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2011年2月20日日曜日

検証:県政と県議会:雇用と地域経済

二〇〇九年の知事選挙で大きな争点となった「破格の企業誘致補助金」―選挙の特集記事でも「そろそろこの手法を見直すべきかもしれない、ある県幹部はつぶやいた」(「朝日」)と書かれるなど破綻は明らかですが、「県行革」で県民には痛みを押し付けながら、現在もそのまま継続され、いっせい地方選挙でも争点となっています。

大企業呼び込み方式は破綻

兵庫県下で大手企業の工場撤退表明が相次いでいます。三菱重工神戸造船所の商船部門撤退計画にはじまり、森永(尼崎)、アサヒビール(西宮)、雪印(伊丹)など景気の後退を理由にした国内工場の集約ですが、働く人や地域経済にとって影響は少なくありません。

各企業の自分勝手を許さない取り組みと同時に、兵庫県政が、これまでの「大企業が栄えれば地域も潤う」式の発想ではなく、地域に根ざした産業施策への脱却ができるかが問われています。

その点で象徴的なのが、パナソニック一社(四工場)に二百十八億円(二〇一七年度までの予定)も補助する全国的にもめずらしい「天井知らず」の企業誘致・立地補助金です。(左のグラフは二〇一一年までの補助額)

派遣や期間工など、不安定雇用ばかり

建設費用数千億円もの工場誘致が決まった当初は「歓迎ムード」だった尼崎や姫路などの地元の人々も、仕事の付き合いはほとんどなく、雇用も請負や派遣、現在は二年数カ月の雇用期限の限定された期間工ばかりであることを知り、落胆が広がっています。

しかし、日本共産党が県議会で「パナソニックでの期間工の大量首切りをやめるように申し入れよ」と迫っても、井戸知事は、「検討します」「安定した雇用を求めている」との一般的な答弁で、「首切りやめよ」と言うことができません。

県民の税金から補助金を出している企業に対してすらこの態度ですから、その他の大企業へも甘い態度にならざるを得ません。

肝心の雇用施策においても、雇用対策三者会議(県、連合兵庫、経営者協会)という「労使協調」路線で、経営者側の立場を尊重してすすめているのです。

道州制で国際不況直撃の構造に

いま関西財界は、大企業の「国際競争力の強化」を名目に、大阪湾を中心としたインフラ・基盤整備を大規模に推進するため、昨年発足した関西広域連合や「道州制」をすすめようとしています。

この方向では、地域経済に根を下ろさない大企業がますます栄え、国際不況で打撃を大きく受ける産業構造に拍車がかかるだけです。

小規模企業は「景況感」悪化

大企業中心の施策の一方で、必然的に中小企業対策がおそまつになっています。

もともと兵庫県は、九〇年代まで製造業が三割を占め、近畿全体の製造業比率二割(全国平均並)に比べ、「ものづくり」を担う県でしたが、不況や下請け単価の切り下げなどで、その製造業も大変です。

兵商連の「中小商工業研究所」の二〇〇九年十月~一〇年三月調査によると、比較的規模の大きい中小企業には回復の兆しがあるが、小規模企業は逆に、景況感がマイナス54からマイナス60と悪化しており、格差が広がっている実態が浮き彫りになっています。

住宅リフォーム助成など、中小業者応援を

パナソニック一社への補助金二百十八億円に比べ、中小企業対策予算(融資除く)は、全体に対し七十億円(二〇一〇年度県予算では0・36%)と、あまりに少なすぎます。

秋田県で実施、山形県なども実施の方向の「住宅リフォーム助成制度」。県下でも明石市、福崎町などで大きな経済波及効果をあげて注目されています。その実施を求め全建総連が県議会に請願を出すなど運動が広がっていますが、兵庫県の制度化や実施市町を広げていくことが必要です。

財源的にも、国の補正予算や交付金(社会資本整備総合交付金)を有効に使えば可能であり、耐震化やバリアフリーともあわせ、地域にある工務店、電気店など、広範な中小業者の「仕事おこし」として、大きな成果となることは間違いありません。


