大企業呼び込み方式は破綻
兵庫県下で大手企業の工場撤退表明が相次いでいます。三菱重工神戸造船所の商船部門撤退計画にはじまり、森永(尼崎)、アサヒビール(西宮)、雪印(伊丹)など景気の後退を理由にした国内工場の集約ですが、働く人や地域経済にとって影響は少なくありません。
各企業の自分勝手を許さない取り組みと同時に、兵庫県政が、これまでの「大企業が栄えれば地域も潤う」式の発想ではなく、地域に根ざした産業施策への脱却ができるかが問われています。
その点で象徴的なのが、パナソニック一社(四工場)に二百十八億円(二〇一七年度までの予定)も補助する全国的にもめずらしい「天井知らず」の企業誘致・立地補助金です。(左のグラフは二〇一一年までの補助額)
派遣や期間工など、不安定雇用ばかり
建設費用数千億円もの工場誘致が決まった当初は「歓迎ムード」だった尼崎や姫路などの地元の人々も、仕事の付き合いはほとんどなく、雇用も請負や派遣、現在は二年数カ月の雇用期限の限定された期間工ばかりであることを知り、落胆が広がっています。
しかし、日本共産党が県議会で「パナソニックでの期間工の大量首切りをやめるように申し入れよ」と迫っても、井戸知事は、「検討します」「安定した雇用を求めている」との一般的な答弁で、「首切りやめよ」と言うことができません。
県民の税金から補助金を出している企業に対してすらこの態度ですから、その他の大企業へも甘い態度にならざるを得ません。
肝心の雇用施策においても、雇用対策三者会議(県、連合兵庫、経営者協会)という「労使協調」路線で、経営者側の立場を尊重してすすめているのです。
道州制で国際不況直撃の構造に
いま関西財界は、大企業の「国際競争力の強化」を名目に、大阪湾を中心としたインフラ・基盤整備を大規模に推進するため、昨年発足した関西広域連合や「道州制」をすすめようとしています。
この方向では、地域経済に根を下ろさない大企業がますます栄え、国際不況で打撃を大きく受ける産業構造に拍車がかかるだけです。
小規模企業は「景況感」悪化
大企業中心の施策の一方で、必然的に中小企業対策がおそまつになっています。
もともと兵庫県は、九〇年代まで製造業が三割を占め、近畿全体の製造業比率二割(全国平均並)に比べ、「ものづくり」を担う県でしたが、不況や下請け単価の切り下げなどで、その製造業も大変です。
兵商連の「中小商工業研究所」の二〇〇九年十月~一〇年三月調査によると、比較的規模の大きい中小企業には回復の兆しがあるが、小規模企業は逆に、景況感がマイナス54からマイナス60と悪化しており、格差が広がっている実態が浮き彫りになっています。
住宅リフォーム助成など、中小業者応援を
パナソニック一社への補助金二百十八億円に比べ、中小企業対策予算(融資除く)は、全体に対し七十億円(二〇一〇年度県予算では0・36%)と、あまりに少なすぎます。
秋田県で実施、山形県なども実施の方向の「住宅リフォーム助成制度」。県下でも明石市、福崎町などで大きな経済波及効果をあげて注目されています。その実施を求め全建総連が県議会に請願を出すなど運動が広がっていますが、兵庫県の制度化や実施市町を広げていくことが必要です。
財源的にも、国の補正予算や交付金(社会資本整備総合交付金)を有効に使えば可能であり、耐震化やバリアフリーともあわせ、地域にある工務店、電気店など、広範な中小業者の「仕事おこし」として、大きな成果となることは間違いありません。
大企業に社会的責任求める日本共産党
どんな大企業に対しても、厳しく社会的責任や正社員化などを求め、兵庫県に対し、ゆきすぎた企業立地補助金の中止・見直しを求めることができるのは、ルールある経済社会の展望・路線(綱領)をもっている日本共産党ならではの活動です。
逆に自民・民主は、県政の与党として、「立地企業に対する補助金は極めて有効」(自民・加茂県議、〇八年二月二十六日)、「本県の企業誘致の対応は、企業側より高い評価」(民主・吉本県議、〇七年二月二十一日)など、手放しで評価しています。
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いっせい地方選挙は、古い「大企業呼び込み式」の産業施策の自民・民主・公明の議席か、それとも、古い政治を転換し、住宅リフォーム助成など、地域の中小企業応援、正社員を基本とする雇用対策への転換をすすめる日本共産党の議席を伸ばすかが問われています。
グラフ「兵庫県の産業集積促進補助金」のデータ
年度 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 |
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総額 | 16億4千万円 | 20億1千万円 | 26億3千万円 | 19億1千万円 | 29億2千万円 | 37億円 | 37億5千万円 |
パナソニックへの補助額 | 12億5千万円 | 10億円 | 18億4千万円 | 10億円 | 15億円 | 25億円 | 25億円 |
(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)