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2012年2月5日日曜日

公立高校の学区再編を考える―識者・関係者に聞く⑤

神戸市も事実上、学区拡大推進
池見宏子(DCI神戸セクション)

パブリックコメント

「学区再編」についてのパブリックコメントで、神戸市民として次のような要望を出した。

“再検討、撤回されることを強く要望”
①特に、神戸市民として、現在でも広域の格差のある通学区域で、問題が深刻な状況の上に、新学区案では淡路を含めて1学区にするというのはあまりにも無謀。
②政令都市、神戸市にある高等学校を、県立高校ということで、全県下の政策の中に一緒に入れることは、神戸市の政策、若者を育成するのに「地域の連携を大事にする」趣旨から離れ、顔の見える地域で、若者が育つ場、地域での若者たちとの協働、連携が難しくなる。
③何より、国連子どもの権利委員会第3回最終所見が指摘した「子どもの最善の利益を最優先にする」という視点で、過度な競争が激化し、教育格差がより激しくなる点でも、再検討のうえ、撤回を強く要望する。

《学区拡大》責任者の話でわかったこと

《学区拡大》を推進する責任者の声を聴く機会があった。「高等学校学区変更」について、その検討委員会委員長である梶田叡一氏が説明をする会だ。まるで梶田氏個人の講演会のような雰囲気で、説明会2時間の半分以上を費やした。

しかし説明の中身を聞いて分かったことは、彼は、かつて、文部省の中央教育審議会教育課程部会長を務め、日本の教育改革を進めてきた張本人であり、京大教授、京都ノートルダム女子大学長、兵庫教育大学長を歴任、現在は環太平洋大学長に就任、そして心理学専攻と、その専門性を強調しながら、これまでの教育改革の延長線上の、「兵庫県公立学校通学区域検討委員会委員長として学区を少なくする先頭に立っている…」ということである。

ほとんど参加者との意見交換の時間を取らずに終わった一方的な説明会だった。せっかくの意見交換を期待して参加したので、残って主催者の県教委に「梶田講師に伝えてほしい」と次のように訴えた。

―あなたが行ってきた教育改革の結果が、不登校、リストカット、いじめ、自殺まで生み、子どもたちを苦しめている認識がないのは残念だ。
高校生が多様で個性的ではなく、子どもたちは、生まれながらにして、多様で個性的。本来なら就学前教育から、一人ひとりと向き合った教育環境が必要なのに、そして、少子化になっているのに、実態は、就学前の子育て環境、小中学校の教育環境は厳しいままで、高等学校でさらに校区を広げて競争をますます激化させる「校区の変更」は、事態をより悪化させることになる。
国連子どもの権利委員会が一昨年に出した第3回最終所見では、「高度に競争主義的な学校環境が、就学年齢にある子どもの間のいじめ、精神的障害、不登校・登校拒否、中退および自殺に寄与しうることを懸念する」とし、「このような競争を激化させる日本の教育システム全体を根本的に変えること」を日本政府に勧告している。
それに反する今回の改革は、すぐに白紙に戻してほしい―と。

神戸市との懇談で

その後、DCI神戸セクションとして、神戸市関係当局と懇談会を持ち、重ねて中止を求めた。

神戸市の回答は、「3年に及び検討、普通科以外はもともと全県校区、高校は来ている生徒と地域が連携しているから若者が地域で育つ神戸市の施策に反していない。複数志願制だから、意に添わず、遠くの学校へ行かされることがないように中学校とも連携し、県教委へ要望を出している。意に沿わない通学の場合、通学費の支給も考慮。自分の行きたい高校へという要望がある」というもの。

神戸市として「学区拡大」を事実上推進する姿勢が浮き彫りになった。

私たちの「学区拡大によって選択肢が増えるのは学力上位数%のみ。競争にも参加できない子どもたちがますます増え、地域格差、学力格差をより大きくする」との指摘に返答はなかった。

神戸市民として更なるチェック体制を!

神戸新聞によると、兵庫県下の教育長にアンケートをとった結果、2/3は反対、どちらかといえば反対になり、積極的な賛成は、神戸市と加古川市のみだった。

神戸市は、兵庫県の中にあって、その姿勢は、市民に対していつも曖昧で、結果的に行政の思うままに進行してしまう傾向にある。このたびも神戸市は2015年に向けて早々と現在の6年生に「学区拡大」の知らせを行ったという。

神戸市民として、この「学区拡大」が子どもたちの新たな生きづらさにつながらないよう、「どの子も学ぶ権利を保障する」視点で、さらにチェック機能を働かせることが求められる。

(2012年2月5日付「兵庫民報」掲載)

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