大企業に社会的責任求める日本共産党

どんな大企業に対しても、厳しく社会的責任や正社員化などを求め、兵庫県に対し、ゆきすぎた企業立地補助金の中止・見直しを求めることができるのは、ルールある経済社会の展望・路線(綱領)をもっている日本共産党ならではの活動です。

逆に自民・民主は、県政の与党として、「立地企業に対する補助金は極めて有効」(自民・加茂県議、〇八年二月二十六日)、「本県の企業誘致の対応は、企業側より高い評価」(民主・吉本県議、〇七年二月二十一日)など、手放しで評価しています。


いっせい地方選挙は、古い「大企業呼び込み式」の産業施策の自民・民主・公明の議席か、それとも、古い政治を転換し、住宅リフォーム助成など、地域の中小企業応援、正社員を基本とする雇用対策への転換をすすめる日本共産党の議席を伸ばすかが問われています。


グラフ「兵庫県の産業集積促進補助金」のデータ
年度 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
総額 16億4千万円 20億1千万円 26億3千万円 19億1千万円 29億2千万円 37億円 37億5千万円
パナソニックへの補助額 12億5千万円 10億円 18億4千万円 10億円 15億円 25億円 25億円


(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)


レッドパージ訴訟が結審、判決は5月26日 神戸地裁

1950年7月、連合国軍最高司令官マッカーサーが出した書簡を根拠に、共産党員とその支持者が職場から追放されたレッドパージ。その無効と名誉回復、損害賠償を求める兵庫訴訟が2月10日、結審しました。

報告集会で挨拶する原告の安原清治郎さんと(その右から)川崎義啓さん、大橋豊さん、奥は弁護団

原告は、川崎義啓さん(94)=旭硝子=、安原清治郎さん(89)=川崎製鉄=、大橋豊さん(81)=神戸中央電報局=の3人です。09年3月、国を相手どり神戸地裁に提訴しました。

神戸地裁第6民事部(矢尾和子裁判長)で9回の弁論がひらかれました。昨年5月には原告3人の尋問がおこなわれました。当時の職場の闘い、職場追放後の家族の悲惨な状況が語られました。

同11月には、原告側証人として明神勲北海道教育大学名誉教授が証言に立ちました。明神氏は新たに入手した資料をもとに、連合軍総司令部が50年当時、「共産党主義者とその同調者の解雇」を「指示」したのではなく、「示唆」だった事実を明らかにしました。

「戦後史の汚点に歴史的正義を」

最終弁論は大法廷でひらかれ、裁判支援者ら約60人が傍聴しました。最終意見陳述で佐伯雄三弁護団長は「レッドパージはわが国戦後史最大の汚点。その人権回復なくして、日本の戦後史は終わらない。裁判所は法の支配の担い手、人権擁護の砦として、原告らの名誉を回復し、60年にわたる辛苦に対し被害賠償をおこなう、歴史的正義の判決を下してほしい」と述べました。

大橋さんが原告を代表して最終陳述をおこないました。「私たちは働き盛りの青年期にレッドパージされた。日本国憲法施行から3年だった。憲法が最も大切とうたう個人の尊厳、思想・良心の自由を奪われた。行政も、国会も誤りを正さない以上、人権の砦の裁判所しかレッドパージの人権侵害を正せない。生きている間に、名誉回復と被害救済の実現を」と訴えました。

判決は5月26日13時15分です。


原告たちは裁判支援の募金を呼びかけています。郵便局口座00920・9・152722 兵庫県レッドパージ国家賠償要求同盟


(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)

宮崎淳文さん作「立花のヒガシさん」遺族が作品集発行

日本共産党立花東後援会の名物4コマ漫画

作品集の表紙
尼崎の日本共産党立花東後援会ニュースに社会風刺で笑いを誘う4コマ漫画「立花のヒガシさん」を連載していた宮崎淳文さんが、脳腫瘍で亡くなって1年(享年73歳)。遺族が未発表分を含む作品集を作りました。

同後援会副会長で、子どものころから絵の得意だった宮崎さんが連載を始めたのは03年7月。主人公ヒガシさんの性格と風貌は本人そっくりです。政治腐敗、アメリカ政府の横暴、社会の不合理に怒り、身辺の出来事にも一喜一憂しながら、絶妙のダジャレでオチにしています。後援会員に大好評でした。「自前の漫画を載せているのは立花東だけ」が後援会の自慢でした。

