「少ない年金で国民健康保険料がなんと高いことか」。日本共産党議員団が各地でおこなっているアンケートに切実な声が寄せられています。明石市では、「国・県・市でとりくんでほしいこと」の第一位は「国保料引き下げ」(46・1%)でした。
それもそのはずで、国保に加入する県民の所得は下がり続けているのに保険料(税)は逆に上がり続けています(グラフ1)。その結果、県下では、滞納世帯数が十七万九千八百十世帯と国保加入世帯の二割以上に。「収納率向上」の名で多くの世帯が正規の保険証を取り上げられています(表1)。
表1 保険証の取り上げ(2010年3月末現在)
国保加入世帯数 | 846,020世帯 |
滞納世帯数 | 179,810世帯 |
資格証明書交付数(全額窓口負担) | 8,305世帯 |
短期保険証交付数 | 53,450世帯 |
保険証未交付数(保険証を市町窓口に留め置き) | 21,319世帯 |
こうしたもとで医療を受けられない県民が増え、「国保料が払えなかった四十八歳の女性が乳がんで倒れ、市との相談で保険証発行が可能と回答を得た時はすでに手遅れ」(〇八年兵庫民医連調査事例より)など県民の命が奪われています。
国庫負担削減のもと問われる自治体の姿勢
国保料(税)高騰のもっとも大きい原因は、国が社会保障としての国保を守らず、国庫負担を削減してきたことです(グラフ2)。
そのもとでも住民の命と医療を受ける権利を守る立場に立つのかどうか、自治体の役割が問われています。
国言いなりの国保行政のもとでは、多くの滞納者が保険証を取り上げられ、強権的な保険料(税)の取り立てにあっている例が後をたちません。
一方、住民の運動と日本共産党の議会論戦で、市町に保険料(税)を引き下げさせたり、資格証明書の発行をさせないなど改善をかちとった経験も少なくありません。
国保と兵庫県政
では、県政と国保のかかわりはどうでしょうか。国保の事業主体は市町ですが、国保法第四条で都道府県は「国民健康保険事業の運営が健全に行われるように、必要な指導をしなければならない」と定められ、費用負担も行うことになっています。
なにより、県も県民の「福祉の増進」を仕事とする自治体であり、その立場で市町国保を応援することが求められますが、現県政はそうなっていません。
市町への補助を削減
ひとつは市町国保への補助金の問題です。よく県は「四百億円の予算措置をしている」などといいますが、その大部分は法律で決められた費用負担をしているにすぎません。
県独自の補助金としては、「国民健康保険事業費補助」がありますが、八年前に比べ、約半分に減らされています(グラフ3)。
この補助金は、子どもや老人などへの独自の医療費助成を実施した自治体に国が与えているペナルティ(国の交付金の減額措置)の半分を補うものという考え方で出されています。ですから、「行革」で福祉医療を削れば、ペナルティも減るからと、老人医療費助成などの削減にともなって国保への補助金も減らしてしまっているのです。二重に冷たいやり方です。
県下の三十五市町が、一般会計から国保会計へ法定外の繰り入れをおこない、その合計が七十九億円にのぼる(〇八年度)中、この県の独自補助金はたった七億円。加入者一人当たり約四百五十円にすぎません。
収納率によって市町への交付金を差別
ふたつは、都道府県調整交付金の問題です。〇五年に市町国保への国の交付金の一部が一般財源化され、都道府県が配分するようになりました。このときに、県は国と同じやり方で、保険料(税)収納率の低い市町の交付金を減額する「ペナルティ」を設けました。
昨年十月の党県議団の追及に、県はこの「ペナルティ」を昨年四月にさかのぼって廃止すると答弁しました。しかし、収納率を上げている市町へ多く配分し、保険料(税)取り立て・保険証取り上げに誘導するしくみは残されています。
国保「広域化」の危険
さらに、民主党が進める「国保の広域化」への態度の問題です。市町単位で運営されている国保を都道府県単位化し、一律の保険料(税)を設定しようというもので、公費負担を減らし、「医療費は保険の範囲でまかなえ、保険料(税)が払えなければ医療を受けるのをあきらめろ」という医療費抑制路線にほかなりません。
昨年六月、国はその地ならしとして、都道府県に「広域化等支援方針」を定めることを求めました。国の通知のなかでも重大なのは、市町が行っている国保会計への法定外の繰り入れを「早期に解消する」よう求めていることです。
前述したように、〇八年度は県下市町の合計で約七十九億円が繰り入れられ、全体では単年度収支が黒字になっていますが、繰り入れがなくなれば、六十五億円の赤字となります。広域化し、これをすべて保険料(税)に転嫁すれば、単純計算で一人約四千円の値上げに。ますます払えない人が増えるのは明らかです。
「広域化」のレールにのり、収納率アップを求める県
