二月二十三日に開かれた神戸市議会本会議で、日本共産党議員団を代表して西下勝議員が質問にたち、雇用、住宅リフォーム助成、国民健康保険、敬老パス、借り上げ災害公営住宅、神戸空港、医療産業都市問題などについて、矢田立郎市長らの政治姿勢をただしました。西下議員は、新年度予算案について、「市民の暮らしを応援する」予算になっていないと指摘。福祉や市民サービスを削減する一方、神戸空港や海上アクセスなどムダづかいをすすめていることをあげ、暮らしと福祉を応援する政治への転換を求めました。
雇用助成金の創設、住宅リフォーム助成実施を
雇用問題について西下議員は、医療産業都市構想や土地造成による企業誘致など、「呼び込み型」に偏重している姿勢を改め、地元中小業者が高卒者や不安定雇用で働いている人などを正規雇用すれば助成する「雇用助成金制度」などの創設を提起しました。
三菱重工神戸造船所の商船部門の撤退については、市長自らが三菱重工業東京本社と直接交渉するよう求めました。
神戸市内の中小業者の仕事確保については、全国的にも注目されている住宅リフォーム助成制度の実施を要求しました。
秋田県や相模原市など全国百八十をこえる自治体に広がり大きな経済効果をあげており、特に阪神・淡路大震災から十七年目になる神戸市では、震災直後に建設した住宅が改修時期を迎え、住宅リフォーム助成制度への期待が大きいとして、実施を決断するよう迫りました。
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答弁で市長らが「現段階では一般的なリフォームではなく、耐震、バリアフリー、省エネなど住まいの基本部分に助成することが公共としては意義があると考えている」と答えたのに対し、西下議員は再質問で「住宅リフォーム助成は国会でも菅総理が交付金を活用して進めるよう答弁している」と指摘し、実施を強く求めました。しかし、再答弁でも「一般的なリフォーム助成を実施している自治体も一部にはあるが、どんなリフォームにでも助成となると、個人資産形成部分になり、趣旨にあわない」などと、市長らはまともに答えようとしませんでした。
国保への繰り入れ増やせ、子どもの通院も無料に
国民健康保険については、日本共産党神戸市議団が実施した「市民アンケート」で「税金や医療費・国保料などの軽減」を求める声が最多だったことを紹介しました。
国保料が高すぎて払いたくても払えない市民が増えている実態を指摘し、保険料を引き下げるため、法定外繰り入れを増やすよう迫りました。
政令市平均では一人当たり約一万四千円の法定外繰り入れが行われていますが、神戸市は三千四百七十円にすぎません。西下議員は、政令市平均額を繰り入れすれば、一人あたり一万円の引き下げが可能だと指摘し、増額を求めました。
子どもの医療費については、議員団のアンケートでも、全体で四割、四十代以下の子育て世代では七割が「子どもの医療費の無料化」を求めているとの結果を示し、拡充の必要性を強調。新年度予算案で小学校六年生まで助成対象を拡大するとされているものの、市民の要望からは不十分であり、通院も含めて中学校卒業まで無料とするよう求めました。
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市長らは「法定外繰り入れが平均よりも少ないことで国保料が高いとはならない」と答えました。新都市整備資金は敬老パスにこそ生かそう
西下議員は、多くの市民が敬老パス制度を「無料に戻してほしい」と望んでいることが議員団が実施したアンケートの結果にも表れていることを紹介。
また、敬老パスの有料化・値上げによって、敬老パスの発行枚数は増えているものの、利用者は有料化前の半分近くに減っていることを指摘しました。
こうした実態から、高齢者の外出支援という役割が果たせていないとして、本来の敬老パス制度に戻すため、空港に投入しようとしている新都市整備事業会計の資金は、敬老パス制度にこそ活用すべきだと迫りました。
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しかし、市長らは、「交付枚数が増え、交通事業者の理解がないと維持できない。利用者の一部負担はやむを得ない」などと答弁しました。借り上げ公営住宅継続へ市長は決断を