宮崎さんは、毎月の編集会議に2枚、多いときは4枚の作品を持参。制作意欲旺盛で、みんなを驚かせていました。「100回になったら本にしよう」と後援会で話し合い、自ら表紙絵も準備していました。しかし闘病生活に入った09年6月号の69回が連載最後になりました(左:クリックすると大きくなります)。

尼崎のワイヤー製造工場を定年後、山歩きと落語をこよなく愛し、後援会の集まりには欠かさず参加していた宮崎さん。ときには後援会の仲間たちを漫画の題材にとりあげました。おもしろいネタは、すぐメモに書きとめていました。

「厳しい状況でも、いつも笑顔を忘れず、そこにいるだけで、みんなを和ませる人だった。彼の存在が後援会の力になった。団結の中心だった。亡くなったことが残念でならない」と同後援会の槙原四郎さん(81)は言います。





作品集には、漫画113作品と絵手紙や後援会ニュースのコラム「街の風」4回分を収録。

残部わずかですが共産党県後援会にあります。A4判70ページ、頒価600円。☎078・577・1656

後援会有志と六甲山を登った宮崎さん(右端)=06年1月


(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)

三菱電機(伊丹・尼崎)春闘前進させる会がアンケート

伊丹市、尼崎市にある三菱電機とルネサステクノロジの事業所の労働者でつくる「春闘前進させる会」が昨年末からとりくんできた「二〇一一年くらしの要求アンケート」の中間集計百三十人分がまとまりました。

労働者の願いは1万円賃上げ・正規化

集計結果(正規百名)によると、賃上げ要求額は「五千円」「一万円以上」が合わせると六割です。

成果主義賃金では九割の人が「見直し改善」を求めています。「どこを見直せばよいと思うか」との問いでは、第一位が成果主義導入時に廃止された「定期昇給の復活」。第二位「評価基準と評価の公開」、第三位「専門性や技術・技能の熟練度の評価」となっています。

裁量労働制適用の労働者の間では、時間外労働時間が六十時間を越え、百時間に及ぶ深刻な実態も明らかになりました。

このアンケートは契約や派遣労働者など、非正規労働者からも三十名の回答を得ています。それによると、時間給の希望額については、「千五百円」「二千円」「二千五百円以上」があわせて九割。諸手当の要求の第一位は「一時金」、第二位が「退職金」となっています。また、「受け入れ企業の正社員として働くことを希望しますか」との問いには、六割の人が「希望する」と答えています。

意見記入欄には、「十年以上時給がまったく上がらない。派遣先が上げてくれないためだと思う」(40代女性)「六カ月契約なので仕事の成績がおもわしくないと打ち切られる感があり正直にこわい。六十歳まで働けたとしても退職金もないので不安」(契約40代女性)「契約や派遣のなかにも実力、人間性豊かな人間がいます。もっと正社員に登用すべきだと思う」(契約30代男性)。

「内部留保の1~数%で可能」と励ます

三菱電機は、二〇一〇年度三月期決算で経常利益一千九百五十億円(前年度比303%)、純利益一千百五十億円(前年度比407%)と大幅な利益を見込み、内部留保は昨年十月現在で一兆五千三百七億円ため込んでいます。

「前進させる会」は、各事業所門前でビラを配布。今回のアンケート結果を紹介するとともに、内部留保の1%で賃上げ一万円を三菱電機グループの従業員十万人に実施できるし、数%で非正規労働者を正社員として雇用できると、訴えています。
(山本博昭)

(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)

東神戸の党と民青同盟が集い「雇用問題解決の道」


日本共産党東灘・灘・中央地区委員会と民青同盟東神戸地区委員会は二月十一日、宮本たけし衆議院議員を招き、集い「雇用問題解決の道」を開催。六十五人が参加しました。

この間、民青東神戸地区では、味口としゆき市議候補(灘区)、大前まさひろ市議候補(中央区)といっしょにハローワーク前宣伝に取り組んできました。その取り組みをいかし、様々な分野の雇用実態を交流し、変えて行ける展望をつかみ、解決への道を開こうと党地区委員会と相談して企画したものです。

