国保会計

兵庫県保険医協会事務局次長 角屋洋光

国民健康保険(国保)は、住民の生命と健康を守るために国民皆保険の土台となる大切な社会保障としての医療制度です。保険者としては市や町が運営しており、県はほとんど当事者としての機能はありませんでした。

ところが、国保に加入する住民の構成が、無職や年金暮らしなどの人々が増えるに従って、国保財政が悪化してきました。高齢者の加入者が増加したことにより、医療費支出が増加する一方、保険料収入は「年収百万円以下」が半数という状態となり、医療費が上がっても保険料収入が上がらないという構造的な矛盾に陥ったからです。

こうした事態に対して、国がとった対策は、高齢者の医療制度を別制度にして、社会保険から支援金を拠出させることでした。つまり国庫負担の代わりに社会保険財政を充てようとしたわけです。

ところが、この方式も矛盾が噴き出して破綻しました。それは社会保険財政が、非正規雇用の増加によって、まともな保険料収入を得ることができなくなったからです。財界が勤労者の働かせ方を変更したことが、社会保障財政にはね返ってきたのです。

こうした、国は次の手段をとることにしました。それが、市町国保を県国保に一元化することです。

県下の国保は、例えば二〇〇八(平成二十)年度で赤字の自治体は六市町ありますが、黒字の自治体が三十三市町あります。全部を一本の国保にすれば、赤字は吸収されるだろうということです。

しかし、これは問題を先送りするにすぎません。国保は規模が大きいほど、保険料が高く財政が困難だという特徴があります。財政規模が小さい市町の黒字など、たかがしれています。

しかも、問題の根本には国が国庫負担を削減し続けてきたことが、大本の問題としてあります。表1は、二〇一〇(平成二十二)年度の兵庫の国保から作成した県全体の国保収入の内訳ですが、国庫支出金はわずか二四%にすぎません。一方、県支出金も四%しかありません。これでも以前よりは多くなったのですが、県支出金が増えたのには理由があります。それは、国庫支出金が削減されるときに、一部は交付金として県への支出になっているからです。「定率負担金は引き下げるが、その代わりに、県に対する交付金として支払っている、総額は一緒だ」というのが国の言い分です。

しかし、県国保をみれば、国庫支出金と県支出金をあわせても、二八%にしかなりません。保険給付金の半分は公費で責任をもつはずなのに、一体どうなっているのでしょうか。

国は、県単位に国保統一するために、先の通常国会で、すべての医療費支出を市町別にではなく、県単位でいわば再保険の形で負担する法「改正」を行いました。無理やりに県単位化を推し進める構えですが、住民に身近な市町の役割を無視して、県に役割を果たさせようとしても、もともとやる気のない県が本気で対策をとるとは考えられません。

現在の兵庫県の姿勢を示す一つのデータとして、福祉医療制度の取り扱いがあります。井戸県政になる直前、貝原県政最後の二〇〇一年度には、福祉医療費予算は総額で百八十三億円ありましたが、井戸県政になってから十一年後となる今年度の予算は、わずか百十二億円です。その差は七十一億円、四割ものカットです(表2)。対象となる高齢者の所得制限を厳しくするなどしてきた結果です。

県下市町の国保には、基金等の積立金を保有していますが、この間、二〇〇五年度に百二億円あった基金は、約六十八億円へと大きく目減りしてきています。個々の市町に対して基金の活用を働きかけることは必要ですが、先細りは明らかです。

国保改善の根本は、国の国庫負担削減政策に追随する県政か、国庫負担引き上げのために努力する県政なのかが問われています。


表1 県支出金はわずか4%

保険料(税)22%
国庫支出金24%
療養給付費交付金5%
前期高齢者交付金23%
都道府県支出金4%
一般会計繰入金8%
繰越金2%
その他12%


表2 福祉医療費は71億円減

2001年183億円
2012年112億円


(2012年10月28日付「兵庫民報」掲載)

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