民間借り上げ災害公営住宅について、西下議員は、「二十年間の契約期限」を盾に転居を迫る神戸市の姿勢を厳しく批判しました。
神戸市自身が策定した「神戸の住まい復興プラン」(九六年)でも「被災者の恒久住宅への早期移転を図り、公団住宅や民間賃貸住宅の借上げ等に鋭意取り組み、被災者が一日でも早く恒久住宅に落ち着き、ぬくもりと安らぎの中で暮らせるよう取り組んでいきます」と、明確に「恒久住宅」として位置づけている点を強調。被災者に転居をせまる根拠はないと追及しました。
入居者もオーナーも「契約の継続」を望んでいるとの議員団アンケートの結果も示し、入居者が安心して住み続けられるよう「買い取り」「契約延長」などを決断すべきだと迫りました。
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質問に対し、市長らは「緊急措置として実施した。契約を結べば延長は可能との国の見解は確認したが、補助率が三分の二から二分の一になり、市の負担が増える」などとと答弁しました。西下議員は再質問で、「宝塚市長は、直接入居者と話をして(継続入居できる対策を)決めている。数の問題ではない。市長が決断すべきことだ」「借り上げ入居者からのアンケートに、ふるえる字で『人生さいごまでお世話になります』と書かれている。この思いをくんで施策をすすめるべきだ」と批判。
地方自治法の精神で対応するためにも、借り上げ公営住宅の継続をと再度、強く市長らに求めました。
市民の財産を空港赤字の穴埋めに使うな
開港から五年が過ぎた神戸空港は、マスコミでも「独立採算破綻」などと報じられているように、「赤字空港」ということが明らかになっています。
ところが、神戸市は「空港で市民負担をかけない」との市民との約束を破り、新年度予算案で、新都市整備事業会計から空港事業に巨額の費用を支出しています。
「支援」内容は、神戸空港管理収支の赤字穴埋めに三億八千万円、スカイマークの格納庫用地代の立て替えなどで十五億八千万円、ターミナル会社支援に約一億五千万円です。いずれもこれまでの開発団地の造成・売却で得た利益を積み立てた新都市整備事業会計の資金です。
西下議員はこうした点を示し、神戸空港がすでに「市民の財産を食いつぶす大きなお荷物」になっていると指摘。「新都市整備事業会計の資金は市民共通の財産。空港の赤字穴埋めに使うのをやめ、市民の暮らしの応援に使うべき」だと迫りました。
また、医療産業都市構想に関連して、神戸市が神戸国際フロンティアメディカルセンター病院の土地賃料を減額するなど、支援しようとしていることを批判。医師会との合意も得られていないことも指摘し、支援中止を求めました。
西区井吹北小建設など市民要求も一部実現へ:神戸市予算案
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市民要求の実現へ「子育てアンケート」などにとりくむ
日本共産党市議団=昨年五月
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過大規模校となっていた西区の井吹東小学校の過密を解消するため、「(仮称)井吹北小学校」が建設されることになりました。
保育所待機児童解消では、不十分ながら、民間保育所の新設も含めて四百六十人の受け入れ枠が拡大されています。また、病児・病後児保育も一カ所増やしています。一時保育は、百二十九カ所から百三十二カ所に増えています。
子どもの医療費助成は、現在、小学校三年生までとなっている外来助成が、小学校六年生まで拡充されました(四年から六年までは、外来三割負担が二割負担に)。
小規模事業所向けの信用保証料補助について、融資額五百万円以下の全額を公費負担とする制度が継続されます。
分別収集のために、全世帯向けワケトンカレンダーが作成されます。
摩耶ケーブルも存続の方向で調査が行われます。夜型観光ルートの開拓なども予算化されています。
(2011年3月6日付「兵庫民報」掲載)