集いを準備した実行委員会での議論では、「仕事が大変すぎて、新人がミスしているのが許せなく、イライラする」(介護士)など、どの分野でも雇用問題が深刻であることがわかりました。

集いで宮本議員は、この間の国会での論戦やヨーロッパの例などを紹介。雇用の責任を果たすよう政府が大企業に迫ることの重要性を指摘し、雇用問題解決の展望を示しました(写真上)。いっせい地方選挙の候補も連帯挨拶しました(写真左)。

参加者は「働けないのが青年の問題でないとわかった」「大企業の実態を聞けてよかった」「公務員も民間も、非正規社員も正規社員も、青年も高齢者も一緒に手をつなぐことが大事」などの感想をよせています。

今、バラバラにされている労働者をつなぐ連帯がこの状況を打開する道だと確信を持ちました。
(竹田雅洋・民青同盟東神戸地区委員長)

(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)

生産緑地制度の学習会:日本共産党県議団

日本共産党兵庫県会議員団は二月十二日、明石市内で学習会「都市の豊かな緑・農地をまもるために―生産緑地制度で農ある街づくりを」を開催。農家・市民・行政職員など約五十人が参加しました(写真)。

「田畑からの収入の倍の固定資産税を取られる。これでは農業を続けられない」という農家の苦悩を解決するとともに「地域の農地を守って欲しい」という九割にのぼる市民の願いにこたえる街づくりをめざそうと開いたもの。和歌山市で「生産緑地制度」の実現運動にたずさわった橋本卓爾和歌山大学名誉教授を講師に招きました。

橋本氏は、①食糧自給、②環境問題、③人口減少や災害など都市をめぐる情勢の変化など多角的に都市農業の必要性を解明し、「人間が人間らしく暮らすためにこそ都市農業は必要不可欠」「農業は今でも危機的なのにTPPは追い打ち」と指摘しました。また、「阪神淡路大震災で神戸近郊に農業があったことが大きな役割を果たした」ことを紹介し、「この教訓はぜひ生かして欲しい」と訴えました。


兵庫県は、国の動きを先取りし、東播・中播・西播地域に、「生産緑地制度」を導入するよう働きかけを始めていますが、地域ごとの事情を考慮しない画一的内容や、都市農業を守り応援するという本来の目的に合わないものでは困ります。

日本共産党は、「農ある街づくり」が子ども達をはじめ、市民の豊かな暮らしに必要不可欠とし、積極的な提案と運動を呼びかけ、その先頭に立っています。

(金田峰生・党県委員会農林漁民部)

(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)

三菱神船商船撤退問題で懇談会


三菱重工が神戸での商船建造撤退を発表している問題で、神戸の造船を残そう連絡会と兵庫民主商工会が共同し地元での懇談会を2月11日、和田岬地域福祉センターでひらきました。住民ら約40人が参加しました。

日本共産党の大かわら鈴子市議が、1次下請け事業所対象に神戸市が実施したアンケートの結果を報告。「規模縮小や社員削減などが指摘されている。2次3次下請け業者も入れると大変な数の人が影響を受ける大問題」と指摘しました。

参加者からも、「若い従業員は、家のローンや子どもの教育など、これからというときの撤退発表で、悔しい気持ちでいる」「三菱社員の動きにも緊張を感じる。地域経済はどうなるのか心配。食堂業者も、みな不安の声をあげている」「市は三菱に要請するだけでなく、学者に委託して経済への影響を調査すべき」などの発言がありました。

写真:下請けの状況や市議会での議論を報告する大瓦市議


(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)

「建国記念の日」不承認県民集会

「建国記念の日」不承認兵庫県民集会(同実行委員会主催)が2月11日、神戸市勤労会館でひらかれ、65人が参加しました。

ことしで45回目となり、開会挨拶で、代表幹事の新間智照さんは「戦前の紀元節にもとづく日であり、私たちはこの日を認めない。反対の意志を貫き、集会をつづける」と述べました。

