杉本ちさと県議が病院を訪問・実情を聞き取り
この病院は、百床の介護療養病床を持ち、現在も満床。胃ろう(おなかと胃に小さな穴をつくり、チューブを通して栄養を摂取すること)などの医療と介護の両方が必要な高齢者が入院しています。最高齢者は九十九歳。多くが認知症などを持ち、寝たきりです。
調査のきっかけとなったのは、八月下旬、九十歳の母きよさんを入院させている長男の田中隆夫さん(61)が「年内で介護療養病床をすべて閉めるので出てほしい」と連絡を受けたことです。
話し合いの中で病院側が「うちとしても困っている。国や県の対応も含め、共産党県議さんにも話を聞いてもらいたい」と話したため、杉本県議が訪問し、院長・副院長・事務長と懇談しました。
行き先失う患者
病院側からは、「百人の患者さんのご家族の七~八割と話をしたが、在宅OKという人は一人もおらず、みなさん困惑されている」「患者さんの行き先は特養か老健などしかないが、特養はそれぞれ何百人待ちの状況だし、胃ろうなどが必要な場合受け入れてくれる施設は少ない」「民主党が総選挙で療養病床廃止凍結を公約に掲げていたので安心していたのに」「家族もおらず特養の個室にも入れない生活保護者への対応も含め、県には何度も相談しているが、話を聞くだけでらちが明かない」などの実態が話されました。
県も責任果たすべき
杉本県議は、「お年寄りの命にかかわる問題なのに、民主党の公約破りは許せませんね。療養病床廃止をやめさせるよう力をあわせましょう」「県は療養病床をなくさないよう国に訴えるとともに、患者さんの行き先確保に責任を果たすべきです。追及していきます」と述べました。
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田中さんは、きよさんの転院先探しに奔走しながら、「国は『医療の必要性が低い』というが追い出されれば母は生きていけない「姫路だけでなく全県、全国で同じように困っているはず。ものをいえない母にかわって民主党の公約破りを許さないよう、世論を大きくしたい」と語っています。
「2011年度までの廃止は困難」
しかし廃止撤回は明言せず――厚労相
調査後の九月八日、長妻昭厚生労働相が衆院厚労委員会で、介護療養病床について「二〇一一年度末までの廃止は困難」として廃止期限の延期を含め改めて判断する方針を示しました。
これを受け、この病院は当面、介護療養病床を継続する見込みですが、国が廃止撤回を明言しないため、患者と家族の不安に変わりはありません。
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もともと、この計画は、旧自公政権が一一年度末までに医療療養病床(医療保険適用)を二十五万床から十五万床に減らし、介護療養病床(介護保険適用)を十三万床からゼロにすることを〇六年に決定(その後医療療養病床は二十二万床程度残す方針に転換)。兵庫県も国の方針にそって県内の介護療養病床約四千六百床を全廃、医療療養病床を約一万床から九千二百床に減らすとしていたものです。
民主党は、昨年の総選挙時の政権公約に「療養病床削減計画の凍結」を掲げましたが、一月二十七日の参院予算委員会で長妻昭厚生労働相が「基本的に(介護療養病床の)廃止というような方向性は変わりません」と答弁し、批判をあびました。
写真:介護療養病床の田中きよさんを見舞う杉本議員(中央)と田中氏
(2010年9月19日付「兵庫民報」掲載)