2012年7月8日日曜日

憲法が輝く県政へ(5)

こども病院をなぜポーアイに〈上〉

兵庫県保険医協会副理事長 武村義人

井戸敏三兵庫県知事は、県立こども病院をポートアイランドに移転する方針を決定し、今年度予算に「基本設計・実施管理費」として5,840万円を計上した。しかし、医師会など医療関係団体をはじめ、患者団体や障害者団体からも疑問の声が相次いでいる。

最大の問題は、基幹病院を沿岸地に移転することの是非である。災害時に被災し、あるいは基幹病院として機能できないなどのリスクが高い場所へ、なぜわざわざ移転する必要があるのか、それはリスク管理に反するというものである。

東日本大震災においても、沿岸地にあった石巻市立病院が被災し機能できなかった一方、高台に移転した石巻赤十字病院は、被災せず被災者救援の医療活動の拠点となった。基幹病院を沿岸地に立地することの危険性が教訓として語られている。にもかかわらず、よりにもよって阪神・淡路大震災を経験した兵庫県で、なぜ沿岸地への移転を選択するのか。兵庫県がポートアイランドへの移転を計画した2011年1月以降の経緯を振り返ってみたい。

周産期医療守る最後の砦


県立こども病院は、「総合周産期母子医療センター」として位置づけられており、1970年に開設された後、1994年に周産期医療センター、2007年に小児救急医療センターが開設されている。「総合周産期母子医療センター」とは、出産前後の時期の医療を対象として産科と新生児科の両方が組み込まれ、相当規模の集中治療管理室などを備えた高度な周産期医療を行う施設。兵庫県下で該当するのは、唯一県立こども病院だけで、まさに周産期医療を守る最後の砦である。

こども病院は複数棟からなり、小児救急センターは開設から5年を経過したに過ぎないが、本館は築40年を経過し建て替えが課題になっていた。兵庫県は当初、現地建て替えの方針だった。

国の病院統廃合策が移転計画の契機に


ところが昨年1月28日に厚労省から「地域医療再生計画作成指針」の通知があり、これに対応する形で、急速に移転の話が進んだと、当時の病院局長は語っている。

「地域医療再生計画」とは、自公政権時代に病院の統廃合を進めるための手段として設けられ、民主党政権も引き継いだもの。その内容は「病院の統合再編及び一定の病床削減を行う場合」に「80億円~120億円以下」の国庫を交付するというもの。「一定の病床削減を行う場合」は「50億円超~80億円以下」、それ以外は「50億円以下」とされている。

これに目をつけた神戸市が、ポートアイランドの土地売却のために、こども病院のポートアイランド移転を県にもちかけたとの話もあるが、この点の経緯は明らかではない。

ともかく、兵庫県は大急ぎで「再生計画」を作成し、昨年6月16日に120億円という「再生計画」が想定した最高額で、厚労省に申請した。県の再生計画は、全体で13項目に及ぶが、県立こども病院の建て替え計画だけで、総事業費130億円、うち半額の65億円を基金負担(国庫負担)でまかない、残る65億円を県費負担するというもの。

この時点で、県がポートアイランド移転を目指していることは明らかだったが、その2カ月後の8月、兵庫県が県民への説明として実施した「『県立こども病院建替整備基本構想』 (案)パブリックコメント」では、ポートアイランドへの移転は、一言の記載もなかった。県病院局はその理由を「正式決定ではなかったから」としている。

次号に続く

(2012年7月8日付「兵庫民報」掲載)