吹田市立中学校の社会科教諭で大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会世話人の平井美津子さんが「沖縄と天皇」と題し講演。平井さんは、大江健三郎著「沖縄ノート」の「集団自決」記述に対し、改憲派が周到な準備でおこした裁判経過を説明。現在も教科書に広島・長崎、沖縄戦の説明はわずかしかないと述べ「子どもたちの使う教科書に注視してほしい」と強調しました。

写真:「沖縄と天皇」と題し講演する平井さん

(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)

西神ニュータウン9条の会4周年


神戸市西区の西神ニュータウン9条の会4周年のつどいが2月13日、西区民センターでひらかれ、約180人が参加しました。

会員が2日かけて完成した舞台装飾の前で地元の音楽家たちが自作を演奏しました。

朝日新聞記者の伊藤千尋さんが「9条は世界の宝」と題して講演しました。伊藤さんは地下鉄乗車券裏に印刷しているなど、日常に憲法が浸透している南米各国の状況を紹介。「憲法は、市民が普段の生活のなかで使うもの。国民に憲法を知らせようとしない日本は世界の非常識」と語りました。

写真:憲法9条が世界各地に影響を与えていると語る伊藤さん


(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)

観感楽学

「被爆者健康手帳」申請を却下されたHさんが、兵庫県知事を相手どって裁判を起こしています▼当時六歳で疎開中。「原爆が長崎に落とされた」ということで、親族に連れられて被爆地に入り家族を探しまわりました。当然「入市被爆」に当たるのですが、手帳が取得できていませんでした▼被爆者であることを隠してきた方、そのために手帳をとらなかった方は、とても多い。不十分な被爆者医療制度ができるまででも十二年。被爆者は、被爆で傷みつけられたうえに、放置され、差別を受けてきたのです▼高齢になり、健康への不安から手帳を申請しようとした時には、記憶も不確かで証人もいない▼「被爆者に対する…総合的な援護対策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記するため」という被爆者援護法の趣旨からしても、行政は手帳取得を応援するのが当然なのに「被爆者であること」の立証責任を被爆者に負わせ、くい違いやあいまいさがあれば却下するのです▼この国の支配層は、侵略戦争で甚大な被害をもたらした責任をとるどころか、生き延びることができた戦争被害者を、今また辱めているのです。 (S)

(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)

不屈の人々―治安維持法による弾圧犠牲者(5)

不死鳥のごとく…一〇・三〇弾圧と三・一〇弾圧

蘇る神戸の組織

いくど破壊されても不死鳥のように蘇るのがこの時期の特徴であった。

一九三一年の十月には全協神戸の再建は進み主要産業で組織を確立。文化運動ではナップを継ぐコップ(日本プロレタリア文化連盟)の兵庫地方協議会が結成されている。

三二年三月、党中央は八・二六弾圧で壊滅した神戸市委員会再建のために平沢栄一を派遣。六月には市委員会を確立、十六細胞を擁したという。

三二年テーゼと一〇・三〇弾圧

七月に「三二年テーゼ」と呼ばれる綱領的指針が発表される。三月に「満州国」がつくられ、中国全土への侵略が開始されていた。帝国主義戦争反対が革命勢力の闘う任務となる。

神戸でも八・一国際反戦デーのデモが行われたが、事前に神鋼の十五名が検挙され、デモ当日も十数名が検挙された。

十月に党は熱海に全国代表者会議を招集したがスパイの手引きによって全員検挙。それに続いて全国で千五百余名が検挙された。一〇・三〇弾圧である。

兵庫でも翌三三年二月までに全県で検挙者二百十四名、起訴者八十名に及んだ。この頃は必ずしも一斉ではなく断続的に検挙が続いた。

小林多喜二が虐殺されたのは三三年二月であったが、その前年の十月に神鋼の須江操が虐殺されている。

姫路の三・一〇弾圧

三二年、姫路で北中皮革大争議が起きていた。北中争議のほか日毛姫路・三菱高砂の争議の中から多くの入党者が出る。そこで姫路・高砂を中心とする党姫路地区委員会が結成された。

