二〇一一年度県予算案:「厳しさ」を強調するが
予算案の規模は、一般会計で二兆一千二百八十五億円(前年比3・4%減)、特別会計八千七百十八億円(前年比10・3%減)、企業会計千七百億円(前年比2・0%増)、合計三兆一千七百三億円(前年比5・2%減)となっています。
法人の税収はのびるものの、地方交付税等が減額されており、県は「厳しさ」を強調。一般事業費を一割カットする「第二次行革」実行予算となっていますが、一部に運動の反映も見られます。
また、麻生自公政権と、政権交代後の民主党政権下で、国補正が連続し、その財源による事業や経済対策基金(八百二十六億円)も、様々な使途で活用されます。県民のための事業がすすむようにチェックも必要です。
県民の運動と日本共産党議員団の論戦の成果
日本共産党が県民と連携し署名など運動をすすめてきたこども医療費助成は、通院について小学校六年生まで拡大。
また、児童虐待などに対応する県こども家庭センターの体制強化、公営住宅へのLSA(高齢者の生活援助員)の二十四時間配置モデル事業も実施されます。
深刻な未就職者問題で、百人の臨時県職員採用の予算も計上されています。
「ダムの実質中止」となった武庫川では総合治水対策として、下流の築堤と新規遊水地事業が盛り込まれました。
大企業への補助金や不要不急の事業は温存
パナソニックなど大企業立地補助金は削減なく「聖域」として三十七億五千万円を計上。
日本共産党が不要・不急の事業として指摘をしている播磨臨海地域道路計画の調査費として、関連道路も含めて一千万円、東播磨南北道路は、八幡南以北の第二期事業のための環境調査の予算が計上されています。
現在十六ある県立高校の通学区の拡大をすすめるため検討委員会の最終報告を準備中で、説明会も開かれました。「新たな通学区」のための「リーフづくり」の予算も。
「通学が困難」「受験競争がますますひどくなる」など、各地での懸念の声を無視してすすめる姿勢です。
経済対策基金の主なもの
・安心こども基金
・妊婦健康診査支援基金
・緊急雇用就業機会創出基金
・社会福祉施設等対策基金
・介護職員処遇改善基金
・私立高校授業料減免基金
県「第二次行革プラン」:開発のツケ県民に押し付け
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県議会に請願する西武庫公園の存続を 求める会の人々と日本共産党県議団 |
県民からの批判をあびている「こどもや障害者の医療費助成の所得制限強化」は、来年度以降に先送りとなりました。
しかし、西武庫・明石西公園などの県立都市公園の廃止方針は、撤回されていません。
財政難を理由に、県民にさらなる〝痛み〟を押し付けようとしていますが、県の五兆円を越える借金の中身をみると、41%が建設・農業などの土木事業、12%が学校や施設など、18%が臨時財政対策債(地方交付税の振り替え制度で、国が返済分を措置する)となっています(グラフ)。
よく「社会保障が財政を圧迫している」と言われますが、借金の肥大化の原因は、主に九〇年代に「自治体の開発会社化」がすすみ、兵庫県が大規模開発をすすめたせいです。
この借金の返済がふえ、財政が硬直化しているために、県民にツケを押し付けているのです。
グラフ=二〇一一年度末 県債残高の主な内訳
土木事業 41%
臨時財政対策債 18%
学校や施設など 12%
その他 29%
TPP加入想定の対策か
日本共産党県委員会・県議団は昨年末、「TPP(環太平洋連携協定)の兵庫県への影響調査と県民への公表、政府への反対申し入れ」を県に強く求めました。
これに対し県は、一月末にやっと影響試算結果を発表しました。農業生産額が半減するなど兵庫の農業に壊滅的な被害をあたえるものでした。
しかし、兵庫県の予算案では、取り組みを強めている農業関係者と連携して、政府にTPP参加反対を迫るのではなく、「国内外の競争に勝てるひょうごの農業」「輸出促進」「ブランド指導」「経営能力強化」など、TPP加入を想定して対策をするかのような新規施策が並んでいます。
兵庫県議会での「TPP加入の慎重な対応」を求める意見書にも逆行する予算案ではないでしょうか。
(2011年2月27日付「兵庫民報」掲載)