日本共産党議員団の追及で明らかに
神戸市は、借上公営住宅入居者に、借上期間二十年で、転居を求めるという姿勢を変えていません。
日本共産党神戸市会議員団は、入居者へのアンケートや訪問、民間借上住宅オーナーにもアンケートとともに懇談も行いました。国土交通省や都市再生機構(UR)への要請などもしています。矢田立郎市長には、合計三回にわたって、継続入居できる対策をとるよう申し入れています。議会でもアンケート結果や調査で入手した多くの資料をもとに、神戸市の主張をひとつひとつ突き崩してきました。市長らの議会答弁も矛盾が目立っています。すでに、神戸市の「入居者追い出しの根拠」はことごとく崩れています。
神戸市が転居を求める理由をまとめると―①財政負担が大変②借上期間が二十年で所有者に返還する契約③住宅によって対応を変えると不公平になる④二十年の期間で入居の許可を出している⑤災害公営住宅入居者の三割が被災者以外―などです。また、入居者がようやく築いたコミュニティを破壊する、との批判に対して「グループでの転居も考慮する」ともしていました。
市営住宅削減の標的に
神戸市が借上住宅の返還方針を打ち出したのは、市営住宅を七千戸減らすとした市営住宅第二次マネジメント計画。三千八百戸ある借上災害公営住宅を、市営住宅を減らす標的としたのです。
市の負担は二億五千万円程度
財政問題では、家賃収入と借上料との差額で、十五億円が市税など一般財源の負担になっている、としています。しかし、そのうち五億円は交付税措置がされており、国から神戸市に入っています。家賃減免に必要な費用は、入居者が他の市営住宅に移転しても必要となります。URの家賃値上げによる負担も、URと協議すれば解決策も出てきます。現に、民間オーナーに対しては借上料を引き下げています。神戸市の負担となると見られるのは
二億五千万円程度です(表2)。
表1 借上住宅の収支(2009年度決算)
歳出
歳入
表2 一般財源(合計24億5千万円)の内訳と日本共産党議員団の見解
- 家賃対策補助相当額(05年度基準)の2/3の10億円。これは国庫負担として国から入る。
- 家賃対策補助相当額(05年度基準)の1/3の5億円。これは市負担だが、交付税措置により国から入る。
- 空室分の借り上げ分 2億円。これは常時募集すれば解決する。
- 借り上げ料が補助対象上限(近傍同種家賃)を超える分の2億5千万円。これだけは神戸市負担でやむを得ないと思える。
- URの家賃上昇分の1億5千万円。これはURと交渉するべき。民間オーナーには借上料(家賃)を引き下げている。
- 従前居住者住宅への一般入居者家賃差額の1億円。これは他の公営住宅で対応しても必要な経費。
- 減免部分などの2億5千万円。これも他の公営住宅で対応しても必要な経費。
復興計画でも「恒久住宅」と位置づけ
「二十年の契約期間」という点ですが、神戸市の復興計画で「恒久住宅」と位置づけられており、当初から「期間限定の住宅」とはなっていません。
また、借上期間の終了以降も借り上げを継続する住宅があることや、入居期限を明示していない住宅があることなども判明しています。
この事実を突きつけられた神戸市は「住宅ごとに(継続入居できたりできなかったりと)対応が変わると不公平(だから、全員出てもらう)」という議論を持ち出しています。
しかし、「不公平」を理由に、こうした住宅の入居者を追い出すことなど、到底できるものではありません。入居者に居住権はないとでもいうのでしょうか。
また、日本共産党議員団が実施したアンケートでは、入居者もオーナーも「継続されるだろうと聞いた」「二十年という期限は聞いていない」などと答えた人がたくさんあります。さらに、神戸市が〇七年に民間オーナーを対象に実施したアンケートも、継続を前提としたような内容になっています。
こうした経過からも、神戸市が「二十年の契約」を盾に、入居者を追い出したり、民間オーナーに一方的に返還するという根拠は崩れています。
「市営住宅」として入居したもの
災害公営住宅の入居者の内、三割が被災者以外というのも、追い出しの根拠にはなりません。市営住宅への入居を希望する市民は、借上住宅かどうかを理由に申し込んでいるわけではないのです。最初から入居している人たちもそうですが、自分たちが入居することになった市営住宅が、たまたま「借上」だったというだけなのです。
同じ団地で県営住宅は継続
さらに、兵庫県は「棟単位で買い取りを検討」とされています。借上県営住宅と借上市営住宅が混在する団地では、県住入居者はそのまま継続入居でき、市営住宅入居者は、転居を迫られるという、まさに不公平な対応が生じることになります。
神戸市がコミュニティ対策として言い出した「グループでの移転」などは、近隣にある公営住宅の数をみれば、夢物語にすぎません。これは「希望する住宅に転居してもらう」などとしていることにも共通します。
あくまで退去迫る姿勢崩さぬ市長
予算議会の総括質疑で日本共産党議員団が市の根拠が破綻したことを指摘し、「病気がちな高齢者など、転居すること自体が困難な人たちにあくまで、転居を迫るのか」と市長に迫りました。
ところが、矢田市長は「震災のどさくさの時に協定を結んだ事例がある。その後、締結した実際の契約では、期間を二十年と明記して契約を交わしている。入居者と市の関係では、入居者には、二十年の借り上げということで入居の許可を出している。他の借上住宅の入居者と変わりはない。そうした点で、他の借上住宅の入居者との公平性の観点がある」「三千八百戸ほどある住宅で、入居されている方々に公平にお話しさせていただきたい」などとあくまで、退去を迫る姿勢を崩していません。
(2011年3月20日付「兵庫民報」掲載)