姫路の党は「赤旗」読者拡大や反戦ビラ配布など積極的に活動したが、三三年三月十日、二十名が検挙され、五人が起訴された。またもや組織は壊滅。

同じ日に淡路の農民組合の古森茂ら数十名が検挙され、さらに兵庫の運動に関連して他府県で検挙された者が十名ある。

出征兵士にビラ

三三年四月党神戸地区委員会が再建されると、姫路・播州の党再建のため、コップ兵庫地協にいた平葦信行を派遣する。

雑誌「プロレタリア科学」の読者はほとんど健在であった。彼らを平葦は検挙を免れていた三浦大二郎と二人で訪ねて歩く。次に平葦は山陽合同労組グループをとり込み、姫路地区委員会を再建する。

姫路地区委員会は、渡満することになり家族と面会中の兵士たちにビラを配布する。

「祝ご出征」と刷った白封筒に「出兵反対」のビラを入れて手渡すと、兵士たちは餞別と思い受け取った。

「鷺城新聞」の記者をしていた松尾一次がこれを一ページの記事にした新聞三千部を印刷・配布、反響を呼ぶ。その後松尾が地区委員会責任者となる。しかし三四年二月六日、十九名が検挙され播州・姫路地区における党組織は終焉を迎える。

(安藤礼次郎著「西播民衆運動史」等により戸崎曽太郎記)

(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)

議員定数と民主主義を考える(3)

神戸学院大学法科大学院教授 上脇博之

兵庫県議会―大政党に有利な1人区・2人区の多さ

地方議会の選挙区は全域で一つのところと、複数あるところがあります。後者においては、しばしば各選挙区の議員定数が少なく、特に都道府県議会の選挙区は、法律(公職選挙法)が「郡市の区域による」と定めているため、総定数が少ない関係で1人区や2人区など定数の少ない選挙区が多数あるのです。これでは、大政党に極めて有利です。

兵庫県選挙管理委員会の提供資料によると、1991年の兵庫県議会の一般選挙時の議員定数について言えば、法定上限数は107でしたが、条例定数は94。その後、2005年の県議会選挙では総定数93で、2007年は92でした。

2007年のときの内訳は、1人区が22あり、2人区が8ありました。3人区は8、4人区は2、7人区は2、8人区は1にとどまりました。

2007年県議会一般選挙で、自民党は25議席、民主党は18議席、公明党は12議席、共産党は5議席、無所属は32議席、それぞれ獲得。しかし、無投票当選もありますが、かりに比例代表選挙で行われたと仮定し、各政党の得票率で総定数92議席を比例配分すると、得票率19.5%の民主党と12.9%の公明党は18議席と12議席で変わらないものの、得票率23.4%の自民党は22議席で、10.9%の共産党は10議席になると試算されます。つまり、自民党は3議席分、過剰に代表され、共産党は5議席分、過少に代表されていたのです。

昨2010年3月の改定で今年4月に予定されている県議選以降は、総定数は92から89へと削減されることになっており(法定上限数は111)、1人区が一つ減り21に、2人区が一つ減り7になり、3人区、4人区、7人区、8人区は、これまでと同じ選挙区数です。

一方、市町村議会の選挙区の各議員定数は、都道府県議会の場合のように露骨に「大政党に有利で小政党に不利」というわけではありません。必ずしも複数の選挙区を設ける必要はありませんが、設けることは許容されています。

また、いわゆる政令指定都市の議会の場合には「区の区域をもって選挙区とする」と定められているため、厳正な目で見ると、各選挙区の議員定数は大政党に有利になっています。

例えば、神戸市議会の議員定数を見ると、法定の上限数は72ですが、条例定数は69で、各選挙区の議員定数は5~11人。総定数69のうち18名の当選者を出した自民党は得票率23.4%でありながら議席占有率は26.1%でした。比例配分による試算をすると当選者は16名になるはずで2名分過剰代表されていたのです。


(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)



筆者・上脇氏の新著『議員定数を削減していいの?―ゼロからわかる選挙のしくみ』が14日、発行されました。A5判136ページ、日本機関紙出版センター刊、定価1,000円。








ひなたぽっころりん(462)


(2011年2月20日付「兵庫民報」掲載)