住民の福祉を増進する知事に
兵庫県商工団体連合会会長 磯谷吉夫
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全国中小業者決起集会(1月)のデモ(前列中央が筆者) |
「社会保障と税の一体改革」の地方公聴会が6月4日、神戸市内で開催されました。傍聴できた方の報告によると、井戸敏三知事は「地方財政にとって安定財源となる消費税増税が必要」と発言したとのことです。
6日、県は市町長・議長などに、「引き上げに係る地方財源は地方の社会保障の充実に極めて大きな意義を持つ」として、「一体改革」への住民の理解を促進する取り組みを要請しています。
3月に、「3・13実行委員会」が行った、消費税増税反対を求めた要請でも、知事は「国民全てが受益者となり得る社会保障を支える経費は、あらゆる世代が広く分かち合うことがふさわしい」、「消費税・地方消費税の引き上げを含め…積極的な提言を行う」と回答しています。
そこには、行政が責任を持つべき社会保障の理念はなく、消費税増税による県民生活、地域経済への打撃を考慮すべき立場からもほど遠いといえます。
今回の消費税増税がとりわけ大問題なのは、東日本大震災の被災地で商売、暮らしの再建に懸命に取り組んでいる被災者と地域経済に冷水を浴びせることです。
97年の消費税の増税をはじめとする9兆円もの国民負担増は、回復しかかっていた景気を一気に悪化させるとともに、阪神・淡路大震災(95年)の被災者にも容赦なく襲いかかりました。価格に転嫁できない事業者は、身銭を切っての納税を迫られ、税金の滞納も激増しました。
県内の建設業者は「自宅再建と消費税増税が重なり、97年2~3月は『今なら3%お得』の言葉に、みんなが駆け込みで購入し、価格破壊につながった。まだ景気がよかったが、消費税の増税後、深刻なデフレが続き、購買力が低下した」と、消費税増税が被災地の復興を妨げたと話しています。
この痛切な教訓に背をむけ、増税を推進する井戸知事の態度は決して許されません。
井戸知事は、増税による地方財源の充実を唱えていますが、これは今国会の論戦ですでに破たんしています。増税前の96年度と2010年度で地方消費税は2.6兆円増えているのに、地方税は1兆円落ち込んでいるのです。増税により地方消費税が増えても、景気の悪化で税収は減っているのです。
政府・マスコミの一体となった増税キャンペーンにもかかわらず、直近の世論調査でも増税「反対」が56%(朝日)、57%(毎日)となっています。
住民の声に耳を傾け、地方自治法に定められた「住民の福祉の増進を図る」立場にしっかりと立つ知事をみんなでつくっていきましょう。
(2012年6月17日付「兵庫民報」掲載)