個人補償実現させた兵庫から
東日本大震災支援、地域経済・雇用・社会保障を守れ兵庫県民集会が三月二十七日、神戸市のメリケンパークで開かれ、寒風にもめげず集った約二千五百人の参加者を励ました、来賓あいさつの大要を紹介します。(文責編集部)
社会保障・福祉のまちづくりこそ災害への最大の備え
全国民医連会長 藤末衛さん
東日本大震災は、地震、津波に原発事故が加わり、広範囲で複雑な災害となっています。
私たち全国民主医療機関連合会は、地震直後から被災地の民医連事業所を支え、他団体とも協力して全国から千百人を超える医療・介護チームを送っています。私も三日目に宮城に入り、岩手、福島と回り、きのう神戸に帰ってきました。
病院から医師・看護婦が避難して病棟が閉鎖され、高齢者など残された人々が医療にかかれないような状態になっている自治体もあります。
被災者は、津波によって遺体すらない家族の死という現実を受け止めきれずにいます。家や財産、思い出すら失い将来への不安を募らせています。原発事故の避難者は、息つく暇もなく、故郷から遠く離れていく日々です。超高齢化の中、地震では命をとりとめたものの過酷な避難生活の中で亡くなるという震災関連死が起こっています。
私たちは、憲法二十五条を持つ国の人間として、組織として、すべての被災者の人権を擁護する視点で、医療・介護の活動をすすめます。
避難者が少しでも健康を取り戻すには、安らかな環境、睡眠、温かい食べ物と入浴など、普段の生活に近づけるアイデアと行動が必要です。
阪神・淡路大震災では、神戸空港建設をシンボルとした復興政策と、すべての被災者・人の復興こそ第一とした運動と、そのどちらが正しかったかは明白です。
災害よる危機が訪れた時、国の政治と国民を守るべき制度の値打ちが試されます。
今回の震災前から、保険料が高くて払えない、いざという時、窓口負担が高くて受診できない国保や、介護保険は多くの問題をかかえていました。国保の手遅れ例は民医連だけでこの一年に七十名を超えています。
まともな社会保障、福祉のまちづくりこそ災害への最大の備えです。それを実現する地方自治体と議会をつくるため、今回のいっせい地方選挙がその第一歩となるよう、がんばる決意です。
「救援・復興選挙」勝利でゆがんだ政治を変える決意
日本共産党兵庫国政委員長 堀内照文さん
東日本大震災は戦後最大の大災害、国難ともいうべき事態となっています。
日本共産党は、救援・復興に傾注すべきだと、いっせい地方選挙の全国的な延期を呼びかけましたが、民主、自民、公明各党がこれには同意しませんでした。こうなった以上、救援・復興に総力をあげてとりくむとともに、いっせい地方選挙を「救援・復興選挙」と位置づけ、それを通じて新しい社会をつくる契機にしていくという姿勢で、勝利・前進をめざす決意です。
被災者救援と原発事故の危機回避の二つの重大課題は喫緊の課題です。安全最優先の原子力行政への転換、自然エネルギーの活用への戦略的転換といった課題も今後、問われます。三菱重工神戸造船所が商船建造から撤退し、原子力と潜水艦に特化する計画の見直しと撤回を求めるものです。
復興にあたっては、被災者の生活再建、地域社会、コミュニティの再建こそ土台にすえなければなりません。
被災者生活再建支援法の拡充が必要です。住民合意の新しい街づくりへの支援、壊滅的な被害を受けた農林漁業の復興へ、TPP参加は許さず、従来の枠組みを超えた支援と補償が求められます。
その財源は、「消費税で」というのは断じて認められません。大企業・大資産家減税を中止。歳出も見直して、高速道路無料化、子ども手当ての上乗せ、思いやり予算、大型公共事業、原発推進などの中止、政党助成金撤廃などで5兆円の財源を確保すべきです。「震災復興国債」を発行、大企業に引き受けさせ、巨額の内部留保を復興の資金に活用させましょう。内需を拡大し、日本経済立ち直りにも大きなプラスになります。
阪神・淡路大震災から十六年、あきらめずに声をあげ、政府の厚い壁を打ち破って個人補償を実現させた兵庫の私たちこそ、生活再建最優先をの声をあげ、実現の先頭に立ちましょう。この兵庫・神戸でも、住民の命と暮らしを守る「福祉・防災のまちづくり」をおこす、その大事な機会が目前の県議選と市議選、町議選です。みなさんとともに希望ある未来をきりひらくためにたたかいぬきます。
大企業の巨額内部留保を震災救援・復興と景気回復に
全労連議長 大黒作次さん
大企業は、二百四十四兆円の内部留保、六十四兆円の手元資金の有効な使途が見つからないという異常な「カネあまり」状態です。それにもかかわらず、企業減税を政府に迫り、円高を口実に海外へ生産拠点を移そうとしています。三菱重工神戸造船所の商船建造撤退もその一つの表れです。
その一方で「貧困と格差」は広がっています。
労働者の雇用確保、賃上げ、最低賃金の大幅引き上げ、下請け単価の改善、大企業の税応分負担などで、巨額の内部留保を国内に還流させないとこの国の経済はいっこうに回復しないことは、いよいよはっきりしてきました。
大震災被災者救済や復興に向けた特別国債の購入に大企業の内部留保を使え、という声を国民的世論にすることが重要な課題になってきます。
私たちは、当面、被災者支援に全力をあげつつ、震災で中断した春闘は四月十四日を二度目の山場として、昨年以上の力を結集するたたかいにしようと決意を固めています。
また、旧社会保険庁職員の分限免職やJALの不当解雇などが相次いでいます。首切りがまかり通る社会を作らせてはならない。政府・財界とのたたかいには一歩も退くことはできません。
一方、大震災を契機に国内産の安心・安全な食料をと国民は願っています。「食料主権」は世界の流れです。TPP反対のたたかいはJAなど、かつてない共同を広げています。
いっせい地方選挙では住民の暮らしを守る自治体本来の役割が求められています。菅内閣の悪政推進と財界・大企業の横暴な支配の流れを転換させることが課題です。国政と地方政治の流れを変える契機となるように、たたかいをいっそう発展させようではありませんか。
(2011年4月3日付「兵庫民報」掲載)