井戸敏三知事は、政府の「高齢者医療改革」にかかわって、国保の都道府県単位化に「反対」をとなえていますが、「すべての医療保険を一本化すべき」という立場からの発言です。
党県議団は、「反対だというなら広域化等支援方針を定めるべきでない」と県に迫りました。
「(保険財政運営と住民の健康管理の一体的なサービスが提供できるのは)住民に身近な市町村ではないだろうか」(福井県/「国保新聞」一月二十日付)などとして、全国的に五県が策定を見送ったなか、兵庫県は「財政安定化支援方針」という名で方針を策定し、収納率目標を書き込みました。いっそう市町を保険料(税)取り立てに駆り立てることになりかねません。
県民の命守る議席増で国保料(税)1万円引き下げを
日本共産党県議団は国保料(税)について、県が市町と協調して一人当たり一万円引き下げることを提案しています。また、その実現に向け、県の財政支援拡充や医療費負担の軽減を繰り返し求めてきました。
「子どもの無保険」問題では、国の調査に先駆けて党市町議員団を通じて資格証明書発行世帯の子どもの人数を調査し追及。窓口負担の軽減のため、国保法四十四条に基づく減免の活用を市町に徹底するよう求め、県から通知を出させるなどの成果もあげてきました。
一方、自民・民主・公明の各党は、これだけ県民の国保改善への願いが高まっているにもかかわらず、県議会でまったくとりあげていません。度重なる国保法改悪を進めた自民、小泉医療改悪に手を貸した公明、後期高齢者医療制度廃止の公約を破って国保広域化を進める民主には、県議会でもこの問題でものが言えないのです。
住民の命と健康を守る県政を実現するために、日本共産党の議席を伸ばすことが必要です。
グラフ1のデータ 保険料(税)と所得
1998年度 | 1999年度 | 2000年度 | 2001年度 | 2002年度 | 2003年度 | 2004年度 | 2005年度 | 2006年度 | 2007年度 | 2008年度 | |
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加入者の平均所得 | 843905円 | 772124円 | 731287円 | 702588円 | 666280円 | 595071円 | 587666円 | 580718円 | 616621円 | 622194円 | 647203円 |
1人当たり保険料 | 72401円 | 76908円 | 78053円 | 77977円 | 77034円 | 76541円 | 77489円 | 81471円 | 84486円 | 85145円 | 88880円 |
所得に占める保険料 | 8.6% | 10.0% | 10.7% | 11.1% | 11.6% | 12.9% | 13.2% | 14.0% | 13.7% | 13.7% | 13.7% |
グラフ2のデータ 県内市町国保の収入内訳(決算)
年度
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保険料など
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国庫支出金
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1984年
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52.79%
|
47.21%
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2008年
|
76.86%
|
23.14%
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グラフ3のデータ 県の国保事業費補助の推移
年度
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補助額
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---|---|
2002年度
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13億9千6百万円
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2003年度
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13億9千6百万円
|
2004年度
|
13億9千6百万円
|
2005年度
|
12億5千2百万円
|
2006年度
|
10億8千8百万円
|
2007年度
|
8億8千4百万円
|
2008年度
|
7億4千百万円
|
2009年度
|
7億2千6百万円
|
2010年度
|
7億1千万円
|
(2011年2月13日付「兵庫民報」掲載)